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この時代にしかない!
デザイン・コンシャスなSUV選び!
FIAT MULTIPLA & RENAULT SCENIC RX4 & RENAULT AVANTIME

なぜか2000年あたりだけに、同時多発的に出現したものがある。それは、ジャンルで言うならスペースユーティリティという意味のSUVで、そしてなぜだか妙にデザインコンシャスなボディフォルムを身に纏って登場したこれら3台である。そのうちの一台のオーナーである森口氏に、以下の3台の魅力を語ってもらおう!

TEXT / 森口将之 PHOTO / 山本佳吾
SPECIAL THANKS / TRUCCO(http://www.a-trucco.com/)/PICCORO CARS(http://spice123.jp/)  

この時代にしかない!
デザイン・コンシャスなSUV選び!

それはまだ「クロスオーバー」なんて言葉が巷に出回る前のオハナシ……

ヨーロッパでは長らく、ミニバンやSUVはメジャーにならなかった。日本やアメリカより平均速度が高いので、高速での安定性に欠ける背の高いクルマは好まれなかったようだ。

それでも1980年代にはルノーが欧州初のミニバンとしてエスパスを出し、同じ時代に始まったパリダカの影響でSUVを乗り回す人も目立ってきた。そして20世紀末になり、ひとまわり小柄な車種が出はじめると、一気にメジャーな存在になっていく。

SUVで先陣を切ったのはトヨタRAV4やホンダCR-Vといった日本勢だったが、モノスペースでは1996年にルノーがセニックを送り出し、翌年カングーを発表。これらがヒットしたことで、他社もコンパクトなモノスペースやSUVを開発するようになったと見ている。

新たなカテゴリーが生まれるときは、まだ理想の形が決まりきっていないので、個性的なモノが出やすい。この時代のヨーロッパがまさにそうだったと今回の3台、1998年発表のフィアット・ムルティプラ、2000年デビューのルノー・セニックRX4、次の年に発売した同じルノーのアヴァンタイムを見てあらためて思う。

ムルティプラはセニックのフォロワーの1台とも言えるけれど、リアエンジンの600をベースとした初代の復刻版でもある。6人乗りというのも初代と共通で、昔の2×3から3×2に変えることで実現している。

スタイリングが他の何にも似ていないのも旧型譲りかもしれない。フロントフードとウインドスクリーンの間にポッコリ段をつけ、そこにもヘッドランプを埋め込んだ上下2段の顔は、どうしてこういう形が思い浮かんだのか不思議でしょうがない。

しかしこの段は、金魚鉢を思わせる大きなサイドやリアのウインドーのラインと合わせているし、ドアハンドルは後ろがパネルより出ていて他車が傷つくのを避けているし、縦長のドアミラーもまた上下2段で視野が広いし、可愛らしいハート型リアコンビランプはウインカーが矢印型だし、理にかなった造形でもあるのだ。

今回の3台は右ハンドルの正規輸入車というだけでなく、窓が大きいのも共通だった。衝突安全基準が厳しくなった最新のクルマでは望めない空間かもしれない。なかでもムルティプラのそれは別格。加えて細胞分裂を起こしたようなセンターのメーターやスイッチに圧倒される。シートはタイトな着座感がイタリアン。ただし後席は身長170㎝の僕が足を組めるほど広い。パッケージングは真面目だ。

ムルティプラは走りもいい。1.6リッター 4気筒エンジンはディーゼルのような低回転の粘りが扱いやすく、なおかつイタリア車らしく上まで元気に回る。インパネシフトの感触も心地良い。厚いフロアとワイドトレッドのおかげで、乗り心地は歴代フィアットで最高レベルに思えるほど。でもホイールベースは短いからハンドリングは軽快。見た目以上に楽しめるクルマなのだ。

そこから乗り換えたセニックRX4は、初代セニックにシュタイア・ダイムラー・プフの4WDメカを組み込んだ、欧州クロスオーバーSUVの先駆車。でも単に車高を上げて終わりにしなかったところが、趣味的な目で見ても惹かれる存在にしている。

マットカラーで色分けしたバンパーはスキッドガードも装着して完全オフ仕様。リアにはスペアタイヤを背負い、ゲートの開け方まで2分割に変えてある。月面探険車みたいと呼ばれることもあるけれど、たしかに地上の乗り物らしからぬ異様な出で立ちだ。

それに比べるとキャビンはフツー。おかげでルノーそのもののシートの座り心地、爽やかなコーディネート、こちらも足が組める後席の広さ、広大な荷室など、実用車としての良心的な作りを教えられる。

