TMB IMPRESSION

<インプレッション>
実際乗ったらどうなんですか?
TMBが選りすぐった“名車”を運転してみて感じたこと

ALFA ROMEO 4C&LOTUS ELISE SPORT 220II

目まぐるしいスピードで変化を遂げている自動車業界。スポーツカーも例に漏れず、電動化を始めとする変化の時が訪れている。シンプルなメカニズムを持つ、ライトウェイト・ミッドスポーツカーが新車で買えるのも、もしかしたらあと少しの期間なのかもしれない。

2021.01.03
TEXT / 嶋田智之 PHOTO / 内藤敬仁
SPECIAL THANKS / LCI(http://www.lotus-cars.jp/),FCA JAPAN(http://www.alfaromeo-jp.com/

ピュアな楽しさを味わえ!

もしかすると今こそが、“非”スーパーカー系のミッドシップ・スポーツカーが歴史上で最も充実している時代なのかも知れない。ポルシェ・ボクスター&ケイマン、ロータス・エリーゼ&エキシージ、KTMクロスボウ、アルファロメオ4C&4Cスパイダー、アルピーヌA110、それにだいぶ小さいけどホンダS660。個性派揃い、だ。が、近頃では不穏なウワサが流れているのも事実だ。ロータス・エリーゼとアルファロメオ4C&4Cスパイダーがそろそろ手に入れられなくなるんじゃないか? と。どちらも軽さにこだわり、サイズもちょうどよく、絶対スピードより走らせる楽しさと気持ちよさこそが命で、不足も過剰もない“特別なクルマ”感もある、魅力的なスポーツカーだ。“いつかは手に入れたい”の“いつか”が来なくなるなんて、ちょっと一大事じゃないか?

その乗り味は今もって衝撃的

アルファロメオ4Cは、コンセプトカーがお披露目されたのは2011年、市販モデルが正式に発表されたのが2013年。コンセプトからその姿カタチがほとんど変わっていないから、初めてその美しいスタイリングを見たときの衝撃は、さすがにもう薄い。それに“素”の状態での乾燥重量895㎏という現代のクルマにしては驚異的な軽さの源である単体重量65㎏のフルカーボンのモノコックは、プリプレグ方式という手作業の多い手間暇と時間を要する成型方法で作られており、生産効率はよろしくない。カーボンの塊といえるF1マシンなどにも用いられている成型方法であることからも察していただけるだろうが、素晴らしく強固で軽い代わりに、本来は恐ろしく高コストな素材。それを1000万円を下回る売価のクルマに導入しているのだ。利益の面でも効率がよろしくないことは最初から明らかだった。新しくもなく儲かりもしないクルマを生産し続ける理由は目減りする一方だ。クルマ作りだってビジネスなのだから。

単体での重量は僅か65kgしかないカーボンバスタブシャシー。アドラープラスチック社が生産し、モデナのマセラティの工場で組まれた。

そのため4Cにはこれまで何度も終了のウワサが流れたが、2019年10月末に現在のブランドのトップが2022年までの事業計画の変更を発表、そこにスポーツカーが1台もないことから“いよいよか”の声が高まり、つい最近イタリア本国の公式ウェブから姿を消したことが真実味を添えている(注:2019年11月執筆時)。

今回あらためて4Cに触れて感じたのは、確かにルックスからくる衝撃こそ薄らいでいるものの、やっぱりつくづく美しい姿をしてると自然に感じられるし、何よりその乗り味は今もって衝撃的だということ。どういうわけか僕はおそらく軽く50回以上も4Cと4Cスパイダーに試乗をしているけれど、いつ乗っても衝撃を受けるのだ。こんな刺激的なクルマ、そうそうあるもんじゃないな、と感じさせられるのだ。

ドラマは、キーを手にした瞬間からスタートする。“4Cを走らせるのだ”という実感がぶわっと湧いて、日常と非日常を隔てる扉を開いたような気分になれるのだ。クルマが目に入れば凝りに凝った造形の中に入り込むちょっとした感動が訪れ、ドアを開けて腰を下ろすと予想を遙かに超えて低いヒップポイントに判っていても驚き、キーを捻ってエンジンに火が入ったときの威勢のいい炸裂音に引け目を感じながらもニンマリする。走り出せば1750ユニットは激しさを感じさせるレスポンスで跳ね上がり、ガッチリした軽い車体をシュパーン! と加速させる。ステアリングを切り込めば、まるで後輪を軸にするみたいにして短いノーズをスパン! とイン側に食い込ませる。ステアリングからシートから、路面の表情がビンビンと伝わってくる。念のために申し上げておくと、それ、ほんの日常領域+α程度の速度域でのお話なのだ。だからコンビニまでの5分を走っただけで物凄いことをしたような気分になれて、すっかり気分転換できてしまう。もちろん本来の生息地というべき峠道では、痺れるほどの楽しさを全身で味わい尽くすことができる。こんなクルマは二度と生まれてくることはないだろうな、と思うのだ。

軽量化にこだわり、ロードカーとしての必要最低限な装備のみ残される。シャシーのカーボン地もデザインの一部となっている。モード切り替えは4タイプを設定する。
レザーのバケットシートは、そのタイトなコクピットによってポジションの調整幅はごく僅かしかない。
1750ccの直噴ターボエンジンは横置きに搭載されている。トランスミッションは7速DCTのみの設定だ。
トランスミッションの操作はボタン式。シフトチェンジはステアリングのパドルで行う。
メーターをコンパクトにまとめられたのも、TFTパネルを採用したおかげ。モードによってデザインが切り替わる。
レーシングマシンと同じオルガン式のペダルを採用する。カッチリと剛性感のある良好なペダルフィール。
前17、後18インチが標準サイズ。撮影車両はスポーツパッケージの18&19インチを装着する。
幅は狭いが奥行きのあるラゲッジルームは、機内持ち込みサイズのカバンが収容できる。

SPECIFICATION
ALFA ROMEO 4C
全長×全幅×全高:3990×1870×1185mm
ホイールベース:2380mm
トレッド(F/R):1640/1595mm
車両重量:1050kg
エンジン:水冷直列直噴4気筒DOHC+ターボ

総排気量:1742cc
最高出力:240ps/6,000r.p.m.
最大トルク:35.7kg-m/2,100-4,000r.p.m.
サスペンション(F/R) : ダブルウイッシュボーン/ストラット
ブレーキ(F&R) : ベンチレーテッドディスク
タイヤ(F/R): 205/40R18/235/35R19

4C SPIDER
2015年に追加されたスパイダー。ルーフは脱着式のソフトトップを採用する。ヘッドライトとリアのエンジンフードは専用デザインを採用する。車重はスパイダーの方が10kg重くなっている。
MASERATI MC20
マセラティから全く新しいミッドシップ・スポーツカー「MC20」が、2020年にリリースされた。イノベーション・ラボで開発され、モデナ工場で生産されるこのクルマは、同社の新時代の皮切りとなるモデルとなる。
1 2