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極楽4気筒・2台の“麗しのツインカム”ALFAROMEO 1750 GT VELOCE & CATERHAM SUPER SEVEN BDR

エンジンの話。絹の様になめらかに回り続ける直列6気筒や直列8気筒、とかモーゼの十戒の如く怒濤のパワーが湧き出る12気筒……。えてして世の中は派手なもの、数の大きなものに注目が集まりがちである。その一方、世界中のクルマのエンジン形式としては、恐らく一番多いであろう“4気筒”。だが、そんな身近な4気筒の中には、クルマ趣味的な視点から見ても、名機と呼ばれるものは数多く存在するのだ。

TEXT / 森口将之(アルファロメオ), 吉田拓生(スーパーセブン) PHOTO / 神村 聖

極楽4気筒・2台の“麗しのツインカム”

それぞれがモータースポーツとの関わりや長い歴史を感じさせる官能的なサウンドとパフォーマンスを披露してくれる。

ALFAROMEO 1750 GT VELOCE

たとえシリンダーの数がフェラーリの1/3でも
数字を超えた官能性では決してヒケをとらない

人はなぜアルファロメオ・ツインカムに惹かれるのか。理由のひとつとして、オールアルミ製のDOHCというスペックがあるだろう。

イタリアのアルミ鋳造技術は昔から世界最高水準にあった。とはいえ自動車用エンジンへの採用は、一部のレーシングカーやスーパースポーツカーに限られていた。そんな中アルファは1954年、初代ジュリエッタ・スプリントに積まれた1.3リッターの量産エンジンを、オールアルミ製としてきたのだから画期的だった。

イタリア産ということで、耐久性や信頼性を不安視する人がいるかもしれない。しかし専門ショップで話を聞くと、作りが良く丈夫という意見で統一される。だから高度なチューニングにも応えてくれるのだろう。

吸排気バルブを独立したカムシャフトで作動させるDOHC方式は、1950年代においてはジャガーやアストンマーティンなどの高性能スポーツカーなどでは目にできたものの、ジュリエッタのような1.3リッターの小型車への投入はやはり異例だった。

アルファとしては、第2次世界大戦前はレーシングカーとスーパースポーツを少量生産しており、DOHCも当然のように用いていた。そのヒストリーを、1900を送り出すことで量産メーカーに転身した1950年代以降も継承したいという思いが、ジュリエッタのオールアルミ製DOHCに行き着いたのかもしれない。

ただしこのエンジン、基本設計が60年以上前のDOHCということを考えれば、かなり扱いやすい。初代ジュリエッタ時代は、最初に登場したスプリントで80HP、ザガートのアルミボディをまとったレーシングスポーツSZでは100HPをマークするなど当時としてはかなりの高性能だが、セダンのおとなしい車種は50HPそこそこに留まっており、実用性にも配慮していた。ツインカムという言葉からピーキーな特性を想像している人がいたとしたら、その要望には残念ながら(?)応えられない。

信頼性や耐久性に優れ、扱いやすくもある。それでいてスポーツユニットらしい高揚感ももたらし、チューニングの余力も残している。こうした懐の深さが、インジェクションやターボ、ツインスパーク化などを実施し、最後は横向きに積まれて1990年代まで約40年間生き続けられた理由ではないだろうか。

アルミの地肌が鈍い輝きを放つツインカム・ヘッド。メーターのメッキのリング、そして生き物の様にわななくエグゾースト・パイプ。それぞれのパーツのひとつひとつが、アルファロメオの長い栄光のヒストリーの生き証人である。オイルの匂いのしない、樹脂製パーツで覆われた最新のエンジンでは、決して得られない感覚。

そんなアルファ・ツインカムには、今回紹介するジュリア・クーペに限れば4種類ある。ジュリエッタとともに登場した1300(1290cc)、ジュリアに積まれて1962年にデビューした1600(1570cc)、5年後に上級車種用として加わった1750(1779cc)、その1750に代わり1971年に送り出された最強の2000(1962cc)だ。

興味深いのはボア×ストロークの数値である。1300はφ74×75mmでほぼスクエアなのに対し、1600はφ78×82mm、1750はφ80×88.5mm、2000はφ84×88.5mmと、いずれもロングストロークだ。この点からも高回転重視でないことが分かろう。ボアの数値がすべて違う点も注目だ。ただしGTAに積まれたツインプラグ仕様は1300のみ、ボアを1600と共通にした唯一のショートストロークとなっている。