2.0リッター 4気筒と5速M/Tによる加速は、出足はおっとりだけれど、その後伸びるというフレンチタッチ。驚いたのはボディの剛性感が健在だったことで、ルノーらしいしっとり感が満喫できた。オフロードを想定して強化した車体が効果を発揮しているようだ。

ハンドリングは背の高さを感じるけれど、舗装路でもリアにトルクを回すので、前輪駆動とは違うフィーリングが味わえる。新車時にモロッコで試乗したときは、かなりの不整路を平然と走破したことも付け加えておこう。

2台の独創性は20年近くたった今も色あせていなかった。これは困った。残るアヴァンタイムは自分の愛車。年中接していることもあって、あまり個性的に思えなかったのだ。

でもしばらくすると、まず2台とは車格だけでなく成り立ちも違うことに気づいた。ムルティプラはミニバン、RX4はSUVというカテゴリーに合わせたのに対し、アヴァンタイムはミニバンクーペというカテゴリーを自分から作りに行ったからだ。

ディテールに遊びがないことも違う。リア周りに戦前のクーペのようなノッチをつけたことを除けばシンプルそのもの。インテリアもそうで、インパネのセンターに何もない。エアコンを左右に分け、オーディオはリモコンで操作する。こういう仕立て、最新のクルマにはなかなか求められない。

車重が1.8tもあるしA/Tは5速なので、3.0リッター V6をもってしても動きはのっそりしている。フロアはしっかりしているが上屋はユルいし、街や山で乗るだけなら他の2台のほうがずっと楽しめるだろう。

でもそんな感想を抱きつつ取材を終え高速道路に乗ると、やっぱり特別な世界の持ち主だと知る。低くて長いインパネの奥に、巨大なウインドスクリーンを据えた眺めはロマンスカーのよう。大きなガラスルーフはトンネルの照明も景色に変えてくれ、重さは落ち着きに変わり、直進性は盤石。分厚いシートに身を委ねながら、どこまでも行けそうという気持ちになれる。

その後SUVやミニバンの選択肢は一挙に増えたけれど、多くが同じ方向を向いている。3台は商業的には成功しなかったけれど、新たなジャンルに挑むメーカーの気持ちが濃厚に詰まっていた。気に入ったら離れられない存在であることは、僕が保証する。

FIAT MULTIPLA

1998年に登場した、3人掛けの2列の6人乗りとしながら全長を約4mに抑えた。独特の外観デザインから「史上最も醜いクルマ」と評されたが、逆にそれが人気の要因となり、日本では生産終了後も人気が高まり続けた。

短い全長に大きな窓、そしてこのサイドビュー。

鏡餅のようなフロント周り。Aピラーの根元にあるのはハイビームランプ。なぜこのデザインが採用されたのか、謎だ。

ストンっと切り落としたようなリアフォルム。エンドウ豆のようなリアランプが印象的だ。

奥行きが短いこともあり、フル乗車だと荷物はそれほど載らない。

ルーフにはサンシェード付きのサンルーフが前後に付く。フロントは電動開閉式。

103psのパワーしかない1.6リッターNAエンジンに組み合わされるのは5速M/Tのみ。それでもエンジンはイタ車らしく活発に回り、人と荷物を載せていなければそこそこ速い。しかし、この潔ぎ良すぎる設定で販売は伸び悩んだ。

センターコンソールにはシフトノブをはじめ、各種計器類&警告灯、空調スイッチ及び吹出口、そしてオーディオと様々なものが集約されている。

ホイールは鉄製で、それにホイールカバーが付く。ELXプラスと言う上級グレードにはアルミホイールが標準だった。

メーターもセンター部へ集約されているため、コクピット周りは非常にすっきりしている。

フロントは独立式の3座シート。センターシートは不使用時に倒せばテーブルとなる。

リアも独立3座シート。センターと両脇を少しスライドしてズラして使用すれば、狭さを感じさせない。

SPECIFICATIONS
FIAT MULTIPLA 1.6 ELX PLUS
全長×全幅×全高:3994×1871×1700mm
ホイールベース:2665mm
トレッド(F/R):1511/1520mm
車両重量:1380kg
エンジン:水冷直列4気筒DOHC
総排気量:1596cc

最高出力:103ps/5750r.p.m.
最大トルク:14.8kg-m/4000r.p.m.
サスペンション(F/R):ストラット/ヘリカルスプリング
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤ(F&R):185/55R15
新車当時価格:267万円

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