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“ベルトーネ産ボルボ・クーペ”という価値観VOLVO780 2DOOR COUPE

いかにもボルボらしいスクエアなスタイルながら、絶妙なバランスを持つ。780の実車を見ると、そんな印象を得る。さすがはベルトーネ・デザインだ。新車当時、日本で一番ボルボを販売した元セールスマンに、780の魅力を訊くことができた。

TEXT / 平井大介 PHOTO / 山田真人
SPECIAL THANKS / ボルボ・クラシックガレージ(https://www.volvocars.com/jp/about/our-stories/classic_cars

“ベルトーネ産ボルボ・クーペ”という価値観

2016年8月のオートモビルカウンシルの会場で、ボルボは『ボルボ・クラシックガレージ』と呼ばれる、ワークショップ開設を発表した。具体的には100/200/700/900といったヒストリック・ボルボのメンテナンス、定期点検、車検などを行う専門店で、ボルボ・カーズ東名横浜内に併設されている。またそのサンプルカー製作とも言える『クラシック・ボルボ・リフレッシュプロジェクト』も展開。

そして翌2017年のオートモビルカウンシル、ボルボはその一環としてヘリテージカー販売ブースに数台を展示。その中の1台が今回ご紹介する2ドアクーペ、780だ。780はベルトーネがデザイン、生産を行ったことで知られる2ドアクーペ。これまで見てきたどの個体よりもコンディションがよく驚いたが、もっと驚いたのは販売価格(取材時)。何と128万円! 安い! クラシックガレージのマネージャーである阿部昭男氏にそう告げると、「皆さんそう仰いますが、我々は適正価格だと思っています」とサラリ。告白すればスクエアで、絶妙にバランスされた780のスタイルが大好きで(ベルトーネ産だし)、会場で激しく興味を示していたら、「だったら当時、日本で一番780を販売した方をご紹介しましょう。会場にも来ていますよ」といってご紹介頂いたのが、青木繁明氏。会場では軽く挨拶に留め、後日780が展示されている『ボルボ・クラシックガレージ』にて取材となった。

青木氏は1980年に帝人ボルボへ入社。1985年にはボルボ・ジャパン勤務となり、そこから1995年まで10年連続で“トップセールスマン表彰”を受賞。1996年から2009年まで本社で要職に就き、現在(取材時)は広告代理店の非常勤顧問を務めている。780のデビューは1985年ジュネーブ・ショー。日本は1987年モデルから導入で、まさに青木氏が現役で販売した。

1985〜1995年に10年連続で“トップセールスマン表彰”を受賞した、当時日本で一番ボルボを販売したのがこの青木繁明氏。780は30台ほどを販売、日本で一番はもちろん、“世界で3本の指に入る”ほどだった。
この表彰状はスウェーデン本社から『Club Excellence』に選ばれた時に贈られたもの。

「それ以前にベルトーネ・デザインの262Cというクーペがあり、その後継モデルは需要がありました。しかし当時ボルボを選ぶ方はデザインより安全に対してのプライオリティが高く、輸入車がほとんど左ハンドルの中、ほぼ100%右ハンドルでした。しかし780は左ハンドルしかなく、しかも2ドアクーペですから、販売は苦戦しました。当初は価格も1026万円と高かったので。その後956万円に下がり、さらにモデルイヤーの途中で780万円まで下がった時はさすがにお客様に怒られましたが(笑)」

しかしそれでも青木氏はコツコツと販売を重ね、毎年セールス・トップ10の対象者に与えられる研修旅行に招待され、1990年には『780クラブ』メンバーにも選ばれ、イエテボリのボルボ本社だけでなく、トリノのベルトーネも訪れることができた。

1990年に『780クラブ』メンバーに選ばれ、イエテボリとベルトーネを訪問した時の写真。
こちらは欧州最大のボルボ・ディーラーを訪問した際のスナップ。780が店舗前に写っている。

「まさに匠の職人の世界でした。ダッシュボードにウッドを重ねたり、シートを手で縫ったりしているのを見て、確かに時間はかかりますが、この手間を考えたらむしろ安いクルマだと思いましたね。ちなみにその時、780の車名についても聞いたんです。例えば262Cなら2シリーズ、6気筒、2ドア、クーペなんですが、780は6気筒ですし本来なら762ですよね。ベルトーネ広報の方は、本当はV8を積む予定でスペースもとってあったと言うんです。でもボルボ側の事情で、PRVの6気筒になったと」

ベルトーネの訪問では、工房はもちろん、中庭に並んだプロトタイプなども見学できた(写真はアトン)。
当時のお土産はベルトーネのロゴが入ったトランプ(!)だったという。

ここで青木氏が考える780の魅力を聞いた。

「やはりデザインがキレイですね。それでいて安全性とボディ剛性も確保されていますし、ブレーキもしっかりしています。イタリア車は、スタイルはキレイでもすぐ錆びるイメージがありましたが、ボディには防錆処理がされていました。室内もルーミーで、当時のクーペはリアシートのスペースが犠牲になっていたのですが、780はちゃんと4人乗れてシートベルトもできました。そう考えると、ボルボとイタリアのいいところを融合したクルマなんですよね」

クルマの前で、当時青木氏が販売した車両かどうか聞いたところ、「たぶんそうですね」と懐かしそうな目つきになった。当時30台くらいは販売したそうで、日本国内ではもちろんトップ。本国でも「世界で3本の指に入る」と言われたそうだ。青木氏がたぶんと言ったのは、新車当時から受け継ぐ“品川33”のナンバーが今もついていて、ちゃんと正規ディーラーで管理されてきた車両だからだ。走行距離は約15万5000kmと見た目からすると俄かに信じ難いが、ちゃんとメンテナンスされてきて車両で、何よりご覧のようにボディがシャッキリして見える。取材後、周囲を少し運転させて頂いたが、ドロっとした感触の2.8リッターV6は余裕ある雰囲気で、とにかく調子がよさそう。シートも分厚く、ロングツーリング向き……と感じさせるのはいかにもボルボといった趣きだ。

“ベルトーネ産ボルボ・クーペ”。そんなキーワードに価値を見出すかどうかでこのクルマの評価は二分される。それはもはや価格が安いかどうかの話ではない。形が好きなら、一発で決めていいクルマと言えるだろう。

右の新聞は当時、スウェーデンの新聞に取材された時のもの。本社でもかなり注目されていたのだ。

これもまた、贅沢なクーペ趣味

取材時には128万円で販売されていたこの780は、最終に近い1990年式。屋根付きの駐車場で保管されていたらしく、外装も素晴らしいコンディションだ。
内装もウッドに少し傷がある程度で、総じて非常に良いコンディションを保っていた。なお車両価格は安いが部品代はそれなりに高く、新車当時にベルトーネにシートをオーダーしたら1脚200万円だった(!)というエピソードが残っている。
ドロっとした感触のPRV 2.8リッターV6は余裕ある雰囲気で、クルマのキャラクターに合っている。トランクおよび給油口のオープナーはフェラーリと共通部品で、たまたま当時ベルトーネの工場に在庫があったから、らしい。エンジン・ルームのプラークにはボルボに加え、ベルトーネの文字も読み取れる。