TMB IMPRESSION

<インプレッション>
実際乗ったらどうなんですか?
TMBが選りすぐった“名車”を運転してみて感じたこと

CITOROËN 2CV & FIAT 500

高騰し続けているクラシックカー市場のなかで、シトロエン2CVと2代目フィアット500は、今も身近な存在でいる。フレンドリーなデザイン、ワクワクする走り、この2台は我々にとって永遠の定番なのだ。

TEXT / 森口将之 PHOTO / 内藤敬仁
SPECIAL THANKS / 河田純(2CV)&舟木研(500)

いつの時代も身近に寄り添う相棒

ヒストリックカーはベーシックカーに限る。最近いろんな名車の相場が急上昇して、手が届かないクルマが増えつつある今だからこそ、そういう気持ちが高まってきた。新車価格が安かったうえに、メジャーな車種なら生産台数も数百万台規模でタマ数が豊富だから、そこそこのコンディションであれば今もお手頃価格で手に入る。

速くはない。でもそこがまたいい。街中を流すだけでも運転している実感が濃厚に得られるから。しかも構造がシンプルなので、壊れるところが少ない。不特定多数の人々が運転することを想定して、タフに作られていることもありがたい。

仮にトラブルに遭ったとしてもパーツは豊富だし、カスタム用のアイテムも豊富に揃っている。クルマの楽しさを見つめ直すのにも最高のパートナーではないだろうか。数あるヒストリックベーシックの中で、今回取り上げるのはシトロエン2CVと2代目フィアット500だ。編集部が選んだものだけれど、自分が考えてもこのコンビになっただろう。

それ2台を同時に使っていたという、変わった経験の持ち主であることが大きい。姉妹誌カー・マガジンの編集部員だったとき、2CVのオーナーでありつつ長期レポート車として500を担当していたのだ。

その経験から言えば、1リッター以下の空冷2気筒を積みながら、方向性はフェラーリとロールス・ロイスぐらい違っていて、しっかり使い分けができた。チーフエンジニアは2CVがクラシックDSも手掛けたアンドレ・ルフェーブル、500はあのダンテ・ジアコーザだ。歴史に残る技術者が関わったことが、並外れた個性派に結実したのかもしれない。

外観は、誰が見ても可愛らしいと思う500に対して、2CVは自動車の枠にとらわれず安価で便利なモビリティを構築した感じ。ひと足先に登場した600の廉価版でもあった500、農村部で手押し車の代わりに考えられた2CVというポジションの違いが伝わってくる。

インテリアはとにかく、必要最小限のモノしか付いていない。500は運転席に座ったままキャビンの四隅に手が届く。でも後席に大人が座れるのは、安全対策が今ほど厳しくなかったとはいえ、素晴らしいパッケージングだ。右ハンドルの500に乗るのは初めてだけれど、問題なく扱えた。

2CVに乗り換えると、トランポリンのような構造を持つシートのふっかりした座り心地に頰が緩む。それでいてベンチレーションは超原始的で、送風はウインドスクリーンの下のパネルをダイヤルで開けてまかない、ドアの厚みがほとんどないので横の窓は下半分を跳ね上げて固定する。自動車の枠を超えた発想に感心する。

興味深いのはどちらもキャンバストップであること。2CVは軽量化、500はエンジンのこもり音を逃がすためと言われるけれど、小さな空間に広がりをもたらす点は共通している。ベーシックな乗り物なのに豊かな気持ちになれるのだ。

グレードは2CV6スペシャルと500F。2台のヒストリーの中では後半に生まれたモデルだ。どの世代を選ぶかは趣味的な話になるけれど、もともと実用車として生まれたわけで、僕なら新しめの年式の個体を使い倒すカーライフを送りたい。

2CVはキーをひねるだけでエンジンが掛かるのに対し、500はその後シートの間のレバーを引いてスターターを回すという動作が加わる。アイドリングは対照的。2CVのフラットツインは静かで鼓動をあまり出さないのに対し、500は始動した瞬間からバタバタっとバーチカルツインの歯切れ良い響きを伝えてくる。

試乗した500は650㏄に排気量を拡大していたので、602㏄の2CVに劣らぬ力感だった。今の道路の流れに問題なく乗れる。つまり使える。ストロークが短くカチカチと決まるシフトフィールはスポーツカーのよう。ただギア比が低めなので、加速の勢いがあるぶん変速が忙しい。

一方インパネから生えた2CVのシフトレバーは独特のタッチだけれど、ポジションに入ったときの感触が手に伝わってくるという好ましさもある。ギア比は分散していて守備範囲が明確。その代わり高速道路ではしっかり100㎞/h巡航できる。

最初のほうで、この2台は使い分けが効くと書いたのは、こうしたパワートレーンの違いもさることながら、乗り心地とハンドリングの差によるところが大きい。超ショートホイールベースのリアエンジン車である500は、交差点でも痛快になれる。活発な排気音ともども、日々の移動を喜びに変えてくれる。4輪のモーターサイクルという言葉を、このクルマのために使ってもいいのでは? とも感じた。

乗り心地も多くの人が想像するほど悪くはない。ボディの剛性感がしっかりしているためもあり、路面の感触は伝えつつショックは絶妙にいなすという、よくできたイタリア車の好ましさを伝えてきてくれる。

でも乗り心地だけ取ればやっぱり2CVに分がある。シトロエンの常で段差や継ぎ目は伝えがちだけれど、それ以外はふんわりゆったり。走っているというより、滑空しているんじゃないかと思うほど。

人間が乗るだけで沈み込むほどソフトな足なので、身のこなしもおっとり。でもカントリーロードの中速コーナーでは、ロールは大きいけれどエンジンもサスペンションも低重心にこだわった設計が、意外に安定したコーナーさばきを生み出す。そして高速道路では、軽量ボディとは思えぬ直進安定性を届けてくれる。

2CVでは日帰りで浜名湖を往復し、500では大阪に行った。若い頃さんざん走り回ったのに、もう一度付き合ってみたいと思う自分がいる。シンプルなのに究極で、古いのに新鮮で、どんな人でも楽しさが見いだせそうな懐の深さがあるからだろう。ヒストリックカーを語るなら、やっぱりこの2台は欠かせない。

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