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フィアット・バルケッタが欲しい! FIAT BARCHETTA

EDITOR中島秀之
PHOTOGRAPHER奥村純一
協力: コレツィオーネ

フィアット・バルケッタが欲しい!

マツダが1989年に生み出したユーノス・ロードスター(輸出名MX5)は、絶滅の危機に瀕していたオープン2シーター・スポーツカーに再び脚光を当てる役割を果たした。これに刺激を受けた世界中の自動車メーカーが、次々と類似した車両を開発することになるのだが、フィアットが1995年に発表したバルケッタも、そうした1台だった。

他メーカーが、既存のパワートレーンを流用したFRか、FFのそれをリアに移設したミッドシップを採用する中、フィアットは初代プントのプラットフォームを利用した、横置きFFシャシーで開発を行う。エンジンは旧来のものを改良した直4DOHC8バルブ1747ccで、130ps/16.7kg-mを発揮。これに5速M/Tのみを組み合わせる。サスペンションは前がストラット、後がトレーリングアームで、これまたプントからの流用。要するに、コストをかけず短期間で開発されたクルマであった。

当然スペック的にはライバルから見劣りするわけだが、フィアットはそのハンデをデザインで補おうとしたようだ。当時フィアット・チェントレ・スティーレに在籍したアンドレアス・ザパティナスの原案を元にした、優雅なボディが採用されたのである。車名のバルケッタとは小舟を意味しており、まるでレトロなモーターボートのような独特の美しさと雰囲気で、魅力的に仕立てられていた。

生産はカロッツェリア・マッジョーラで行われ、1996年からは日本でも販売が開始される。1999年には本革シートを備えたリミテッド・エディションを販売。また2000年には標準車がジョーヴェネ・ドゥーエの名となった。 2002年に一度生産を終了するが、本社生産となったマイナーチェンジ版がニューバルケッタの名で2004年から導入され、2007年まで販売された。

EXTERIOR & ENGINE

小舟をイメージした優雅なスタイリング

サイドに走る喫水線のようなキャラクターラインと前後バンパーのはね上げ方で、モーターボートのような雰囲気を演出している。取材車両は1999年式。

幌を閉じた時の印象があまり違わないのもこのクルマの特徴のひとつ。幌のサイズが小さいことも理由だろう。また、オープンカーは幌を閉めた時がスタイリッシュであることも重要なポイントだが、バルケッタはさすがのカッコ良さ。

プロジェクターのロービームを採用したヘッドライト。レンズカバーが曇りやすいが、外して磨けるとのこと。

テールランプはサイズの異なる2連の四角いタイプ。色褪せしやすく、色が抜けると後方から視認しにくくなる。

1991~99年に使用されていたフィアットのエンブレム。前期型はこのタイプで、後期のニューバルケッタは青地の丸いタイプとなる。

指でボタンを押して、出てきたアルミ製のレバーを引っ張って開けるドアノブ。イタリアならではの凝り方だ。

130psの直4DOHC1746ccエンジン。エンジンルームは一杯だがオーバーヒートの心配はないという。

初期モデルはスチールホイールが標準。タイヤサイズは195/55R15。現車はヨコハマのDNA S.driveを装着。

INTERIOR & LUGGAG

ボディ色を効果的に配したお洒落なインテリア

インパネの下半分と、そこから続くドア内張り部分が、ボディと同色のパネルで覆われており、お洒落に演出されている。

メーターは左からスピード、タコ、水温と燃料のコンビの順となる。普通なら右側の大きい方をタコメーターにしそうだが、この配置は少々謎。

助手席のエアバッグのカバーに入るバルケッタの流麗なロゴ。ここ以外には使用されておらず、もったいない気がする。

センターコンソールには、オーディオ、エアコン、時計、灰皿、パワーウインドー、リアフォグなどの各スイッチがズラリと並ぶ。

運転席ドアを開けると、サイドシル部分に鍵付きのトランクオープナー、内装側に幌カバーのオープナーがある。

幌を閉めるには、まずカバーを開けて幌を出し、後ろ端を浮かしてカバーを閉じる。その上でフロント部を2箇所ロックする。

シートはサポート性はあまりよくないが、座り心地はまずまずといった印象。比較的柔らかな足周りもあって、乗り心地はいい。

トランク内部は樹脂パーツで覆われており、錆びる心配はない。広さは2人の旅行荷物なら入る程度。

IMPRESSION

新車当時に抱いた軟派なイメージは
運転すると間違いだったことに気づく

1990年代半ばに次々と登場したオープン2シーター・スポーツカーの中で、フィアット・バルケッタは最も軟派な1台と目されることが多かった。それは、プントのドライブトレーンを流用したFF車であることと、いかにもイタリア製らしいデザインコンシャスな内外装から来るイメージに由来していた。

元祖であるマツダ製のロードスター、ミドシップのMG-F、やや高級志向のBMW Z3などは、いずれもバルケッタよりハードなイメージで、走りに徹した風情があった。

あれから20年以上の時を経て、改めてバルケッタのステアリングを握ってみたところ、「あれ? こんなにスポーティだったっけ?」と、少し不思議だった。エンジンは低速トルクが薄目で、回転を上げ気味にしないと発進が難しいし、踏めば快音を発しながら一気に吹けようとする。5速ミッションは、FRのロードスターに比べれば曖昧だが、それでもカチッと狙い通りシフトできる。ステアリングはクイックで、ワインディングに持ち込めばかなり本気になれるタイプだろう。

あの頃抱いた軟派なイメージは、自分の勝手な思い込みだった。FFでもこのクルマは立派にスポーツカーだし、ドライビングは抜群に楽しい。もちろん内外装のお洒落さは昔のままだから、海岸線をゆっくり流すようなシチュエーションにもピッタリくるはずだ。

ラテンのサルーンとバルケッタの2台体制なら、人生が豊かになりそうな気がしてきた!

SPECIFICATION
FIAT BARCHETTA
全長×全幅×全高:3920×1640×1265mm
ホイールベース:2275mm
車両重量:1090kg
エンジン:直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量:1746cc

最高出力:130ps/6300r.p.m.
最大トルク:16.7kg-m/4300r.p.m.
ミッション:5速M/T
サスペンション(F/R):ストラット/トレーリングアーム
ブレーキ(F&R):ディスク
タイヤ(F&R):195/55R15

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