TMB IMPRESSION

<インプレッション>
実際乗ったらどうなんですか?
TMBが選りすぐった“名車”を運転してみて感じたこと

BMW i3 RANGE EXTENDER

駆動はEVのみ、RRレイアウト、カーボン製ボディシェルなどで注目されデビューを果たしたBMW i3。常にドライバーズカーを標榜するBMWゆえに、電気自動車に対する回答がどのようなものなのか、注目してみたい。

TEXT / 渡辺敏史 PHOTO / 内藤敬仁
SPECIAL THANKS / BMWジャパン(http://www.bmw.co.jp/

電気自動車に関するBMWの回答

通常のプロダクションモデルをベースに走りの性能を極限まで高め、サーキット走行も念頭に置きながら日常面でのラグジュアリー性も両立させる。「M」のそういう立ち位置に対すれば「i」は、次世代のパワートレインを軸にデザインやマテリアルでもサスティナビリティを追求しながら、走る愉しさも両立させると称すればいいだろうか。いずれにせよ、BMWには両翼にこれらを携えての三つ巴で「駆けぬける歓び」を表現しているわけで、非常にわかりやすいブランディングとなっている。

なぜ、BMWがiブランドを手掛ける必要があったのか。しかもそれは単に既存車の心臓部を入れ替えるだけのものではなく、全てをオリジナルで設計するという大掛かりなものとなったのか。これらは、現在BMWが置かれている環境を鳥瞰すれば、なんとなく掴めてくる。

なにより最大の理由は、欧米市場における環境基準の強化が待ったなしの状況になりつつあることだ。これは「達成できないメーカーに対して金銭的ペナルティを販売台数ごとに課す」という非常に厳しいもので、ハイパフォーマンスを売りにして対価を得るドイツ系のメーカー、ことメルセデス・ベンツやアウディ、そしてBMWといったプレミアムブランドはそれに対する対策がここ数年の喫緊的課題となっている。こと、世界で最も厳しい環境基準を設けるカリフォルニア州においては、ゼロエミッション車の販売がなければ立ち行かない状況にまで追い込まれているわけだ。もちろんそのカルフォルニアが世界有数の高級車市場であることは明らかなわけで、ピュアEV、もしくは数十kmのEV走行が可能なPHEVの投入が不可避となっていることが、ドイツ系メーカーの動きを活発化させていることは想像に難くない。つまりそれは、BMW全体で各国の環境基準をクリアするための通行手形のようなものであり、同時にブランドイメージを高める企画と仕立てであれば、開発費はそのロイヤリティと相殺できると。その読みはあながち間違いではないだろう。が、iには更に大きな狙いがある。それは彼らが今後の市販車に展開を目論む先進技術の先行開発という側面だ。

たとえば熱間成型を用いたカーボンモノコックボディの生産技術、そしてカーボン繊維の加工や織りに至るまでの一気通貫的工程の確立……と、iシリーズで培われたこれらのノウハウは今後のBMWブランドの市販車にも投入されることは既に公言されている。素材の源流である炭素繊維の生産能力は2020年までで3倍へと増強されており、現行型7シリーズはカーボンを大胆に採用し、クラス内での圧倒的最軽量車両重量を達成している。つまり、BMWにおける軽量化技術の要としてカーボンはiシリーズから多面的展開へと移行することになるわけだ。

加えて、iシリーズ用にメーカーと共同開発した細幅&大径タイヤの技術も、その背景にはBMWのタイヤに対するこだわりがある。彼らはランフラットに関しても、乗り心地やレスポンスにまつわる不評をものともせず使い続けてきたことで、現在は他社をリードするノウハウを身につけてきた。標準的骨格の車両にこの技術が用いられる可能性は低いが、今後パワートレインの変化によりパッケージの自由度が増せば、タイヤのあり方も大きく変わる可能性がある。BMWはランフラットでそこに対して他車に先んじた一手を打っていると考えるのが妥当だろう。

