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“スプリント”。軽さにパワーを加えた伝統芸LOTUS ELISE SPRINT 220

年季の入ったロータス・ファナティックであれば、“スプリント”というサブネームへ、特別な思いを抱いているに違いない。それはストイックなまでに軽さを追求した、ベーシックモデルに対するロータス自身の小さな反逆であり、ミニマムなスーパーカーの矜持でもある。また初代エランにおけるスプリントの存在は、結果的にエランの最終モデルを意味していた。であるならばエリーゼ・スプリント220が意味するところとは?

TEXT / 吉田拓生 PHOTO / 藤井元輔
SPECIAL THANKS / エルシーアイ(http://www.lotus-cars.jp/

“スプリント”それは軽さに
パワーを加えた伝統芸

かつてクルマの重量増はパワーアップで相殺する、という考え方が一般的だった。つまりパワーアップを標榜しておきながら、パワーウェイトレシオで考証した場合にはプラマイゼロというトリックである。しかし次第にトリックを脆弱にしていったのは、いくら筋力をアップしても体脂肪率の高い体で俊敏に動くことは不可能であるという事実だった。

“スプリント”という単語は我が国では短距離競争のような意味で通っているが、イギリスの自動車世界では違う。それはレースやヒルクライムと並ぶ伝統と格式のあるモータースポーツのカテゴリーであり、サーキット1周のタイムをストイックに競うことで知られている。

いつの時代もロータスの精神はこれ以上何も差し引けないほどの軽さに宿っているが、しかしモータースポーツで勝ち名乗りを上げるとしたら、そこにモアパワーが備わっていれば申し分ないということになるだろう。

サイドシルにシルバーのストライプが入れられた『ロータス・エリーゼ・スプリント220』。このクルマは『エリーゼ・スポーツ220』の後継モデルであり、その名称が示すように最高出力も220psでキャリーオーバーされている。それでも新たなスプリント220が確実に先代のスピードを凌ぐと言い切れる背景には、明確な軽量化が関係しているのだ。

まずリアトランクルームの左奥に仕込まれているバッテリーをリチウムイオンタイプに変更することでマイナス9kg、より薄く硬くなったカーボンファイバー製のバケットシート2脚でマイナス6kg、さらにフロントカウル中央のアクセスパネルとドライバー背後のメインロールフープカバー、エンジンカバーをカーボンファイバーに置き換え、リアウインドウをポリカーボネートに置き換えることでマイナス6kg、さらに鍛造アロイホイールでマイナス5kgという軽量化を達成しているのである。スプリント化による重量減はこれらを合計して、実にマイナス26kgにもなるのだ。しかもエリーゼが2017年モデルに進化した際のフロントカウルやコンポーネントの見直した際の数値を足せば、実にマイナス41kgという数値がはじき出される。元々が“乾いたタオル”に例えられるロータス・エリーゼからこれだけの重量を搾り取ることがどれだけの苦労を伴うのか、今一度考えてみた方がいい。それは車重から換算すると10.2psものパワーアップをもたらしているのである。

同郷のマクラーレンやイタリアのスーパーカーメーカーのように、ロータスはやすやすと高価な部材に手を出すメーカーではなかった。ロータス自体が、原価率のアップをそのまま車両価格に反映させ難いポジショニングにあるという背景もあるし、創業者たるコーリン・チャップマンの理念に照らし合わせるならば、創意工夫によって重量を削り取るスタンスこそ是、と言うことになるだろう。

それでもなおロータスは、カーボンパーツや最近一気に普及してきたリチウムイオンバッテリーに手を出したのである。もはやそこにしか軽量化のシロが残されていないことをメーカー自身が認めた形であり、エリーゼのライフ全体を俯瞰した場合には、いよいよ現行のアルミプラットフォームを利用してきたエリーゼのファイナルが迫っているという意味合いも含まれているのかもしれない。なにしろスプリントというサブネームは、初代エランにおける最終モデルを意味していたのだから。

禁断の果実に手を伸ばしてしまったエリーゼ・スプリント220をドライブして感じたのはしかし、正直なところマイナス41kgの軽さよりも凄まじい瞬発力だった。220psを凌ぐエリーゼ系のモデルは過去にも存在したが、彼らと比べてもスプリント220は加速の際に腰高な感じがせず、しかもスピードの伸びが良かった。

硬質になったカーボンシートや軽量ホイールも感度の向上に効いており、リアタイヤのたわみ具合を尻から腰に掛けてのセンサーで生々しく感じとることもできた。スプリント220はエリーゼでありながら、スピードの上でも感覚的にも、確実にエリーゼという枠を越えたモデルとして成立しているのである。いつの時代もエリーゼは最軽量のベーシックモデルを中核とするイメージがあるが、最終のエボリューションモデルたるスプリント220はそんな素のエリーゼの聖域を侵すほどのピュアな感性の持ち主だった。エラン・スプリントが栄光の歴史の最終章にその名を刻んだように、エリーゼ・スプリント220もまた突出したモデルとして記憶され続けるに違いない。

全方位的に軽量化が図られたエリーゼ・スプリント220。各部に多用されたカーボンが目を引く。
リチウムイオンバッテリーは横に寝かして固定され、重心の低下にも寄与している。
シフトまわりのオープンゲートギアセレクトメカニズムは、軽量化とロータスらしい機能美が表現された傑作といえよう。
カーボン製のシートはクッション材が要所に配されているが、それでも骨格の硬さを如実に感じさせる。
いかにも軽量に見える鍛造ホイールと組み合わせされるのは、アドバンのエリーゼ専用タイヤだ。

SPECIFICATONS

LOTUS ELISE SPRINT 220

全長×全幅×前高:3800×1720×1130mm

ホイールベース:2300mm

トレッド(F/R):1455/1505mm

車両重量:878kg

エンジン形式:水冷直列4気筒DOHCスーパーチャージャー(2ZR-FE)

総排気量:1798cc

ボア×ストローク:80.5×88.3mm

圧縮比:10:1

最高出力:220ps/6800r.p.m.

最大トルク:25.4kgm/4600r.p.m.

最高速度:233km/h

0-100km/h加速:4.5秒

トランスミッション:6速M/T

サスペンション(F&R):ダブルウィッシュボーン(F:APレーシング製2ポッドアルミ合金製キャリパー/R:ブレンボ製シングルピストンキャリパー)

ブレーキ(F&R):ベンチレーテッドディスク

タイヤ(F/R):175/55ZR16/225/45ZR17(ヨコハマ・アドバン・ネオバAD07)

価格:745万2000円