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モーガンの新しい夜明けMORGAN PLUS 6

筆者が常に気になるオ−プンカーと言えばモーガンだが、83年ぶりの代替わりというトピックの前では、"幌型"である事実は大したことではないかもしれない。大いなる期待と不安を抱きながら、新世代モーガンの旗艦を走らせてみた。

TEXT / 吉田拓生 PHOTO / 神村 聖
SPECIAL THANKS / モーガンカーズ・ジャパン(https://www.morgan-cars.jp/)

モーガンの新しい夜明け

ブランニューのプラットフォームを得たモーガン・プラス6の初めて見た時の印象は、良い意味でフツーだった。20年ほど前に初めてエアロ8と遭遇した時のような違和感は一切なくて、とりあえずホッとさせられる。強いて伝統的ではない部分を挙げるとするならば、横一線に白いビニールテープを貼りつけたようなLEDのヘッドランプと、リムが接地してしまいそうなほど薄い35扁平のタイヤが少しだけ不敵さを匂わせる。だがこの程度なら、今までのモーガンにモディファイを施した人もいるのではないだろうか。

ウッドとレザーで作り込まれたインテリアの意匠もモーガンの公式通りで、最近よく見かけるシフトレバーだけが21世紀的で異彩を放つ。そう、プラス6に搭載されているパワートレーンはBMW製なのだ。

最近はモーガンに対して少し感傷的になっていた。その理由はもちろん、1936年から作り続けられてきた伝統的な4輪モデル、4/4(フォーフォー)の生産が終了してしまったからである。その代替えとしてモーガンは、全く新しいアルミニウム製のプラットフォームを備えたモデルをリリースしている。4 気筒ターボを搭載した新型プラス4と、モーガン史上初めてストレート6ターボを搭載した今回のプラス6だ。

モーガンとBMWは資本提携をしているわけではないが、両者の関係は2001年のエアロ8の時から続いている。プラス6が搭載しているBMW製の3リッター直6エンジンの型式はB58。つまり現行モデルのBMW Z4やトヨタ・スープラが搭載している可変バルブタイミング、ツインスクロールターボを備え、340psの最高出力を発揮する最新のユニットだ。組み合わされるギアボックスは当然のようにZF 製の8速A/Tとなる。

ドイツ製のパワートレーンを得たモーガンは先のエアロ・シリーズで前例があるし、新型のモーガンに現在世界中にあるエンジンをどれでも積んでいいと言われたら、BMWのそれはベストな選択肢とは言えまいか? だが今回着目すべきは、最新のプラス6がかつてのエアロ8のようなサブラインではなく、モーガンの屋台骨を背負って立つ主役であるという点だろう。クオリティは高くなっているが開閉に相変わらず時間がかかる幌を下ろし、最新のモーガン・プラス6で走り出してみた。

出だしのスムーズさはあっけにとられるほどだった。例えば以前のV6を搭載したモーガン・ロードスターならばブルブルっというエンジンの振動をシャシーが拾い、リアサスが硬く踏ん張ってからおもむろに走り出し、徐々にブルブルが収束していったが、最新のプラス6はエンジンもシャシーも微動だにせず、車重を全く感じさせないままドンッと加速していく。そしてZ4やスープラがそうであるように、街中でもいつの間にか3速ぐらいにシフトアップして平然としている。

一方交差点におけるブレーキングからコーナリングでも一切の抵抗感がなかった。モーガン4/4系のシャシーが採用してきた伝統のスライディングピラー式フロントサスペンションはストロークが短く、スポーティに走らせる場合にはグリップを感知しやすく姿勢変化も少ない。だがラダーフレームをダイレクトに震わせるし、こと乗り心地に関しては褒められたものではなかった。しかし最新のプラス6のフロントサスはダブルウィッシュボーンになっており、しかもステアリング系統には絶妙な操舵フィールを演出する電動パワステが備わっている。スプリングの設定は硬めだが、アルミ接着のプラットフォームが全ての入力をマイルドに処理して乗り手に必要な情報だけを伝えてくるのだ。

