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イタリアらしさ、フィアットらしさ、とは?FIAT 500X

フィアットと言えばフィアット500というほど、500の人気は高いがイタリアでは500の派生車種も販売されており、この500Xが日本に導入されている。そして改めて500Xというクルマと向き合ってみれば、実にイタリアらしい、そしてフィアットらしい1台であることがわかるのである。

TEXT / 森口将之 PHOTO / 神村 聖

イタリアらしさ、フィアットらしさ、とは?

2019年に創立120周年を迎えたフィアット。正規で買える車種を挙げるなら、500、500C、500X、パンダの4車種となる。

イタリアを代表する自動車ブランドなのにこれだけ? と思う人がいるかもしれない。しかしここにはフィアットなりの考えがある。地域ごとに最適な車種を用意するスタイルを取っているからだ。現在どんな状況かは最後のページで紹介しているが、イタリア以外での生産も多い。正規輸入の4車種は現在の日本市場を検討した結果と言える。

小型の実用車ばかりなのは、グループ内にアバルト、アルファロメオ、ランチア、マセラティを擁しているからだろう。しかもグループそのものが米国クライスラーとFCAを結成しており、ここで紹介する500Xはジープ・レネゲードと基本構造を共有する。1960年代から合従連衡を重ねてきた企業らしい合理的な思想が伝わってくる。

フィアット120年の歴史を振り返ると、世界中に目を向け、困っている人や会社がいれば手を差し伸べる(もちろん企業としての戦略もあるが)という行動が多い。一方でブランドとしてのフィアットは自らの立ち位置をわきまえ、”小さい、安い、楽しい”に徹している。それは今回乗った500Xも同じ。世界的に個性の希薄化が進む中、ここまでイタリアらしさを濃厚に持ち続けていられるのは、稀有な歴史によるところも大きいだろう。

日本仕様の500Xはベースモデルと上級グレードの500Xクロスの2グレード構成で、取材車両は後者だった。そのボディは簡単に言えば大きな500であるが、60年前で言えば500に対する600のような位置づけとも取れる。昔とは登場の順番が逆ではあるが、ジャルディニエラやムルティプラを含め、同じようなデザインで小型車のラインナップを揃えていたのは今とさほど変わらない。

可愛らしさを前面に押し出したその姿は、自分にとっては乗りこなすのに勇気がいると思うが、家人に写真を見せたら予想以上に食いついてきた。小型車においても大きなグリルや吊り目のヘッドランプで挑発する車種が増えてきた中で、確かに500Xの愛したくなる雰囲気は貴重かもしれない。

ベージュのボディカラーもまたイタリアらしい。石造りの街並みを思わせる。インパネに同じベージュをあしらったキャビンは、ディスプレイの角を丸めたり、ヘッドレストをすべて丸にしたり、こちらも可愛らしさのアピールに余念がないけれど、シートが黒のレザーなので大人っぽくもある。

シートは前後とも高めかつ硬め。リアは丸いボディを反映してか、座面も背もたれも角度が浅く、ダイニングチェアのような姿勢になるものの、身長170cmの自分にとっては頭上も足元もかなり余裕がある。時々リアに人を乗せるような用途には十分に思えた。

走りではまずエンジンに注目したい。2019年春のマイナーチェンジで、1.4リッターから1.3リッターガソリンターボにダウンサイジングされているからだ。にもかかわらず最高出力は140psから151ps、最大トルクは23.5㎏-mから27.5㎏-mにアップ。トルクについてはアバルト595コンペティツィオーネより大きい。実用エンジンとしてはかなりハイチューンなのである。

おかげで6速デュアルクラッチトランスミッションを介しての加速は、2000r.p.m.あたりでのターボの盛り上がりが明確だ。発進停止が続くシーンではぎくしゃくすることもあるが、流れ出すと水を得た魚のようになる。マニュアルシフトしていくとさらに相性が良く、回すほどに活気づく。紛れもないイタリアンユニットなのである。

乗り心地もまたフィアット的だ。低速ではひょこひょこしているが、スピード上げると落ち着きが出てくる。パワートレインもそうだが、やんちゃなところが残っていて、もっと元気に走ろうよ! とクルマの側から言われているような気がする。

クイックなハンドリングは500そのもの。背の高さは感じず、キビキビした身のこなしでコーナーをこなしていく。ペースを上げるとサスペンションがストロークし、接地感を高めてくれるという懐の深さも併せ持つが、おおらかなジープ・レネゲードとは明らかにテイストが違う。同じプラットフォームでランチアやアルファロメオを作り分けてきた経験が生かされているのだろう。

500の次は? という問いに対しても、フィアットは2019年のジュネーブ・ショーで答えを出した。120を示すイタリア語を車名にしたEV、チェントヴェンティ・コンセプトは、ルーフやバンパー、ホイールの色を着せ替え可能で、大きなテールゲートにはメッセージが表示される。インパネやドアトリムには好みのパーツを取り付け可能。見ているだけでウキウキ、ワクワクしてくるクルマ作りで、これからも僕たちを楽しませてくれそうだ。

2019年春にマイナーチェンジを受けたフィアット500X。外観も前後バンパーが新デザインとなり、前後ライトまわりは500と同じテイストとなった。ボディカラーのカプチーノベージュはマイチェン前に約4割のオーナーが選んだという人気色で、女性にも人気だ。

エンジンが1.4→1.3リッターにダウンサイジングされたがスペック、燃費性能は向上。

取材車のグレードは『500Xクロス』で受注生産のベースグレードも存在する。

シートはヘッドレストが丸形状になっていて、500らしいポップなデザイン。

リアシートは3人掛け。500は欲しいが家族の人数が、というオーナー向けだ。

リアシートを倒した様子。カーゴスペースとしては充分な広さだろう。

インパネにボディ色をあしらうのはクラシック500と共通でもあるが、クーペ・フィアットやバルケッタあたりからの伝統でもある。

ドライバーアシストといった先進装備にも抜かりがない。

ドアオープナーとロックスイッチなど、細部まで凝ったデザインもまたイタリアならでは。

SPECIFICATION
FIAT 500X
全長×全幅×全高:4280×1795×1610mm
ホイールベース:2570mm
車両重量:1440kg
エンジン形式:直列4気筒+ターボ
総排気量:1331cc
内径×行程:70.0×86.5mm
圧縮比:10.5

最高出力:151ps/5500r.p.m.
最大トルク:27.5kg-m/1850r.p.m.
変速機:6速A/T(DCT)
懸架装置(F&R):マクファーソンストラット
制動装置(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤ(F&R):215/55R17
価格:341万円

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