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リトモmeetsリトモFIAT RITMO ABARTH 130TC

イタリアン・ホットハッチの中でも硬派なキャラで知られる『リトモ・アバルト130TC』。しかし、このクルマのオーナーは、子供時代からの「乗りたい」を実現したアバルト女子。その名前は、驚きの“リトモ”さんなのだ。

TEXT / 武田公実 PHOTO / 山本佳吾
SPECIAL THANKS / ルッソカーズ(https://themotorbrothers.com/special-shop/12689

子供の頃からの“乗りたい”を
実現したアバルト女子

近年では“絶滅危惧種”として完全に認知された感のある『フィアット・リトモ・アバルト130TC』は、イタリア車愛好家であれば誰しもが思う、「今のうちに乗っておきたいクルマ」の1台と言えるだろう。でも、今回わざわざ取材させていただいたのは、それだけが理由ではない。この130TCのオーナーは、なんと弱冠23歳の女の子。しかもそのお名前は、璃萌(りとも)さんというのだ。

リトモ・アバルト130TCは、初代VWゴルフのライバルとして1978年に登場したフィアット・リトモの究極的高性能モデル。ゴルフGTIが燃料噴射式1.6リッターSOHCだったのに対して、こちらはDOHCの2リッター。しかも、リトモ・アバルトの前期型に当たる125TCではシングルキャブだったものを、マイナーチェンジ版の130TCでは、ウェーバー社製キャブレター2基にスープアップし、その名のとおり130psをマークした。そして、80年代の常識においても前時代的と言うべきスパルタンなホットハッチとして、そして現在に至っては、伝説のアバルト・クラシケの一角を占めるモデルとして、イタリア車エンスージァストたちの敬愛を集めている。

昨今では日本国内はもちろん、故郷イタリアでもレア車となった130TCだが、この白い個体は特別な一台。東海地方を代表するクラシック/ヤングタイマーイタリアンのスペシャリスト『ルッソカーズ』の岩山代表が、もともとフィアット・ディーノを探しにイタリア・トリノへと赴いた際、近郊の田舎町の農機用倉庫にて、新車に近いコンディションのまま長らく安置された状態で発見した個体なのだ。

このクルマに一目ぼれした岩山さんは、入手を即決。まずはイタリア国内で走行可能な状態までリペアしてもらったのち、二年ほど前に日本の地を踏むことになった。ところが、当初はご自身のコレクションに加えるべく手に入れたはずの130TCだったが、なかなか乗る機会がなかったことから、もっと大切にしてくれそうな新オーナーを探すべく、ルッソカーズの販売車両リストに載せられることになったという。

一方、読者諸賢も気になるであろう璃萌さんの名前は、かつて自動車修理工場を営む傍ら、フィアット系の各モデルでモータースポーツも楽しんでいたというお父様によって命名されたもの。もちろん、その起源はフィアット・リトモにある。小学校4年生の時、ホームルームの課題として、自身の名前が付けられた由来についてご両親に質問し、「クルマの名前だよ」と事もなげに返答された際には、もう愕然としてしまったとのことである。

でも、物心ついた時にはお父様が元祖フィアット124スパイダー、お母様がランチア・デルタに乗っていたという生粋のエンスージァスト家庭で、知らず知らずのうちに「英才教育」を受けてきた璃萌さんは、次第に自身の名前の由来であるフィアット・リトモに興味を持つようになり、いつか手に入れたいというほのかな夢を抱きながら成長することになった。

とはいえ、今や希少イタリア車に仲間入りしてしまった感のあるリトモは、社会人となった後にも直ぐには手の届かない高嶺の花。それでも一所懸命に貯金しつつ、リトモというクルマについても予習を重ねていた時に、この素晴らしい130TCが売りに出ていることを中古車情報ウェブサイトにて発見。ルッソカーズで現車に会って、コンディションの良さを確認した上で契約し、ついに納車されることになったのである。

弱冠23歳の璃萌さん。
運転免許取得の後は国産軽自動車を乗り継いできたが、ご両親の「イタ車英才教育」を受けてきた影響もあって、いつしか自身の名を冠したフィアット・リトモへの憧れを募らせていたという。「部品取りを探しています。リトモ譲ってくれる方は連絡ください!」とのこと。
https://twitter.com/Ritmo_130TC
E-mail:ritmo130tc.1985@gmail.com
愛車のトランクやご自宅の部屋には、リトモを含むフィアットやアバルトのミニカー、グッズ、書籍などが所狭しと並ぶ。愛蔵のグッズには、貴重なコレクターズアイテムも数多く含まれている。