GTAを除くジュリア・クーペの場合、圧縮比はすべて9.0:1。キャブレターはφ40のツインチョーク・サイドドラフトタイプ2基で、試乗し車はウェーバー40DCOEが装着してあった。ギアボックスはすべて5速M/Tである。

以前取材で、4種類の排気量のジュリア・クーペを比較試乗する機会があった。そのときは、1300はトルクが細く、1600は使い切れる速さ、1750で力強さが加わり、かつて自分も愛車にしていた2000は豪快という印象だった。キャパシティを反映して、高回転での吹け上がりの爽快感は1300が有利で、逆に2000は低中回転で勝負するタイプだった。でもキャラクターが大きく違うとは感じなかった。それぞれに独自のボアを与えるなど、最適化がなされたおかげかもしれない。

ザガート・ボディを纏ったレーサーから商用車まで、戦後アルファロメオの屋台骨を支えたツインカム・ユニット。エンジン・ルーム内の2基のウェーバーはお馴染みの光景だ。1750GTベローチェは1779ccの排気量から132馬力を発生した。

では今回の1750GTVはどうか。セルモーターを回しながら、スロットルペダルを小刻みにあおるとすぐに火が入り、豪快な吸排気音とともにツインカムは目覚める。このあたりの儀式は他の排気量と同じだ。1750から装備されたセンターコンソールの奥から斜めに生えた、ねっとりしたタッチの奥に確実なゲートを持つシフトレバーを、軽くセカンドに入れたあと、ローに送り込む。

まずは低めの回転でクラッチをミートし、穏やかにスロットルペダルを開けていく。このときに右足を大きく踏み込むと、ゴボゴボッと咳き込んでしまうのは、大口径ウェーバーを2連装したエンジンの宿命。1950年代生まれのスポーツユニットに、そこまでの柔軟性はない。

でもひとたび2000r.p.mを超えれば、アルファ・ツインカムは本来の姿を取り戻す。鋭いレスポンスと滑らかな吹け上がりは、クラシックな4気筒とは思えない。パワーやトルクに段付きはなく、扱いやすさも極上だ。それでいて4000r.p.mあたりから上では、グォッという吸気音とブォーンという排気音に硬質なエンジンサウンドが加わり、クライマックス目指して勢いを加速させていく。

レブカウンターの針が4000を越えると、アルファ・ツインカムはさらに硬質なエンジンサウンドを奏で始める。

アルファ・ツインカムをドライブしていて、いつも不思議に思うのは、なぜか踏んで回したくなってしまうことだ。1750GTVの最高出力は118HP/6000r.p.mと、ピークの数字も発生回転数も飛び抜けた数字ではないのに、音や回転感に引き込まれ、気がつけば高みを目指している。いまなお多くのクルマ好きがアルファ・ツインカムに魅せられる理由のひとつが、数字を超えた官能性にあることは間違いない。

ジュリア・クーペのサスペンションはジュリエッタ時代と基本的に同じで、フロントがダブルウィッシュボーン、リアがリジッドアクスルとなる。リアは中央のT字ブラケットと左右の縦方向リンクで位置決めするので、低速では「アルファ・ダンス」と呼ばれる横揺れが気になることもあるが、今回の個体は整備が行き届いているためか、あまり感じられなかった。

それよりも、ひさしぶりにジュリア・クーペをドライブして、アルファ・ツインカムと同じぐらい印象に残ったのは、ストローク感豊かなサスペンションの粘り腰だ。とくにリアのリジッドアクスルが、適度なロールを許しつつも路面にしっとり接地してくれるので、コーナーの立ち上がりで右足に力を込めても唐突にグリップを失ったりすることはなく、安心して立ち上がっていける。

当時のベルトーネのチーフデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロが描いた2ドアクーペボディは、セダンの2510mmから2350mmまで縮められたホイールベースのおかげもあって、ややフロントが重めだ。細く大径のリムを持つステアリングをなにげなく切ると、重さばかりが気になることになる。

でもコーナー進入で制動を掛けてフロントを沈め転舵を試みれば、丸みを帯びたノーズはスルッとインに入っていく。あとはスロットルペダルを好きなだけ開け、信頼できるリアサスペンションを踏ん張らせ、粘り腰を味方に付けながら脱出していくだけだ。

姿勢変化をコントロールし、走りのリズムを刻んでいくのに、幅広い回転域で扱いやすい性格はありがたい。逆にシャシーがしっかり受け止めてくれるからこそ、思う存分踏んで回せる。オールアルミのDOHCというスペックに注目が集まりがちだが、そのエンジンとシャシーのマッチングもまた絶妙だ。ツインカムにふさわしいシャシーを用意したアルファもまた素晴らしいと思った。

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