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400万円オープンスポーツ対決今乗りたい国際結婚スポーツカー

海外のスポーツカーブランドと国産メーカーのコンポーネントが組み合わさったことで新たな味わいを手に入れたスポーツカー2台、奇しくも新車価格はほぼ同じ400万円弱! それぞれのマリアージュを堪能してみよう。

TEXT / 橋本洋平 PHOTO / 内藤敬仁
SPECIAL THANKS / Witham Cars(セブン160)https://www.witham-cars.com/ / FCAジャパン(124スパイダー)https://www.abarth.jp/

400万円オープンスポーツ対決

数多く売ることが困難であることは、スポーツカーの宿命の一つと言っていい。実用車と違って足として使いにくく、多人数乗ることも荷物を多く積むこともできないのだから、それは当然だ。少量生産で高額でも許されるスーパースポーツなら話は変わってくるが、身近なスポーツカーならば企画としてどう成立させるかは悩ましい課題のようだ。いかにコストを抑えるか? スポーツカーが特に売れない現代にあって、これはかなりのハードルとして立ちはだかる。

巷で話題のトヨタ・スープラの開発陣もこのことは認めていた。直6エンジンを自前で復活させるのはムリがある。だからすでに基本コンポーネントを持つBMWにパートナーシップを求め、ようやくスープラの企画がスタートしたとのこと。トヨタはその前にも86を造る際、スバルに同様のアプローチをし、だからこそ水平対向エンジンと低重心を手にできたという実績もある。自分の会社だけで完結できないなら、外に助けを求めればいい、こんな流れがいまスポーツカーのトレンドと言えるかもしれない。

ここに登場の2台もまさに同様の流れだ。アバルト124スパイダーは、マツダ・ロードスターと兄弟であることは周知の事実。エンジンをイタリアから取り寄せ、広島で生産されている。対するケータハム・セブン160は逆で、スズキ製エンジンがイギリスに飛び、現地で生産されているのだ。

世界のメーカーが手を結んだからこそ、本誌で呑気に400万円のスポーツカー企画ができるというわけだ。いずれかのメーカーが全て自前で制作していたら……。どちらか1台はここに登場することがなかったかも。「自動車メーカーの国際結婚、バンザイ!」である。ただし、言い方は微妙だが、混血ハーフになったことでその味が薄まれば何の意味もない。エンブレム違い、見せかけだけの子供だましじゃコアなスポーツカーファンの心を射止めることはできやしない。

けれどもアバルト124スパイダーに乗った瞬間、そんな心配はいとも簡単に吹き飛んだ。これがマツダ・ロードスターベース? そんなことを微塵も感じさせないくらいアバルトらしさが滲み出ていたからだ。走り出せば低速からコツコツとした突き上げを生み出し、ショックをハードにした荒々しい走りがそこにある。正直、会話が通じないハーシュネス。日本人の常識からすればアウトかもしれない。ロードスターのジョギングシューズのような包まれ感とは打って変わって、舗装路でスパイクシューズでも履いているかのようなカチッとハードなイメージなのだ。手や腰、そしてお尻にもビリビリと伝わる振動は、マツダ基準じゃきっとOKは出なかっただろう刺激だ。サソリのエンブレムに相応しいテイストと言っていい。

加速を始めればこれまた豪快なビートを奏でながら、力強く速度を重ねていく。今回の車両はレコードモンツァのマフラーを装着しているからなおさらだ。これで日本の車検は通るの? なんて心配になるほどの音を生み出しつつ、低回転からシッカリとしたトルクで弾かれるように動き出し、みるみるうちに高速域まで連れて行かれるのだ。1.4Lマルチエアターボの実力はかなりのもの。これまたロードスターとは全く違う味の濃さがある。ロードスターのドライバーと密になるリニアリティも魅力だが、半ば強引と思えるくらいに動き出すコチラも悪くない。広島で生産していても、やっぱイタリアしているのだ。

ハードに仕立てられたフットワークと、少々乱暴とも思えるパワーユニット、そしてロードスター譲りのFRレイアウトが結婚したらどうなるのか? 答えはかなり痛快だ。車重1130kgと、ロードスターと比べればちょっぴりおデブちゃん。理由はこのパワーユニットに合わせたミッションやデフが必要になり重たくなったのだが、足を強引に引き締めたおかげもあって、それを打ち消すキビキビした応答がありつつ、豪快なトルクでリアを蹴り出す感覚にも優れているからひと安心。以前サーキットで試乗した際には、振り回すことも容易だった。アバルトがFRレイアウトを求めたのは、きっとこんなことがしたかったからではないだろうか? いくらFFでヤンチャなクルマを造ってもこうはいかない。マツダとフィアットがくっついて、めでたしめでたしである。

