TMB IMPRESSION

<インプレッション>
実際乗ったらどうなんですか?
TMBが選りすぐった“名車”を運転してみて感じたこと

LOTUS ELAN SERIES2

自動車が最も輝いていた1960年代を象徴するスポーツカーの一つ、ロータス・エランは、圧倒的な軽さとバランスを身上とする、極めてソフィスティケートされたモデル。そして時代を超えた魅力は、現代においてこそ新たな輝きを放ちつつある。

TEXT / 武田公実 PHOTO / 内藤敬仁
SPECIAL THANKS / ACマインズ(http://ac-minds.com/

ロータスをメジャーブランドへと
引き上げた立役者

1957年に登場したロータス・エリートは、その独創性と美しさ、そして何より高い性能で世界的評価を獲得したものの、FRPモノコックゆえの剛性不足やこもり音、コスト高騰にも悩まされていた。また、世界最大のスポーツカー市場だった北米からは、オープンモデルを求める根強いリクエストがあったのだが、それはFRPモノコックでは無理な相談。ロータスには、独立フレームを持つ新型車の開発が望まれていたのだ。

このような状況のもと、1962年秋にデビューした新型車が「タイプ26」ことエラン。その内容は純粋主義的なエリートにも劣らない、実に独創的なものだった。エリーゼ以前のロータス製市販車の大半はバックボーンフレームを持つが、エランはその開祖だったのである。

エランの設計で大きな役割を果たしたとされるのが、フォード出身のデザイナーで、エリートの開発途中からロータスに参入したロン・ヒックマン。彼は鋼板を溶接によって組み上げたY字型バックボーンフレームに、エリートで経験を得たFRP製ボディシェルを組み合わせ、高剛性・軽量の車体を創り上げた。一方ボディデザインについては、かつてはエリートのボディを監修したジョン・フレイリングによるとする文献もあったが、現代ではこちらもヒックマン主導だった、というのが定説。繊細さや優美さではエリートに譲るが、よりプラグマティックな魅力を得ることになる。

一方パワーユニットは、フォード・コーティナ用116E型エンジンに、コヴェントリー・クライマックスの技術者ハリー・マンディも開発に協力したとされる自社製DOHCヘッドを組み合わせた傑作「ロータス・ツインカム」。英国内マーケット向けには1498cc・100ps、北米を中心とする輸出用は1558cc・105psでスタートしたが、デビュー後ほどなく後者に統一されることになった。

当初のモデル、通称「シリーズ1(S1)」はオープンボディのみのラインナップとされたが、完成車で1495ポンド、キットフォームでは1095ポンドという、エリートと比べれば格段にリーズナブルな価格にDOHCエンジンのもたらす高性能。そして、ロータスならではの卓越した操縦性などで大成功を納めた。

その後1964年秋には「S2」に進化。さらに翌65年になると、タイプ36の開発No.が与えられたフィクストヘッドクーペ(FHC)モデルも登場。従来からのオープンはドロップヘッドクーペと称されたが、66年には新ボディに移行。FHCともども「S3」を名乗る。

そして68年に移行した「S4」が73年に生産を終えるまでに、歴代エランの総生産台数は1万2224台に到達。田舎町ホーンジーのホテルの馬小屋から出発したロータスを、周囲のバックヤードビルダーから数段も抜きん出た存在へと押し上げる原動力になったのである。

ロータス・エランに乗るのは久方ぶりのことだったが、このクルマは乗るたびに感動を新たにしてくれる。今回の取材にご提供いただいたのは、1965年型のS2。メカニカルコンディションは完調で、エランの神髄が味わえる1台である。

ロータス・ツインカムは、60年代のDOHCにウェーバー製キャブという組み合わせから想像されるより遥かに扱いやすく、始動性も良好。低回転域からクライマックスまで、弾けるような快音とともに気持ちよく回ってくれる。とはいえこのクルマの真骨頂は、やはり当時としては先進的なシャシーのもたらす、シャープなハンドリングであろう。

走り出した直後には、意外なほどソフトな乗り心地に驚かされるかもしれないが、速度を上げてゆくにつれ、ダブルウイッシュボーンの前足、エリートの「チャップマン・ストラット」からロワーウィッシュボーンで支えるストラットに変更された後足ともに良く動き、ロードホールディングが抜群であることが判ってくる。そして、ステアリングからギヤシフトまで、すべての操作系が繊細ながらピタッと決まるさまは、この時代のスポーツカーの中でも世界最高峰のひとつ……、と断言してしまいたいのだ。

そしてエランが身上とするもう一つの要素、約640kgという圧倒的な軽さも、このクルマの伝説性を実感させてくれる。エンジンのパワーやトルクは、半世紀前の1.6リッターゆえに大したものではないのだが、車体の軽さはそれを補って余りある。たしかに、サーキットではこの繊細なキャラクターが邪魔をして、結果として26Rが誕生したという事実も頷けるのだが、ことロードカーとしてエランS2を見れば、その絶妙なバランスに感心するほかあるまい。

誰もが認める60sスポーツカーの金字塔、ロータス・エラン。今こそ、この素晴らしさを再認識すべきと思うのだ。

エランのサイズは軽自動車よりも小さい。手足のように操れる感覚が、このクルマの楽しいところ。

上面に張り出しがなく、シンプルなデザインでめとれられたインパネ。ウッドパネルが全面に貼られることで、安っぽい雰囲気がしない。

リム/スポークともに細いレスレストン社製ステアリングとメッキリング付きの計器が織りなす光景が美しい。

シフトフィールは「カチカチ」と心地良いフィーリング。ストロークも少ない。

中央にバックボーンフレームが通るため室内はタイトだが、座ってしまえば心地よい。

バキューム作動のリトラクタブル式ヘッドライトを開くと、なんとも可愛らしい表情に。

145-13というか細いタイヤは、このクルマの軽快なフィールを醸し出す大切な要素。

こののちのロータスの象徴となったツインカム・エンジン。このS2の時代は105psに留まるが、S4時代の「ビッグバルブ」では126psまで増強された。

エランのデザインはフォード出身のロン・ヒックマンが担当。そう遠くないうちに、ロータスはこの名前を復活させるかもしれないという。

SPECIFICATION
LOTUS ELAN SERIES2
全長×全幅×全高:3683×1422×1149mm
ホイールベース:2134mm
トレッド(F/R):1196/1232mm
車両重量:640kg
エンジン:直列4気筒DOHC

総排気量:1558cc
最高出力:105ps/5500rpm
最大トルク:14.9kg-m/4000rpm
サスペンション(F/R):ダブルウイッシュボーン/ストラット
タイヤ(F&R):4.5×13