TMB IMPRESSION

<インプレッション>
実際乗ったらどうなんですか?
TMBが選りすぐった“名車”を運転してみて感じたこと

GINETTA G4

今日まで60ほどのモデルを送り出したジネッタ・カーズだが、ファナティックに記憶されている作品は数えるほどしか存在しない。草創期のジネッタが生み出したG4は、その愛らしい表情によって愛され、鋭いハンドリングで乗り手を挑発する稀有な1台だ。

TEXT / 吉田拓生 PHOTO / 佐藤亮太
SPECIAL THANKS / ウィザムカーズ(http://www.witham-cars.com

愛らしい表情に隠された競争心

ロングノーズ・ショートデッキのスタイル。車内はメカニカルノイズが響くが、それが不快にならないのは、ドライビングプレジャーの方が上回るから。

イギリスのスポーツカー専業メーカーであるジネッタだが、一般的なクルマ好きの眼には得体の知れない1台として映るのではないだろうか。ともあれ万人に共通するのは、その丸みを帯びた表情やボディ全体のアピアランスが「この上なく愛らしい」という点であろう。

ロータスがセブンの生産を開始した翌年、1958年にウォークレット4兄弟によってイングランド中央部、リーズの街で設立されたジネッタ・カーズは、紆余曲折を経て命脈を繋ぐ今日に至るまで鋼管スペースフレームによるシャシーとFRP製のボディによる少量生産を行ってきた。60年以上の歴史を誇る同社の足跡を俯瞰してみると、レーシング活動に積極的だった時代に栄華を誇っていることがわかる。つまり草創期と21世紀以降である。ローレンス・トムリンソンという実業家が采配を振るう今日のジネッタは、レーシング・マニュファクチャラーとしての色が濃い。ワンメイクレースを皮切りにレーシングカーを熟成させる術を身に着け、ついにはLMP1カーであるG60をリリースして、ル・マン24時間でトヨタを破るというとてつもなく大きな目標を掲げているほどである。

だがもちろん、G4はその名の通りジネッタ・カーズにとって4番目の作品であり、ウォークレット兄弟によって家族経営されていた当時に設計されたモデルだ。

60年代初頭のイギリスで隆盛を誇ったバックヤードビルダーは、フルFRPモノコックに挑戦したロータスやマーコス以外は鋼管フレームにアルミやFRP製のボディを被せたモデルを生産し、クラブマンレースに勝つことで名声を得ていた。

ジネッタG4は丸みを帯びたフルカウルのボディによってロータス・エランと比較されることが多いが、実際は量産に適したロードモデルとして開発されたエランとは対照的なほど、純レーシングカーの素養に満ちている。ジネッタの鋼管スペースフレームはロータスのそれより径が太くサイドシルまでトラス状にガッチリと組まれたもの。原初のG4ではこの鋼管に巻き付けるようにして当時最新の複合素材だったFRPが用いられ、強固なシャシー剛性が確保されていた。実際に乗っていても、ガッチリとした剛性感がある。

フロントアクスル後方の、極めて低い位置にフロントミッドシップマウントされた4気筒エンジンはフォード・ケント・ユニットか、その腰下を活かしたロータス・ツインカム・エンジンが組み合わされることが多かった。また原初のレースカーは、フロントスクリーンをはじめとするハードトップの一切が装着されていない個体が多く、その点でも純レーシングカーに近い構成となっていた。

足まわりも同様で、ダブルウィッシュボーンのフロントはピロボールによるフルアジャスタブルであり、一方ライブアクスルに改造を施したリア足は、Iアームを使用してダブルトレーリングを形成しつつ、右側のロワーアームのみAアームとすることで横方向の位置決めも行っている。

こうして限りなくレーシーに設えられたジネッタG4のシャシーは、柔で剛を制すようなロータスのロードカーとは比較にならないほどの鋭敏なレスポンスを秘め、時代を越えてごく少数のファナティックに愛され続けてきたのである。

コクピットの狭さは時代を問わずクローズドボディのレーシングカーに共通する特徴であり、小さなバケットシートに寝そべるように収まると、それだけで体とシャシーが一体化したような感覚に捉われる。ゴム製のマウント類の使用を最小限に留めているため、ケント・ユニットに火を入れると、車内はノイズと振動で満たされ、すぐにでも走り出したくなる。G4は人に見せびらかして悦に入るようなクルマではなく、ただただ神経を集中して走り込み、カタルシスを得るマシーンなのだ。

今回は軽く流したに過ぎないが、以前サーキットで走らせた時にはそのカミソリのように鋭いハンドリングに心底驚かされた。今回試乗した個体は初期のG4より100mm近くホイールベースが延ばされているが、それでもなお全てのロータスを凌ぐほどのショートホイールベースであり、それはクイックなハンドリング性能に直結している。

表情は愛らしく飄々としているジネッタG4だが、その体内には真っ赤に燃えたぎるレーシングの血が脈々と流れているのである。

シンプルに徹したコクピット。上下に薄いダッシュパネルがクルマ全体の重心の低さを物語っている。センタートンネルの幅が広いのは、パワートレインを車体中心にレイアウトしているため。
ロードクリアランスが許すギリギリまで搭載位置が下げられたケント・ユニット。搭載位置もフロントミッドだ。その両脇に走る角断面の鋼管が骨太なG4の性格を表している。
ダッシュパネルに並ぶメーターとトグルスイッチ。必要最低限のアイテムしか装備されていない、それは、まさにレーシングカーの意匠。特にリアタイヤのトリッキーともいえる挙動を正確につかむためには感度の高いシートの存在が不可欠となるため、体に合ったシートを自作する人も少なくない。
ライブアクスルとコイルオーバーのショックアブソーバーを組み合わせたリア足。右のロアアームが斜め方向の位置決めも兼ねている。
13インチのミニライトタイプのアロイホイール。ブレーキはフロントがディスク、リアはドラムだ。
リアのトランクは一応存在するが、ご覧の通りバルクヘッドがなくリア足が丸見えな状態。アクスルやサスペンションを確認するためのメンテナンスハッチとも言える。

SPECIFICATION
GINETTA G4
全長×全幅×全高:3505×1425×990mm
ホイールベース:2027mm
トレッド(F&R):1220mm
車両重量:555kg
エンジン:直列4気筒OHV

総排気量:1690cc
最高出力:130ps/6500r.p.m.
最大トルク:16.8kg-m/4500r.p.m.
サスペンション(F/R):ダブルウィッシュボーン/ライブアクスル
タイヤ(F&R):165/70R13