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COLUMN

2020年代に甘みを増すクラシック・ミニの世界WE LOVE CLASSIC MINI

ヒストリックカーの世界は人もクルマも大きな流れの中にいる。生産が終了してからすでに20年以上が経ち、生き残っている個体が全てヒストリックカーとして扱われはじめているクラシック・ミニの世界も、流行や価格、そして1台のクルマに懸ける気持ちの大きさなど、あらゆるものが絶えず変化し続けている。これからはじまる2020年代のミニシーンに思いを馳せてみる。

TEXT / 吉田拓生 PHOTO / 神村 聖
SPECIAL THANKS / ミニ屋Aiフラジル(http://www3.wind.ne.jp/miniya/

2020年代に甘みを増す
クラシック・ミニの世界

そのまま歳を取ってきたマーク1よりも、高い趣味性を叶えるために作り込まれたマーク1仕様の方が、クルマ好きをハッとさせることがある。

その昔はカー・マガジンの編集部にも長らくキャブ・クーパーがいて、なにかと僕はミニを連れ出すことが多かった。耐久レースが盛んだった時代にはチームに属して戦っていたこともあった。そういえば、今はなきORIGINAL MINIという別冊を作っていたこともある。

クラシック・ミニのきわめて近く、というかキャッチャーの後ろ、バックネット裏の金網越しに眺めていていつも思うのは“羨ましいなぁ”というただ一言。ミニの世界はこの上なく恵まれているのである。

日本で古いクルマの趣味をやっていれば、それぞれの車種に専門店があることはご存じだろう。けれどスペシャリストが日本全国にあって、売り物も選べるだけあって、補修用からヴィンテージまでの様々なパーツやアクセサリーが揃っていたりする趣味グルマはクラシック・ミニ以外にはないのである。

クラシック・ミニの人は、その世界にけっこう長くいることが多い。その理由は色々な意味で居心地がいいからだろう。懇意にしているスペシャルショップの居心地がいいというだけではない。そもそもクルマ自体が“拘り過ぎなければ”リーズナブルな価格で手に入るし、製造年次を考えればかなり壊れにくい方だ。大人4人乗れる割に駐車場のスペースはとらないし、燃費だっていい。たくさんのドレスアップパーツを前にして“次はどうしよう”なんてワクワクできるし、ジャパンミニデイのような大きなイベントが度々あるから、不動車を所有していても、イベントまでに直して走らせようというモチベーションが生まれる。イベントでノーマルのままサーキットを走らせても、それなりに楽しめてしまうという点も他のヒストリックカーにないクラシック・ミニの稀有な才能といえる。

今回のテーマは“ベーシックカー”である。正確には昔ベーシックカーだったクルマ、だろうか。何しろローバー・ミニだって生産が終了してからついに20周年を迎えてしまったのだから。この20年で良かったことは、いよいよ全てのクラシック・ミニが本当の趣味車としての扱いを受けはじめたということではないだろうか。その傾向は、ローバー・ミニをオリジナルの姿に戻して乗りたい、というオーナーが出てきたことでもわかる。

90年代は街中にミニがごろごろと溢れていた。たくさんある小型車の中から、やっぱりミニが一番カワイイ! といって毎日普通に乗るオーナーがいた。皆と一緒じゃいやだから、かなり大掛かりにモディファイしちゃいました、なんていう人もいくらでもいた。当時のローバー・ミニは現役のモデルだったから、それはそれで問題なかった。当時のクラシック・ミニ好きは、60年代のミニとローバーを2台持ちしていたり、普段のアシはローバーで友達とレーシング・ミニを共同所有していたりと、かなり賑やかだったのである。

これからの2020年代のクラシック・ミニ・シーンはもうすこし小ぢんまりとまとまっていくような気がする。軒につるされた干し柿のように水分が抜けていく代わりに、甘みが凝縮される、そんな感じだろうか。

子供の頃夢に見たおもちゃ箱(?)ミニのスペシャルショップはあらゆるクルマ好きにとっても一見の価値がある素敵な空間。ミニを所有していれば、興奮は何倍にもなるはずだ。

ふらりと訪ねたミニ屋Aiフラジルで、素敵な1台のミニに出会った。てっきり60年代のクーパーだと思ったら、よくできたマーク1仕様だった。そのまま歳を取ってきたマーク1よりも、高い趣味性を叶えるために作り込まれたマーク1仕様の方が、クルマ好きをハッとさせることがあるものだ。

これまでは60年代のミニに対し、そのレプリカとしてマーク1仕様が存在していた。だがヒストリックカーの世界を俯瞰してみると“由緒正しいモディファイ”という言葉があることに気づく。例えば戦前のオースティン・セブンの平凡なサルーンは軽量なレーシングボディに載せ替えられ、アルスター・レプリカのようなかたちで重宝されているし、戦前のベントレーでも同じような傾向が見られる。

一方ジャガーCタイプやDタイプ、そしてフェラーリ250GTOといった名車のレプリカも、かつては本物とは全く違う扱いを受けていたが、作られてから30年以上が経過している昨今ではオークションでそれなりの値段が付くようになっている。史実に基づいたスタイルの変更はヒストリックカーの世界では歓迎される傾向が強まっているのである。

そんな視点でマーク1仕様と相対してみると、そこに新たな価値を見出すことができる。各部の見た目は完全にクラシカルなものだし、今となっては1000万円越えする個体すらあるという60年代のクーパーS等と比べれば、クラシカルな雰囲気を漂わせながら、気兼ねなく遊べる1台なのである。

有名ショップが手掛けたマーク1仕様などは、往年のレースカーのように、固有名詞的に語られる存在になっていくかもしれない。以前より60年代の資料も豊富になってきているので、これから生まれるマーク1仕様は、より純度の高い物になるに違いない。

様々な年式や仕様のクラシック・ミニが尊重され、大事に扱われる世界。それが2020年代のクラシック・ミニ・シーンなのだと思う。元来のファンはもとより、これまでミニに接してこなかったクルマ好きでも、この芳醇な世界に触れてみる価値は十分にあると思う。

各部にマーク1のクラシカルなパーツを盛り込むことで、にじみ出る雰囲気に違いが出てくる。マーク1仕様に凝りはじめると、最初っから60年代のミニを買った方がよかった、という結末になることもある。ある程度ちゃんと雰囲気が出たら、あとは徹底的にドライブして楽しむのが“マーク1仕様”の魅力だ。