TMB IMPRESSION

<インプレッション>
実際乗ったらどうなんですか?
TMBが選りすぐった“名車”を運転してみて感じたこと

FIAT 500 TWINAIR

クルマ趣味人たちの注目を集めて復活し、見事その期待に応えてみせた現行フィアット500。偉大な先代たちのテイストを取り入れて、現代風にアレンジした外観もさることながら、2気筒エンジンを搭載した中身も、やはり唯一無二の立ち位置を明快に示している。

TEXT / 森口将之 PHOTO / 前田恵介
SPECIAL THANKS / FCAジャパン(https://www.fiat-auto.co.jp/

クセが魅力に昇華するイタリアの職人技

デザインそして走らせる楽しさも、復活から10年以上が経過した現行500が、未だ多くのオーナーを生み出し続けている要因だ。デュアロジック&2気筒の組み合わせは、4気筒トルコンA/Tなどに比べて強烈と感じるほど個性的だが、それを魅力として受け入れたくなる。

現行フィアット500がデビューしたのは2007年。気がつけばロングセラーカーの仲間入りを果たしていたのである。たしかに日本のあちこちで、このクルマを見かけることは珍しくなくなった。ただそこに、古くなったという印象はない。

やっぱりあの愛らしいカタチが効いている。現行型のモチーフになった空冷2気筒リアエンジンの先代も、1957年から18年にわたり作り続けられた。しかも先代で古さを感じるのは動力性能や快適装備といった面であり、デザインに関してはいまなお愛される存在であり続けている。その個性を受け継いでいるのだから、エバーグリーンな存在になって当然だ。

ちなみに500は2016年マイナーチェンジを行っていて、見た目もアップデートを果たしている。これだけ完成されたフォルムをいじることに一抹の不安を抱いたものだが、デイタイムランプはスモールランプとうまく融合しているし、ドーナツ型のリアコンビランプはキャンディーのようで500に似合っている。自分のキャラクターを理解していて、なおかつやりすぎないリデザインにも好感を抱いている。

時代が500にとって追い風だったことも記しておくべきだろう。デビューの翌年にリーマンショックが起こり、世界同時不況になったことに加え、地球温暖化に歯止めが掛からず、2009年にはEUでCO2排出規則が成立した。小さくて安くてクリーン、でも自慢できるプレミアムコンパクトの500にとって、願ってもない時代の到来だったのではないだろうか。

一方のメカニズムは、当初はプラットフォームもパワートレインも先代パンダと共通だった。このままだったら現在の名声を確保できなかったかもしれない。やっぱり2010年に追加されたツインエアの影響力は外せない。

1リッター未満という排気量のターボエンジンは、我が国の軽自動車などで実用例があった。しかしそれらが3気筒だったのに対し、ツインエアはその名のとおり、一歩先行く2気筒とした。前述のように先代500は2気筒を積んでいたから、復活ということになる。

僕はかつて、本誌の長期レポート車で先代500を担当していたし、現在は同じイタリア製2気筒のモーターサイクルを所有しているので、両手を挙げて歓迎した。でも自動車業界は少し前まで、シリンダー数は多いほうが高級という思考が主流だったから、ツインの鼓動や振動を低級と判断する人も多かった。

それを見越してプレミアムコンパクトの量産車に2気筒を搭載したフィアットの大胆な決断は、革新的な小型車をいくつも送り出してきたブランドならではだ。幸いにして多くのユーザーが、ツインエアの走りと先代譲りのスタイリングに”カワイイ”という共通項を見出したようで、安定した販売成績を挙げている。もちろん燃費も良好で、以前ドライブしたときは実測で24km/リッターを記録した。

最新型では独特の振動はかなり抑えこまれ、発進はスムーズになり、ローからセカンドに変速するときの減速感もあまり気にならない。でもスロットルペダルを踏み込んだときの感触は、3気筒以上のエンジンとは明らかに異なる。感覚性能の高さで言えば、フェラーリの12気筒に匹敵するんじゃないだろうか。でもこれはフィアットだ。200万円台で買え、100km/h以下でも楽しめ、20km/hリッター以上走る。クルマ趣味の深さは財力に比例しない。気持ちだ。ツインエアは独特の響きで、それを誰よりも雄弁に、僕たちに語りかけてくれる。

ラインナップ当初よりは、2気筒エンジン特有の振動は抑えられているが、やはりその存在感は絶大。メインカットのように、振動はしっかりと体感できる。低回転から高回転ヘ向け、エンジン回転数の上昇に比例してスムーズさを増していく特性は、乗り手を興奮させるに十分足るものだ。
インテリアはポップなカラーで彩られているが安っぽさは感じさせない。チェック柄のファブリックシートに、フィアットらしさを感じさせてくれる。Cピラーに角度がついているためラゲッジ容量はそれほどではないが、シートアレンジで大きな荷物の積み込みは可能だ。