BMW製のパワートレーンを搭載したプラス6にとって乗り心地の良さは嬉しい副産物だが、では走りはどうなのか。Z4やスープラと同じパワートレーンを搭載していると言えばとても速いクルマだということは容易にわかるが、その速さが尋常ではない。何しろZ4やスープラの車重は1550kg程度でそれでも重くはないと言われているのに、プラス6に至ってはたったの1075kgしかないのだ。レースの世界では30kgほど差があったら勝負権はないと言われるが、プラス6はライバル(?)より500kg 近くも軽い。さらに驚くべきは、プラス6にはABS 以外のドライバーズエイドが付いていないのである。

今回は早朝の都内を走らせただけなのでハイスピード域を試すことはできなかったが、交差点からの立ち上がりで少し強めにスロットルを踏み込むと簡単にリアが暴れ出したのは、スペックを考えれば当然だろう。オープンデフだったので大きく滑り出すことなく収束したが、LSDが入っていたら当代随一のドライビングマシン、もしくは暴れん坊の誕生である。かつてモーガンにはプラス8というローバーV8を搭載したモデルがあり、ホットロッド的な位置づけによって人気を博していた。今回のプラス6はその子孫であり、ワインディングで走らせる時には手に汗握るピュアなスポーツカーといえるだろう。

路面の凹凸を上手く吸収し、乗り心地も上々。ステアリングフィールもしっとりとして、しかしひとたびスロットルを開けると矢のように速い。だが上記のキャラクターをもって、モーガン・プラス6を成功作と位置付けることはできない。重要なのは最新にしてモーガンの将来を背負って立つメインモデルとして成立しているかどうか、という1点に集約されると思う。そしてプラス6はその点においても完璧に”モーガンになっていた”のだ。これだけ完成度の高いプラットフォームなら、4気筒を搭載したプラス4のさらなる軽快感にも期待せずにおれない。

CXジェネレーションと呼ばれる今回のアルミ接着のプラットフォームは、モーガンにとって2世代目。そのネジリ剛性はエアロ8用に開発された初代の2倍だというから、4/4のフレームと比べたら10倍では効かないくらい硬質なものになっている。サスペンションシステムは前後ともダブルウィッシュボーン化され、パワートレーンはBMW製の最新のものを搭載……と、これだけ最新の要素が揃ってもなお、プラス6というクルマの個性を決定づけているのはモーガンの伝統的な部分だ。それはつまり、エンジンを完全なフロントミッドシップとし、ドライバーをリアアクス直前に座らせ、またクラシカルなスタイルのアルミボディを、ホワイトアッシュの木骨を用いてシャシーと一体化させ軽量、低重心を徹底するというスタンスである。

モーガン・プラス6のスタートプライスは1400万円程度なので、スープラRZのちょうど倍である。ちなみにオープンモデルのZ4 M40iは850万円程度なので、金額だけに着目すればずいぶんと高いことになる。だが伝統的なブリティッシュ・スポーツカーブランドの最新モデルであり、ピッカースレイロードの工場で職人が組み上げた工芸品であり、ハイパワーFRでドライバーズエイドなしという当代随一のハードコアスポーツカーの価格としてこれは安すぎないか? モーガンの83年ぶりのフラッグシップ交代は、多くの人の想像を超える成功劇となるに違いない。

ダッシュパネルの意匠は古式ゆかしいが、BMW由来のシフトレバーが異彩を放つ。

ホイールベースが若干伸び、コックピットの前後長は少しゆったりとした。

サイドスクリーンや幌といったギミックはこれまでのモデルと同じ。

19インチのホイールがこれまでにない雰囲気を漂わせるが、一般的な目線で見れば最新モデルに見えないのがモーガンらしいところ。

ヘッドランプのLEDは好き嫌いが分かれるかもしれない。

エンジンルームは最新のBMWユニットやアルミ素材に対し、バルクヘッド側にはウッドが確認できる。内外装を含めモーガン以外の何物でもない見た目で、しかし驚くほど速い。これこそ、モーガンが長年作りたかったスポーツカーの理想的なスタイルと言えるだろう。