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イタリアで活躍した正真正銘のコンペティツィオーネFIAT 127

近年、欧州のヒストリックカー・イベントで確固たる地位を築いている“オートスラローム”は特にイタリアではヒルクライムと合わせて、独自の発展を遂げているという。こちらでご紹介するのは、イタリア式オートスラロームから直輸入されたフィアット127。本気のチューニングは、ヒルクライムのみならず、ミニサーキットなどにも好適と言えよう。

TEXT / 武田公実 PHOTO / 平井大介
SPECIAL THANKS / SCC(http://scc-g.jp/

イタリアで活躍した
正真正銘のコンペティツィオーネ

フィアット850の後継モデルとして1971年に登場した127は、デビュー年のカー・オブ・ザ・イヤーにも輝いた小型大衆車の佳作。この時代のイタリアでは、国民車のごとく愛されたクルマである。しかし、誕生した時代背景ゆえに、850時代のような正規のアバルト・バージョンが設定されることもなかったせいか、スポーツイメージについては、それ以前のフィアット製小型車に比べると若干薄いとされる。

しかし故郷のイタリアにおいては、127が新車として生産されていた1970〜1980年代から国内ラリーや“サリータ”と呼ばれていたヒルクライムなどでも、プライベーターたちの身近なパートナーとして親しまれていたという。そして現在では“クロノスカラータ”と呼ばれるようになったとされる、ローカルなヒルクライム競技、あるいは近年のイタリアで独自の発展を遂げた“オートスラローム”競技などでは、アウトビアンキA112などと同等、もしくはそれ以上の活躍を見せているというのだ。

ここでご紹介する、やや武闘派な雰囲気のフィアット127も、最近まで現代イタリアのオートスラローム競技で活躍していた、まさに現役のマシーン。横浜に本拠を置く『SCC(スクーデリア・チョチャーロ・コルセ)』が、イタリアでのコネクションを生かして入手、輸入したものである。一見しただけでも、欧州の“ヒストリックN1”規約に準拠したリベット留めオーバーフェンダーや、キャビン全体をガードするロールケージ、表面の荒れたスティル・アウト(のちのフォンダメタル)製アロイホイール、そして低く構えたサスペンションなど、いかにもイタリアで活躍していた“コンペティツィオーネ”の匂いがプンプンと漂ってくる。

フロントに搭載されるパワーユニットもノーマルの903cc直列4気筒OHVから、今や貴重となったアウトビアンキA112アバルト用1050ccにコンバートした上に、長らくイタリアのフィアット・チューナーとしてその名を知られていたラヴァッツァ社製シリンダーヘッドやハイカム、フェラーリ308系と共通のウェーバー40DCNF気化器を装着するなど、かなりピーキーなチューンが施されているという。

また、ナビゲーターを同乗させる競技に備えて、シートは左右ともFIA公認のスパルコ製バケットに、サベルト製の4点シートベルトも装備。シフトノブのすぐ脇には、ブレーキの前後調節レバーが備わるのも、この127の素性を感じさせる。さすが本場、しかもかなり本気の造り込みは、完全に競技車両のレベルなのだ。

この本格的なチューンゆえに、よほど近くでもない限り、サーキットやヒルクライムの会場まで自走で行くというのは、ちょっとご免こうむりたいマシーンとなってしまっていることも事実。もし可能ならば現地までの移動は、トレーラーや車載トラックに載せてしまうべきだろう。でも、ひとたびコースに躍り出たならば、間違いなく最上級のドライビングプレジャーを提供してくれるだろう。

ちなみに、SCCではこの127に加えて、同じフィアットの128などにも注目しているとのこと。また、このブルーのマシーンが日本国内のヒルクライムなどで活躍することによって、1970年代初頭のフィアットの魅力が認知されれば、よりロードユーズに適したカフェレーサー的な車両のプロデュースも行っていきたいとのことである。日本でもイタリア直輸入のクロノスカラータ&オートスラロームの文化が受け入れられるか否か? 今後に注目したい。

パワーユニットは、フィアット127用よりハイパワーなアウトビアンキA112アバルト用にさらなるチューンを加えたものを搭載。またモータースポーツの現場が要求するボディ剛性を確保するため、エンジンルームには補強用のブレースを新設している。さらに競技車両としてのホモロゲートのため、キルスイッチも設置している。
リアシートやカーペットなどはすべて排除し、FIA規定適応の強固なロールケージや本格的な消火器も設置したインテリア。またナビゲーターを同乗させるラリー競技に備えて、シートは運転席/助手席ともFIA公認のスパルコ製バケットを装備。シフトレバーの直ぐ脇には、ブレーキの前後制動力を調節するためのレバーも備わるなど、あらゆる点でオートスラロームやラリーなどの競技に適用させるためのモディファイが施されている。
取材車は販売車両ではないが、SCCではオーダーがあれば同様の車両も探してくれる。1974年にA.C.I.(日本のJAFに相当し、モータースポーツも管轄下に置く)のホモロゲートを受けたことを示すシール、そして2010年10月にイタリア・ノヴァラ近郊で開催されたオートスラローム型ラリー『第6回メモリアル・クリスティアン・ゾンカ』の車検ステッカーが貼られるなど、競技車両として実戦を闘っていたことが示される。