TMB IMPRESSION

<インプレッション>
実際乗ったらどうなんですか?
TMBが選りすぐった“名車”を運転してみて感じたこと

ALPINE A110 ON TRACK

2018年の日本上陸以来、スポーツカーファンを魅了し続けるアルピーヌA110。公道での走りの気持ちよさは多く語られているところだが、ではサーキットでのA110の実力は、いったいどれほどのものなのか? ここでは開発にも携わった石井昌道によるサーキットインプレッションをお届けしよう。

TEXT / 石井昌道 PHOTO / 神村 聖
SPECIAL THANKS / アルピーヌ・ジャポン(https://alpinecars.com/ja/

限界領域で分かったアルピーヌの本来の姿

A110のサスペンションはストロークがたっぷりとしていてスポーツカーとしては比較的にソフトではあるが、サーキットを走るとどうなのだろうか? 今回は富士スピードウェイのショートコースが舞台だったが、以前に欧州の3箇所のサーキットを走った(ウエット路面も含む)経験から言えば、ソフトさが足枷になるようなことはまったくなく、アンダーステアをほとんど感じさせないニュートラルなハンドリングを存分に楽しむことができる。

ロールやピッチングは明確に起こるがタイヤと路面が常に理想的なコンタクトをみせてグリップを引き出し続けられるのだ。ストローク・スピードは上手にコントロールされジワジワと姿勢がかわっていくので挙動の予想がつきやすく、おそろしく速いコーナリングスピードを誇るわりに常に手の内に収めていられる実感がもてる。ストロークを使い切ってからの挙動も理想的。バンプストップラバーではなく、ハイドロリック・コンプレッション・ストップと呼ばれるセカンダリーダンパーを採用しており、底付きしてもラバーのように反発せずにダンピングを効かせながら入力を受け止めるので、タイヤを路面に押しつけ続けてくれる。

舵の効きが良く、リアが粘り過ぎないニュートラルなセッティングゆえ、タイミング良く素早い操舵スピードで進入していけばテールを振りだしていくことも難しくない。そのときのコントロール性も抜群に高いから、腕に覚えがあるドライバーなら振り回して遊ぶにも最適なモデルといえる。

ストレートで200km/hをゆうに超えるコースではダウンフォースがしっかりと効いていて、高速コーナーでも前後バランスが良かった。走行モードは「ノーマル」、「スポーツ」、「トラック」と3種類用意され、ESC(横滑り防止装置)の介入も変わってくる。「ノーマル」のままだとさすがにサーキットでは物足りない。まだテールがブレークしそうにないのに、立ち上がりでパワーを絞られてしまうからだ。「スポーツ」ならばタイヤの限界に近いところまで介入が遅れるのでだいぶ楽しめるようになる。「トラック」はある程度のテールスライドが起きても許容される。感覚的にはステアリング舵角が90度ぐらいまでは介入しないので、十二分にサーキット走行を楽しめるのだ。それ以上になると横滑りを止めようとしてくれるが、無茶をすればスピンすることもある。もう一つ、ESCはスイッチによって完全解除も可能で、存分に振り回せるようになる。

ソフトでストロークの深いサスペンションはサーキットでもまったく問題がないが、それでもハードにしていけばもっと速くなるだろう。富士スピードウェイのショートコースでは、メインストレートの途中から左に入っていくコース取りにすると下りの中・高速S字となり、左右左と連続して切り返していくが、そういった場面ではロール剛性をあげればあげるほど素早く駆け抜けられるはずだ。現状のA110の完成度も見事だが、もう少しハードに振った仕様に乗ってみたいとも思う。

今回のテストドライブのために本国より来日した、テストドライバーのデビット・ブラッシュ氏(左)と、メカニックエンジニアのリオネル・クルトゥーズ氏(右)。