僕の印象的にはi3、それらの先進技術を内包したシャシー側に驚くようなイノベーションが感じられる。カーボンの軽い車体に電池の床下搭載によるEVならではの低重心という物理的な援助があるにせよ、よくこれほど細身のタイヤで縦側だけでなく横側のグリップ力を確保しているのは驚きだ。EVとしてみても、敢えてモーターの特性を活かして発進からの強大なトルクを積極的に用い、アクセルオフでの強烈な回生も強く残すことでのワンペダルドライビングというコンセプトを提案しているが、これもタイヤのコンプライアンスに自信がなければ出来ない所業である。

そのワンペダルドライビングでリズムを掴みさえすれば、i3は街中の交差点をひとつ曲がることですら気持ちのいいコンパクトスポーツとしての魅力も感じられるクルマだ。細い前輪に荷重を掛けるも、強大な駆動力を後輪に伝えるも右足一つで自由自在とあらば、それはさながら運転の楽なナローボディの911にでも乗っているかのようでもある。爆発的なトルクを活かしながらステアリングフィールを確保するという点からみれば、EVこそ後輪駆動がドライビングファンの要となる、それをBMWはi3のパッケージングで見事に証明している。

想像もつかないような技術でクルマの有り様がどうなれど、最終的にはタイヤという四肢が路面と触れている。それがクルマというものだとすれば、走る愉しさを失うことはあり得ない。i3にはBMWのそんな意気込みがひしひしと感じられる。初出のEVにして、よくぞここまで魅力的なモデルを作ったものだ。

ボディ右サイド後部には給電口。ちなみに給油口は前に設置。
タイヤはEVモデルだと155/70R19で前後共通だが、エクステンダーモデルだとフロント155/70R19、リア175/60R19とリアがやや太く、ロープロファイルとなる。
オプションで用意されるユーカリ・ウッドのインテリアトリム。
インテリアのオプションである「SUITE」をチョイスすれば、インストゥルメントパネルとシートがハイドレザー張りとなり、ダッシュボード上に開気孔仕上げのユーカリウッド・インテリア・トリムが備わる。
ステアリング右上に備わるのは、ダイヤル式にボタンを組み合わせたギアシフト。
オリーブの葉から抽出した天然のオイルでなめし加工されたレザーシートは、独特の風合いを醸し出している。
一体型のリアシートは、背もたれが5対5の分割可倒式で、前方に折り畳むこともできる。

MORE INFO.

BMW初の4人乗り電気自動車

BMWが初めて送り出した量産型の4人乗り電気自動車。通常のEVモデルに加えて、発電用のエンジンを搭載した「レンジエクステンダー」モデルもラインナップ。ボディはアルミニウムよりも30%も軽量ながら、優れた強度を持つカーボンファイバー強化樹脂(CFRP)製のパッセンジャーセルを採用。優れた安全性を手に入れただけでなく、前後のドアを観音開きとすることができて、個性的でかつ効率的なレイアウトが可能となった。

床下にバッテリーを、動力源となるモーターと発電のために用意された小型のエンジンは車体後部に搭載。そのおかげでセンタートンネルの無い、フラットで余裕のある室内空間が実現できている。

SPECIFICATION
BMW i3 Range Extender
全長×全幅×全高:4010×1775×1550mm
ホイールベース:2570mm
トレッド(F/R):1575/1560mm
車両重量:1390kg
エンジン形式:直列2気筒DOHC
総排気量:647cc
最高出力:38ps/5000r.p.m.

最大トルク:5.7kg-m/4500r.p.m.
モーター最高出力:170ps/5200r.p.m.
モーター最大トルク:25.5kg-m/100-4800r.p.m.
サスペンション(F/R):ストラット/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ(F&R):ベンチレーテッドディスク
タイヤ(F/R):155/70R19/175/60R19