TMB IMPRESSION

<インプレッション>
実際乗ったらどうなんですか?
TMBが選りすぐった“名車”を運転してみて感じたこと

CATERHAM SEVEN 620R

ケータハム史上最強のスペックを誇る620R。545kgの車体に310psのエンジンを搭載するという、ちょっと常識外れなところもセブンの真骨頂である。そしてその走りもまた過激で楽しいのだ。

TEXT / 斎藤慎輔 PHOTO / 神村 聖
SPECIAL THANKS / ケータハムJAPAN(http://www.caterham-cars.jp/

暴れる後輪を手なづけろ!

セブン乗り、あるいはセブン好きにとって、620Rがセブンのロードバージョンとして最高峰、最速モデルであることは、今さら説明するまでもないことだろう。そして620の意味が、1トンあたりの馬力を示していることも。

これがどれほどにスゴいのか。たとえば最高出力が2020モデルでは600psに達している日産GT-Rニスモの車重は1720kgだが、仮に、これで1トンあたり620psといった数値を得ようとしたなら、最高出力は、なんと約1100psも必要ということなのだ。

620Rのエンジンはフォードのデュラテック4気筒2リッターがベースで、これにスーパーチャージャーを与えて310ps/7700r.p.m.、30.4kg-m/7350r.p.m.の最高出力、最大トルクを得ている。スポーツカー向けの2リッター過給エンジンとして突出した性能値ではないのだが、なにせ、セブン620Rの車重は僅か545kgだ。

これは、車両の運動性能、動力性能にとって絶大な威力となる一方で、タイヤの性能を引き出す接地荷重においては不利ともなる。また、最新スポーツカーでは常識の、空力操安も無縁だろう。

イモビライザーを解除してエンジンを始動すると、周囲を驚かすほどの轟きではなかった。日本向けにはオプションのサイレンサーが装着されているとのこと。近年のスーパースポーツに多くみられるエンジンサウンドの演出的な咆哮もなく、もはやギミックがない全て素のままであること自体が新鮮だ。

エクステリアは他のモデルと同じで、特別なアイテムなどは装着されない。

今回は一般公道での試乗だから、エンジンもタイヤも能力いっぱいまで使うなんてことは、全く無いというか無理なのだが、その速さの化け物ぶりと、タイヤのグリップ制御を一切電子制御に頼らず、そこを探りながらコントロールする痛快さと緊張感の狭間の思いの片鱗は味わうことができた。大きめのサングラスで顔を覆ってはいても、にやけた表情でドライビングしていたことは周りからバレバレであったと思う。

まず加速。車重は極端に軽く、それに対してアイドリング域からトルクは十分にあるので、発進のクラッチコントロールはラク。またドグミッションでシーケンシャルシフトを備えるため、クラッチペダルの操作をせずにシフトができるので、実は変速操作も容易い。とくに、急加速、急減速の際の素早いシフトには、シフトロックの心配がないという面でも有り難く、さらに言えば、スポーツドライビング時には、その小気味よさがより気分を高揚させる。

ほぼ最高出力発生回転に近いところで最大トルクを得るという、スーパーチャージドエンジンらしからぬ特性は、回すほどに力が増すというより炸裂する感覚。タイヤがエイボンのセミスリックということもあって、冬のアスファルト路面では発熱もままならず、本来のグリップは発揮できないため、全開では2速はもちろん3速でも一瞬にして到達する5000r.p.m.以上でホイールスピンを激しく起こして姿勢を乱すので、姿勢の修正に真剣にならざるを得ない。正直、ドキドキさせられたが、これが快感ともなるのだった。

とはいえ、暴れる後輪をそのままに姿勢を修正しつつ7000r.p.m.を越えて、8000r.p.m.近くまでアクセルを踏み続けるなんていう蛮勇はとても持てなかった。今回、簡易のドアは装着したので身体側面が風にさらされることはなかったが、それでも、動き出した後の加速感は、ボクの経験の中では最強といえるほど。

足は公道では明確に硬い。高速でも跳ねながら走る感覚で、直進維持にも少なからず気を使ったが、そこはこのクルマに求めるところじゃない。体感的には世界一かというような加速と、軽さを活かした減速、そこからのシビアながらも圧倒的に速くかつ痛快なハンドリングこそが全てである。セブンの本質は軽い車重と小さな慣性に基づくが、中でも620Rはあり余るパワーで暴れる動きを制する反射神経と相当なスキルを要する。楽しさの先に真剣に、クルマと対峙する歓びを与えてくれる点でもピカイチだと思う。

容赦なく巻き込む風も、体感スピードをさらに増長させる。
フォード製2リッターエンジンをベースに、スーパーチャージャーを組み合わせ、最高出力はシリーズ最強となる310psを発生。レブリミットは9000r.p.m.と、高回転ユニットでもある。3速でもホイールスピンをするほどの過激な特性はある意味で病みつきになる。
専用となるカーボンパネル、トグルスイッチを採用し、他のグレードよりモダンな佇まいとなる。モモステアリングは脱着式。
集中してレイアウトされるトグルスイッチ。スターターもここに配置される。夜間は各スイッチのランプが光る。燃料、油温、油圧計が並ぶ。
シーケンシャルタイプのドグミッションは、ケータハムのオリジナル。発進と停止時のみクラッチを使うが、あとはそのまま操作できる。
軽量なカーボン素材のバケットシートには、薄いクッションと滑り止めも兼ねたアルカンターラ素材を採用。3点式シートベルトも備わる。
13インチと小径なタイヤはエイボン製。ブレーキはAP製の4ポッド対向キャリパーが収まる。軽量な車体に対して十分な性能を確保。

SPECIFICATION
CATERHAM SEVEN 620R
全長×全幅×全高:3100×1575×1115mm
ホイールベース:2225mm
トレッド(F&R):1336mm
車両重量:545kg
エンジン形式:直列4気筒DOHC+スーパーチャージャー
総排気量:1999cc

最高出力:310ps/7700r.p.m.
最大トルク:30.4kg-m/7350r.p.m.
サスペンション(F/R):ダブルウィッシュボーン/ライブアクスル
ブレーキ (F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤ (F/R):175/55R13/205/55R13
価格:946万円