TMB IMPRESSION

<インプレッション>
実際乗ったらどうなんですか?
TMBが選りすぐった“名車”を運転してみて感じたこと

MORGAN PLUS 8

クラシカルな雰囲気はそのままに、その時代に合わせたパワートレインを搭載するモーガンは、気兼ねなくヒストリックカーの気分が味わえる数少ないブランドだ。最近はニューモデルが投入されるなど、日本での人気も再燃している。

TEXT / 武田公実 PHOTO / 佐藤正勝
SPECIAL THANKS / オートモービルアシスト・ブレス(https://themotorbrothers.com/special-shop/12731

ヒストリックなスポーツカーを手軽に楽しみたい

ヒストリックカーなのに2000年モデルというのは、普通のクルマであれば可笑しなことかもしれないが、それがモーガンならば話は別。先日、惜しまれつつ生産中が終了した「4/4」は、今を去ること84年前となる1936年にデビューした。そしてこのページの主役である「プラス8」も、半世紀前に生まれたまさしく「生けるヒストリックカー」というべき存在なのだ。

1968年9月に登場したモーガン・プラス8は、ベースとなる4/4と同じ、つまり基本設計は1930年代まで遡る古典的なシャシー/ボディにパワフルなV8エンジンを積んだ、ドラッグスターのようなモデル。50年代以降は、4/4をひと回り拡大したボディに、トライアンフTRロードスター用の直4 OHV 2リッターを積んだ「プラス4」というモデルが存在したが、直6を搭載するTR5の登場により、従来の4気筒エンジンの供給が途絶えてしまった結果として生み落とされたモンスターである。

モーガンが新たに選んだパワーユニットは、ローバーP5のV8用エンジン。すなわち名作「ローバーV8」である。元来60年代初頭に北米GMが開発した軽合金製V8 OHVで、排気量は3528cc。最高出力160psを発生した。一方、ラダーフレームに前:スライディングピラー/後:半楕円リーフというサスペンションなどシャシーデザインは、基本的には4/4と同じモーガン一流の旧き良きテクノロジーの産物だが、わずかに広げられたホイールベース/トレッドに合わせてボディも拡大されていた。

実に36年も生産されたローバーV8搭載のプラス8は、時代を経て少しずつながらアップデートを受けてゆく。まずは当初、英国MOSS社製だった4速M/Tが、73年以降はローバー製4速に変更。さらに77年には同じくローバー製の5速M/Tにグレードアップされた。エンジンも、83年以降は輸出向けを中心に独ボッシュ製燃料噴射を装着。排気量は不変ながら、パワーは190psに増強されている。

さらに90年には、同時代のレンジローバーと同じ3.9リッターに拡大。そして2000年には、ついに4.6リッターもオプション選択が可能となったのだが、今世紀を迎えてついにローバーV8の供給が絶たれたため、よりハイパワーなフォード製3.7リッターV6 DOHCを搭載する「ロードスター」にあとを譲るかたちで、04年に生産を終えることになった。

軽量なシャシーにパワフルなエンジンが搭載されているので、そのクラシカルなスタイルとは裏腹なスポーツカーらしい敏捷性を披露する。

今回の取材にご提供いただいたモーガン・プラス8は、冒頭に記したとおり2000年型。筆者が運転するのは今回で二度目なのだが、プラス8は乗るたびに当惑と感動を与えてくれる。英国では「ウィング」と呼ばれる前後フェンダーに、上部をカットアウトされたドアなど「ポスト・ヴィンテージ」時代と呼ばれる30年代のスポーツカーそのもののスタイル。あるいは胸の直前に切り立った大径ステアリングを両手で抱え込むヴィンテージ式のポジションとは裏腹に、キーを捻るだけで、一瞬にして火の入るエンジンは、たとえ長い渋滞でも愚図ることなく、水温も常に安定。クラッチも軽く、ヒストリックカーゆえの辛苦とは無縁なことには良い意味での違和感を覚える。これが「当惑」である。

一方の「感動」は、その豪快な走りっぷり。心の準備のある二度目のドライブということで、かなり冷静なつもりでアクセルを踏み込んだのだが、公表データで950kgの車重に190psのパワーという数値から予想される以上にジャジャ馬なことを再認識させられる。発進時はアイドリング+αでクラッチを繋がないとホイールスピンを起こす。また、荒れた路面ではトルクを持て余してリアが暴れるなど、古風で典雅な見た目からは予想もつかない、手強い乗り味を見せる。

先日、2リッター直列4気筒エンジンを搭載する2014年型プラス4に乗る機会があったばかりなのだが、バランスに優れたプラス4に対して、プラス8は完全な怪物。ただ軽量で知られるローバーV8ゆえにハンドリングは軽快で、基本設計が82年前まで遡るとは思えない、素晴らしいスポーツカーでもあるのだ。

モーガンは日本国内の正規ディーラーネットワークが刷新され、今後さらなる躍進が期待される。「古くて新しい」唯一無二の世界観は、クルマ好きなら生涯に一度は体験しておくべきものの一つと思うのである。

室内の雰囲気は意外とモダン。ステアリングが大きくて近く、抱え込むようなポジションとなる。室内は狭いが、オープンなので窮屈な感じはしない。

モーガンのロゴがプリントされているが、VDO製のシンプルなメーターが採用される。センターには燃料・水温・電圧・油圧計が並ぶ。

シンプルなデザインのスポーツシート。カップルディスタンスも狭くタイト。後方にはラゲッジスペースを確保。

スポーティでモダンなデザインのホイールは16インチ。センターロックが採用されている。

フロントミドに搭載されるローバー製の3.9リッターV8 OHVエンジン。トランスミッションは5速。

モーガンといえばキャビンの骨格に木材が使われていることで有名だ。外側からは見えにくいがドアに垣間見ることが出来る。

950kgの車体に190psのエンジンを搭載するので、走りは想像以上にジャジャ馬が強い。

SPECIFICATION
MORGAN PLUS8
全長×全幅×全高:3960×1600×1150mm
ホイールベース:2489mm
トレッド(F&R):1219mm
車両重量:950 kg

エンジン形式:V型8気筒OHV
総排気量:3947cc
最高出力:190ps/5000r.p.m.
最大トルク:31.8kg-m/2600r.p.m.
サスペンション(F/R):スライディングピラー/リジッド・アクスル

PROFILE/武田公実

年式国籍問わず、あらゆるクルマに造詣が深い。特にイギリス車に関しては、某メーカーに在籍したこともあってその知識は豊富だ。