TMB IMPRESSION

<インプレッション>
実際乗ったらどうなんですか?
TMBが選りすぐった“名車”を運転してみて感じたこと

RENAULT 16 TS

成り立ちから見れば大きな4(キャトル)。とはいえベーシックカーの4に対して、当時のルノーの最上級車種だったルノー16(セーズ)。現在の1.5リッタークラス乗用車の定型である前輪駆動ハッチバックというパッケージングを、このクラスで初めて取り入れたクルマに、現代の路上で改めて乗った。

TEXT / 森口将之 PHOTO / 内藤敬仁
SPECIAL THANKS / アウトレーヴ(http://autoreve.jp/

フレンチイズムの集大成

このクルマが登場した1965年、同じ1.5リッタークラスの乗用車に何があったか振り返ってみると、フランスではプジョー404、ドイツではノイエクラッセと呼ばれたBMW 1500、日本ではスカG伝説のベースとなったプリンス・スカイライン1500などがあった。いずれもFRのノッチバックセダンだ。

現在のアウディの礎となったアウディ75など、前輪駆動の車種もなくはなかったけれど、やはりセダンだった。逆にハッチバックは日本でも同じ時期にトヨペット・コロナに設定されたりしたが、もちろん後輪駆動だった。

つまりルノー16(セーズ)は、現在の1.5リッタークラスの乗用車の定型である前輪駆動ハッチバックというパッケージングを、このクラスで初めて取り入れたクルマになる。それだけ取り出しても先進的であり、欧州カー・オブ・ザ・イヤー受賞は当然に思える。

たしかに2019年の今見ても、パッケージングは現在のクルマとさほど変わらない。同じ前輪駆動でひとクラス上に君臨していたシトロエンDSとは違う意味で、旧いクルマなのに古さを感じない。

一方でルノー16は、成り立ちから見れば大きな4(キャトル)である。頑丈なプラットフォームの上にハッチバックボディを構築し、直列4気筒エンジンをキャビン寄りに縦置きして前輪を駆動する。フロントは縦置き、リアは横置きのトーションバースプリングを用いた4輪独立懸架のサスペンションを含めて共通だ。

とはいえベーシックカーの4に対して、16は当時のルノーの最上級車種。それがディテールにも表れている。エクステリアではサイドとルーフのパネルの接合部を隠すモールがそのままリアゲート開口部に沿っていたり、ドアハンドルがキャラクターラインに合わせていたり、凝ったデザインが施されている。これも古さを感じさせない理由になっているようだ。

インテリアはブラウン系のビニールレザーという素材こそ時代を感じるものの、助手席側をトレイにしたり、メーターやスイッチを整理したり、モダンな処理が見て取れる。それでいて1960年代生まれらしく、インパネの奥行きが短くてウインドスクリーンが立ち気味なので運転しやすい。

シートはサイズはたっぷり、着座感はふっかりしていて、まさに極上。これだけでもルノー16を買う価値がある。それでいて背もたれは張りがあるので長距離も疲れなさそうだ。ヘッドレストがない背もたれは低めで、窓が大きいので実寸以上の開放感がある。

リアゲートを生かした収容能力の高さは4同様だが、16ではそこに多彩なシートアレンジを持ち込んだ。当時のカタログによれば、背もたれは現在のハッチバックのように前に倒すのではなく、前端を持ち上げて水平に固定する方式で、座面を前方に跳ね上げることで低くフラットな空間が手に入る。さらに背もたれを斜めにして前席背もたれとつなげることで仮眠ができたり、後席を前にスライドすることで子供や荷物が足元に落ちないようにしたりというモードも可能だった。

つまり単なるハッチバックではなく、ミニバンに近い内容だ。クルマを通してさまざまなライフスタイルを提供するという姿勢は、このあと1984年に登場したマトラ開発・生産のエスパスに通じるものがある。

当時のフラッグシップモデルということで、助手席前のパッドやウッドメーターパネルなど、インテリアは当時としては豪華な部類だ。

シートは御覧の通りクッションは肉厚でたっぷりとしたサイズ。表皮の素材はビニールレザーとなっており、造りもしっかりとしていて座り心地は抜群だ。

エンジンは水冷直列4気筒OHVの1.6リッター。トルクがあって乗りやすい実用的なキャラクター。縦置きのミッションを前側にすることで、エンジン位置をぎりぎりまでコックピット寄りにしている。

ルノー16は1965年、5年前まで生産していたFRの2リッターセダン、フレガートの市場に復帰すべく生まれた。基本構造はキャトルと共通で、キャビン寄りにエンジンを縦置きした前輪駆動、左右でホイールベースが異なるトーションバースプリングのサスペンションを持つ。ボディもキャトルに続いてリアゲートを持つ5ドアとなった。3年後に高性能版TS、次の年にはオートマチックのTAが登場。1971年にはリアを中心にマイナーチェンジし、さらにその2年後には4灯ヘッドランプを持つ最上級車TXが加わった。1975年には後継車としてルノー20/30 が登場するが、16はTX以外のグリルを黒塗りにするなどの手直しを受けつつ1980年まで生産が続いた。総生産台数は約185万台。

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