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JAGUAR XJS 4.0 CONVERTIBLE

近年ヤングタイマー世代を代表するジャガーとして人気急上昇中のXJS。 その象徴たる12気筒モデルが素晴らしいのは言うまでもないだろうが、 夏でも乗ることのできる6気筒モデルも、独自の魅力を湛えている。

TEXT / 武田公実 PHOTO / 山本佳吾
SPECIAL THANKS / ナカオワークス

夏が待ち遠しくなる
コンバーチブル

1975年、かの名作ジャガーEタイプの後継車としてデビューしたXJ-Sは、その心臓部もEタイプ・シリーズIIIから継承されたV型12気筒エンジン。同時期に生まれ、同じマーケットを競った高級パーソナルカー、BMW初代6シリーズの直列6気筒。あるいはメル セデス450SL/SLCや、同じ英国車ながら格上のアストンマーティンDBS/V8に組み 合わされたV型8気筒を圧倒するかのごとくゴージャスなV12を搭載することは、XJ-Sにとっては重要なファクター、そしてアドバンテージだったと言える。しかし、20余年に及ぶロングライフを誇ったジャガーXJ-Sの後半生を語るには欠かせないのが、83年にまずは3.6リッターからスタートした6気筒モデルの存在だ。

ジャガーの象徴として長らく重用されたXKユニットの登場から35年ぶりに完全新設計とさ れた直列6気筒エンジンのAJ6は、XKユニットと同じく直6DOHCながら、当時の最新流行である気筒当たり4バルブ、つまり24バルブのヘッドが与えられていた。その最高出力は225psと、当時のスポーツクーペ用パワーユニットとしてもなかなかに優秀なもの。販売価格もV12 より抑えられたことから、特に欧州のマーケットからは一定の支持を得ることになる。 一方、AJ6型エンジン搭載車の追加設定と時を同じくして、取り外し可能なルーフに収納式のリアウィンドウを持つセミオープン版『カブリオレ』も追加。さらに’88年になると、VWやポ ルシェのオープンモデルを長年架装し、オープンカーについては豊富なノウハウを誇るドイツのコーチビルダー『カルマン』社とのコラボレーションを得て、ロールバ ーやサイドウィンドウ用サッシュも持たない正真正銘のフルオープンモデル『コンバーチブル』が誕生することとなった。

そして、このコンバーチブルの追加こそが、やや旧態化が目立ち始めていたXJ-Sシリーズにとって絶好のカンフル剤となったと思われる。安全対策が重要視された70年代に開発されたXJ-Sは、元来クーペモデルのみの構成だったが、英国伝統のオープンモデルが追加された以降のXJ-Sは”クラシカルな味わいが楽しめる典雅な高級グランドツアラー”として再評価。北米を中心に、遅咲きのヒットを獲得することになるのだ。

ジャガーXJ-Sシリーズは、91年末に大規模なマイナーチェンジを受け、独特な三角形のテールランプはコンベンショナルな横長のものへと変更。車名もXJ-Sからハイフンを省いたXJSへと改称された。またこのマイナーチェンジの際に、6気筒版のAJ6ユニットは、既にX J6(XJ40系)に搭載されていた4リッター版へと拡大。初めて4速A/Tも選択可能となったこ ともあって、以前にもまして6気筒モデルのプレゼンスが高められることになったのである。  この記事にご登場いただいた94年モデルのXJSは、6気筒モデルの『4.0』。そしてボディタイプは、見てのとおりのコンバーチブルである。かつて筆者は92年型のXJS4.0クーペを愛用していたこともあり、ジャガーXJSというクルマ、ことに6気筒モデルの魅力は良く分かっているつもりだ。

同じXJSのエンジンでも、V12がサテン織のシルクならば、こちらの直6は上質なウール、例えるならカシミアのような回転フィールを感じさせる。またエンジン重量が軽くなる 分、旋回時のノーズの入り方もいささかなが ら軽快に感じられる。もちろん、ピュアスポーツカーのようなアジリティは望めないのだが、SRSエアバッグ装着車であっても繊細さを失わない ステアリングフィールとともにコーナーを駆け抜けるのは、こよなく魅力的な行為と断じてよいだろう。