対するセブン160は、ソフトで穏やかで、ちょっと温厚な感じにも受け取れる一台だ。ピッチングもロールもかなり緩いし、見た目とは違って乗り心地だって悪くはない。しかし、だからといって走りがバツかといえばそんなこともない。旧型ジムニーのエンジンと駆動系をそっくり受け継いだおかげで、車重490kgに収められたことが効いているのだろう。無駄な動きを一切出さず、ドライバーの一挙手一投足をタイムラグなく受け止めて走りに展開して行くのだ。ハードなサスペンションも、ハイグリップタイヤも必要としない。リアだってこの160は上級モデルとは違う簡素なスズキ・エブリイ譲りのリジッドアクスルである。けれども、軽ささえあれば素のままで本格的な走りが展開可能なことを、このクルマは改めて教えてくれるようだ。スズキ製ユニットとセブンのシャシーのコンビネーションは、現代のクルマ達が衝突安全など様々な問題ゆえに到達することを許されない道を、唯一切り開いている。

加速をすれば3気筒の軽ならではのギュイーンと唸る独特の世界観が付きまとうが、加速感にはスズキ車とは違う軽快さが宿っている。ハイオク仕様になり、インタークーラーなど独自のチューンを施すことで得た80PSユニットは、役不足に感じることはない。絶対的なスピードはもちろん速くはないが、その走行フィールは明らかにスポーツカーしているし、セブンならではの遅れのない爽快さがある。

安価でありながら独自の世界観を生み出した2台を見ていると、自動車メーカーの国際結婚も悪くないと思えてくる。むしろどんどん推進して、身近なスポーツカーがより多く誕生することを期待せずにはいられない。

パワーでもスピードでもなく圧倒的な軽さが開く走りの世界

2014年に発売されたセブン160。モデル名の「160」は、最高出力80PS/車両重量約0.5トンから、1トンあたりの最高出力の数字。

ホイールベースや全長は他のセブンと共通ながら、全幅は最小の1470mm。日本の軽自動車のサイズにも対応しているのだ。

スズキの先代ジムニー用660cc直3ターボを、セブンのボディに搭載。企画したのはケータハムカーズ・ジャパンだ。

ヘッドライトはじめクラシカルな佇まいを今なお貫くのがセブンシリーズ。

スチールホイールにタイヤは155/65R14を履く。

取材車はウィザムカーズ独自開発のセブン160用クラシックマフラーを装着。純正より小ぶりですっきりしたスタイル。

走り以外の要素をそぎ落としたコクピットは極めてシンプル。足元のヒーターが効くのが有り難い。

5速M/Tのシフトはショートストロークで良好な操作性。

ペダルの間隔が狭いので大きな靴は厳禁だが、ペダル操作自体は至ってやりやすい。

シートはクッションの付いた通常タイプ。タイトなスペースなので体のフィット感はなかなか高い。

SPECIFICATION
CATERHAM SEVEN 160
全長×全幅×全高:3100×1470×1090mm
ホイールベース:2225mm
トレッド(F/R):1220/1301mm
車両重量:490kg
エンジン:直列3気筒DOHCターボ
総排気量:658cc

最高出力:80PS/7000r.p.m.
最大トルク:10.9kg-m/3400r.p.m.
サスペンション(F//R):ダブルウイッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤ(F&R):155/65R14
価格:399.6万円(ディーラー在庫限りで販売終了)

熟成極まったFRシャシーに暴れん坊のパワーユニット!

マツダ・ロードスターをベースに、独自の外装やイタリア製エンジンを広島工場で組み込む。海外には「フィアット124スパイダー」もあり。

リア周りのデザインがスクエアな形状のためか、NDロードスターよりも大きく見える。

170PS/25.5kg-mというパワー/トルクは、1130kgの車重に対して必要十分以上。

ヘッドライトはリング状の意匠が旧124スパイダーへのオマージュ。標準はハロゲンで、LEDはオプション。

足周りにはブレンボ製の対向4ポットキャリパーを標準装備。

オプションのレコードモンツァ・エキゾーストは2系統の排気経路を備えている。

コクピットはNDと同じだが、メーターなど各所に赤いアクセントを入れてアバルトエンブレムも加わり、精悍な雰囲気に。

シフトノブはアバルト専用デザインで、ゲートにスポーツモードの切り替えスイッチが付く。

シートはアルカンターラとレザーの組み合わせでホールド性が高い。

ラゲッジルームには2名1泊分の手荷物くらいなら収まる空間が確保される。

SPECIFICATION
ABARTH 124 SPIDER(6MT)
全長×全幅×全高:4060×1740×1240mm
ホイールベース:2310mm
トレッド (F/R):1495/1505mm
車両重量:1130kg
エンジン:直列4気筒マルチエアターボ

総排気量:1368cc
最高出力:170PS/5500r.p.m.
最大トルク:25.5kg-m/2500r.p.m.
サスペンション(F/R):ダブルウイッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ (F/R):Vディスク/ディスク
タイヤ (F&R):205/45R17
価格:406万円

PROFILE/橋本洋平

ジェイズ・ティーポ出身のモータージャーナリスト。ティーポ出身のモータージャーナリスト・まるも亜希子氏と結婚し、走りバカから親バカへ。結婚の醍醐味を知る男。