リトモ・アバルト130TCが璃萌さんのもとにやってきて、取材時点でまだ3ヵ月ほど。しかも、この種のエンスー車を初めて入手した際にはありがちな初期トラブルに見舞われ、この取材日には久しぶりの再納車となったという。

それでも今回の撮影にあたって、待ち合わせ場所となったルッソカーズから数km離れた公園へと130TCを走らせてもらったのだが、筆者が何よりも驚かされてしまったのは、まだ所有歴が短いはずの彼女が、手強いことで知られるこのクルマを、実に手慣れた感じで走らせることであった。

男女を問わず、今どきの若い子には未知の領域であるに違いない二連装ウェーバーのツインカムエンジンをアッサリと一発始動させ、路上へと滑るように走り出す。そして、操作の重さには定評のあるステアリングについても「そりゃ、これまで乗ってきたスズキ・ラパンとかに比べれば重いですけど、ぜんぜん回せますよ~(笑)」と平気な様子。まるでこのクルマとは長い付き合いであるかのごとく、みごとに乗りこなしているかに見える。

璃萌さんの130TCのラゲッジスペースには、まるで新品のようなオリジナルのアバルト・ステアリングなどのパーツ類。フィアット/アバルトに関する書籍やステッカーなどのグッズ類が、衣装ケースに入れて大切に保管されている。また、ご自宅にもコツコツと集めたフィアット/アバルトグッズやミニカーなどを並べているそうで、すっかり一人前のエンスーと化してしまったようである。

硬派なモディファイを施したトヨタ二代目ソアラを愛用するボーイフレンドの影響だろうか、トヨタ・スープラ70系やホンダ・シティ・ターボIIなどの国産ヤングタイマー、あるいはかつてお母様の乗っていたランチア・デルタなどにも憧れる璃萌さん、でも、このリトモ・アバルト130TCも、可能な限り長く持ち続けていきたい。願わくば、いつか生まれてくるかもしれないご自身の子供にも、母が名づけられた由来や祖父の記憶とともに、このクルマも譲り渡すことができたら……、との由である。

自分と同じ名を冠したリトモ・アバルトを頑張って手に入れ、そして生涯の愛車とすることができたならば、かつては戸惑いでしかなかった名前も、きっとお父様からの愛情を込めたプレゼントとなるに違いない。璃萌さんの親世代に当たる筆者は、そんな思いを抱いてしまったのである。

硬派で玄人好みなホットハッチ

高らかな快音とともに快走する、璃萌さんと130TC。撮影のための短い走行でも、乗りこなしていることが判る。
異径ヘッドライトが迫力を醸し出す後期型リトモのマスクに、小さな「サソリ印」。
イタリアでも近年ではあまり見られない、極めて状態の良い純正ホイールを履く。
サイドのプロテクションカバーと並ぶ璃萌さんのお気に入りポイント、ソフトな樹脂製スポイラーが、控えめな中にも独特の迫力を醸し出す。
ピチっとラインの出たサイドのプレスラインが、状態の良さを物語る。
定番“OLIO FIAT”のステッカーと、イラストレーターに頼んで作成した自製ステッカーの競演。
大型テールランプ上に、小さな“FIAT ABARTH”のバッジ。
新品に交換されたと思しきマフラーは、アバルトらしい豪快な快音を発する。
現在、ステアリングホイールはアバルトの人気モデル『ブーメラン』が組み合わされるが、璃萌さんはオリジナルの130TC用も、極上状態で大切に保管している。
回転計に加え、油圧計や油温計など往年のスポーツカーではマストアイテムとされたメーター類がズラリと並ぶ。
豪華なベロア張りのフロントシートは、ソフトな掛け心地ながらホールド性も上々。
猛暑で知られる東海地方在住の璃萌さんは、夏に130TCに乗るときは扇風機を愛用しているという。
パッケージングの巧みさで知られたリトモゆえに、後席も広々。
ボディサイズの割には、ラゲッジスペースも充分。
旧アバルト技術陣の手により、130psにチューンナップされた2リッターDOHCユニット。2基のウェーバー・キャブが、大きなエアクリーナーの下から存在感を放っている。

SPECIFICATION
FIAT RITMO ABARTH 130TC
全長×全幅×全高:4014×1663×1374mm
ホイールベース:2432mm
トレッド(F/R):1455/1420mm
車両重量:950kg
エンジン:直列4気筒DOHC

総排気量:1995cc
最高出力:132ps/5900r.p.m.
最大トルク:18.0kg-m/3600r.p.m.
サスペンション(F/R):ストラット/ロワーウィッシュボーン
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤ(F&R):185/60HR14