また、信頼性という要素においてV12版よりも幾ばくかは安心度が高いのも、6気筒モデルの特徴のひとつ。同じく筆者の元愛車である88年 型デイムラー・ダブルシックスで”痛い目に遭った”V12モデルの熱問題についても、こちらは一定の改善が認められる。加えて、標準装備のエアコンディショナーについては、筆者のXJSクーペを含めてコンピュータなどにトラブルが発生する事例もあるようだが、万全に機能していればたとえ真夏であっても充分に使用に耐える。

だから、夏場に都市部やハイウェイなどではエアコンを効かせたクローズド状態で走る一方、例えば避暑地などではソフトトップを開け放ち、心地よい風を受けつつ直列6気筒DOHCエンジンの奏でる、かすかな重低音に耳を傾ける時間は、なかなか豊饒なものとなるに違いないだろう。

ジャガーXJSは6気筒であっても12気筒であっても生粋のジャガー。もしも良い個体に出会えたならば、極上のジャガー体験を味わうことができると、元オーナーである筆者が太鼓判を押しても良い。ただ、旧いクルマに乗るための心構えを頭の片隅に残しておくことも、同時 にお勧めせねばなるまい。

オープンエアの愉悦と6気筒エンジンの息吹を味わう
ウィンドシールドが屹立した古典的なスタイルは、オープンとした際に、ドライバーに極上の爽快感をもたらしてくれる。ピュアスポーツカーとは一線を画するものの、独自のスポーティ感は、ほかの何ものにも代えがたい。
80年代後半以降のモデルにはインテリアにウッドパネルが贅沢に奢られ、イギリス製高級車らしさを格段に感じさせるようになった。
細身のA/Tセレクターやアッシュトレイなどにも、この時代のジャガー特有の洒脱さが感じられる。
ちなみに6気筒モデルには、レザー/ツィードのコンビシートが標準装備とされていた。
ドイツの名門コーチビルダーで、オープンボディ架装の経験も豊富なカルマン社とのコラボで製作したソフトトップ。
レバーとスイッチで簡単に開閉できるが、耐候性に優れる上に、閉めた状態でもスタイリッシュ。
クーペ版の+2リアシートは廃され、代わりにリッドつきのラゲッジスペースが設けられることになった。
直列6気筒DOHC24バルブのAJ6エンジンは、225psをマーク。ウルトラスムーズなV12とは少々異なる性 格を持つが、これはこれで素敵なエンジンである。
テールの薄いデザインが物語るように、リアのブート(トラ ンクの英国式表記)は天地が低いものの、スペースは充分。

ジャガーとコンバーチブル

今も昔も最大市場の北米マーケットを重要視する一方、英国の伝統も体現してきたジャガーでは、1970-80年代の一時的な空白期以外は、常に魅力的なコンバーチブルモデルを設定してきた。

XK series
戦後ジャガー・オープンの開祖たるXK120/140/150ではロードスターとドロップヘッドクーペからなる2種類のオープン版を設定。’90年代に復活したXK8以降もコンバーチブルモデルが設定され、かつての栄光を継承していた。
E type
61年にセンセーショナルな誕生を果たした歴史的名作Eタイプは、XK150時代のロードスターとドロップヘッドクーペを一本化した『OTS(Open Two Seater)』を設定。
XJ-S
最大市場たる北米で安全対策が法制化された’70年代に登場したXJ-Sは、元来クーペのみの構成だったが、83年のカブリオレを皮切りに、88年にはコンバーチブルも誕生する。
F type
名作Eタイプ直系の血筋をアピールするFタイプでは、当然のごとくコンバーチブルを2013年のデビュー時から設定。生粋のピュアスポーツとして、高い人気を得ている。

SPECIFICATION
JAGUAR XJS 4.0 CONVERTIBLE
全長×全幅×全高 4765×1810×1280mm
ホイールベース 2590mm
トレッド(F/R) 1490/1505mm
車両重量 1730kg
エンジン形式 水冷直列6気筒DOHC
総排気量 3980cc

圧縮比 9.5:1
最高出力 225ps/4750r.p.m.
最大トルク 38.3kg-m/3950r.p.m.
変速機 4速A/T
懸架装置(F&R) ウィッシュボーン
制動装置 (F) ベンチレーテッドディスク/(R) ディスク
タイヤ (F&R) 235/60R15
価格(当時) 1185万5000円