TMB IMPRESSION

<インプレッション>
実際乗ったらどうなんですか?
TMBが選りすぐった“名車”を運転してみて感じたこと

ALFA ROMEO GT1300 JUNIOR

GTAは別格として、段付きに比べてリーズナブルに乗り出すことのできる105系のアルファロメオと言えばフラットノーズだろう。その中でもここで取り上げるGT1300ジュニアは、排気量こそ小さいが、街中でも高揚感を得られる稀有な1台だ。

TEXT / 中本健二 PHOTO / 山本佳吾
SPECIAL THANKS / ガレージMM(http://garagemm.com/

“段”はなくても
しっかりアルファの乗り味

“段”こそないが、リアスタイルはベルトーネデザインの美しさが光る。
ヒストリック・アルファの基準となる逸材

ジュリエッタやSZ、デュエットなどヒストリック・アルファで人気の高いモデルは数あるが、一番人気はやはり段付きのジュリア・クーペだろう。さらに予算が許せば役モノのGTAを狙いたくなる。だがGTAはもちろんのこと、ジュリア・クーペもそのハードルは上昇傾向にあり、簡単に手が出せる価格の個体は、アルファの乗り味を堪能する前に、トラブル続きでヒストリックカーから遠ざかってしまうことを予感させる。

そんな中にあって、比較的気楽に乗り出せるヒストリック・アルファの代表格としてGT1300ジュニアをオススメしたい。ジュリア・クーペの特長と言える段がないフラットノーズは、まだまだ少数派で人気薄。だからこそ狙い目でもある。

簡単にモデル解説をすると、ジュリア・スプリントGTの廉価版として66年にデビューした1300GTジュニアの後を継ぐクーペで、グリルの水平1本バーおよび2灯式ヘッドライトを持つ。ここで取り上げた個体の様に71年には外観上で最大の特徴であったボンネット先端の段が無くなり、ヘッドライトが両端に配置されている。75年まで生産され、後継モデルはスッド・スプリントだ。

現車は横浜市都筑区に店舗を構える、ヒストリックアルファ&アバルトのスペシャルショップ『ガレージMM』で販売されていたもので、車両本体価格は取材当時で300万円+税。段なしに比べると不人気ゆえか、キレイに仕上げても販売価格に転嫁することは難しく、それゆえパリッと仕上がった販売車両を見つけるのは意外に難しい。だがこの個体は前オーナーが最近手放したばかりで、きっちりとメンテナンスされてきたことが容易に想像できた。リペイントや、フルレストアされた新車の様な輝きではなく、説明は難しいが佇まいが良いのだ。

スタンダードスペックを味わえる貴重な個体

GT1300ジュニアのエンジン排気量は、車名の通り1300ccでシリーズ中もっとも少なく、ハッキリ言ってオリジナルでは速くない。だが高回転まで軽快に回る直列4気筒DOHCは十分に刺激的だ。タイムを競うサーキットではなく、お気に入りのワインディングを走るのがメインであれば、大排気量よりもむしろこちらの方が爽快で、クルマとの一体感も濃密。1.6リッターユニットに比べると低速トルクが細いため、街中のストップ&ゴーでの扱いやすさでは劣るが、それはあくまでも比較であり、単体で不満を感じることはないだろう。

今回は幸運にも試乗する機会を得たが、アイドリングは驚くほど静かで安定しており、クラッチがミートする極低回転域でもムズがることはなかった。3リッタークラスのクルマに乗り慣れたオーナーには、引っ張りすぎと思われるくらいのエンジン回転数でシフトを操るのが気持ちよく、5速M/Tの入りも良い。ソレックスのツインキャブが発する吸気音は思いの外控えめながら、十分に耳でもドライブを楽しませてくれる。ガレージMM代表の宮内さんによると、かつては”とりあえず”ウェーバーに換装するケースは多かったが、ソレックスが純正装着されている個体は、オリジナルを尊重してそのまま乗るオーナーが増えているとのことだった。

その他、シートやホイール、バンパーもオリジナルのままで、モディファイ系をお求めの方であれば物足りないディテールだが、オリジナル派には俄然魅力的に映る。サーキットで戦うアルファを見慣れた方には細すぎるタイヤサイズは165HR14で、銘柄はミシュランXAS。サイズが豊富に揃い、リーズナブルなエコタイヤは確かに重宝するが、これほどにオリジナルを残した個体であれば積極的にクラシックタイヤを履かせたくなる。なによりもマッチングは最高だ。

段もなければ赤くもない。あるのは、シリーズ中最も小排気量のエンジンと細いタイヤ、そして適度にロールする車高。オリジナルの状態を経験する機会が少なくなったいまこそ、スタンダードスペックの個体は貴重さを増す。ヒストリック・アルファに触れるうえで、基準車となりえる実力を秘めたGT1300ジュニア、見逃すのは勿体ない。

運転席の座面に破れが見られるが、シート表皮は張り替え後に納車されるとのこと。なお1300のシートにはヘッドレストは備わらない。
リアシートやドア内貼りに使用感やスレは少なく、コンディションは良好だ。
紫外線のダメージを受けやすいダッシュボード上部やドアの内張りなども経年劣化は少ない。
トランクスペースの開口部は広く、収容力も高いため使い勝手に優れる。ラゲッジ下に備わるフルサイズのスペアタイヤにもミシュランXASが装着されていた。
“かつおぶし”とも呼ばれるオーバーライダーや、Cピラーにアルファのエンブレムが付かないなど、簡素な装備もこのモデルの特長といえる。
GT1300ジュニアのエンジン排気量は車名の通り1300ccでシリーズ中もっとも少ないが、高回転まで軽快に回る。
GT1300ジュニアはヒストリック・アルファに触れるうえで、基準車となりえる存在だ。