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40周年を迎えた愛すべき"道具"FIAT PANDA

2020年に40周年を迎えたフィアット・パンダをピックアップ。初代、2代目、現行モデルの3代目ともイタリアンベーシックカーとしてロングセラーになっており、イタリア、日本など各国で愛されてきた。そんな愛すべき"道具"の変わらぬ魅力を改めて味わうこととする。

TEXT / 森口将之 PHOTO / 山本佳吾
SPECIAL THANKS / FCAジャパン(https://www.fiat-auto.co.jp/)

40周年を迎えた愛すべき”道具”

フィアット・パンダが2020年で生誕40周年を迎えた。この事実を知ってまず思い浮かんだのは、初代が発表された頃に運転免許を取った僕より若い世代にとって、イタリアンベーシックと言えば間違いなくこれになるんじゃないかということだ。

昔はもちろん空冷リアエンジンの2代目500、ヌォーヴァ・チンクエチェントだった。でもあのクルマがイタリア中を走り回っていたシーンをリアルで見ているのは、かなりのベテランであるはず。かくいう僕も最初にイタリアを訪れた時、現地の人々の足はすでにパンダに置き換わっていた。

パンダの40 年は順風満帆だったわけではなく、最後のページで触れているように紆余曲折もあった。それでも多くの人に愛されているのは、イタリア人の生活をもっとも良く知る自動車会社が、イタリア人に寄り添って生み出したがゆえの、イタリア風味の濃さが効いていると思っている。

2011年に欧州で発表され、2年後に日本で発売となった現行パンダは、その後衝突被害軽減ブレーキを装備したり、アルミホイールやステアリング、メーター、シートのグラフィックに変更を受けるなどのマイナーチェンジを実施したりしたものの、基本構造はデビューしたときのままだ。

でもパンダを含めたイタリアンベーシックは、ロングセラーが多いので驚きはしない。というか、実車に触れると変える必要がないと思えてくる。理由のひとつはデザインがいまなお新鮮であるためだ。

合理主義を突き詰めたジョルジェット・ジウジアーロの初代に対し、社内チェントロ・スティーレのロベルト・ジョリートが手掛けたそれは、彼の傑作のひとつである2代目ムルティプラに似て、ディテールへのこだわりが目を楽しませてくれる。それでいて外も中も『スクワークル』と名付けた”カドマル”で統一しているから、1台のクルマとしての明確なメッセージも伝わってくる。

高価な素材や凝った技法を使わなくても、素晴らしいデザインはできることを現物で教えられるし、実際に触れると使いやすさを通してさらに愛着が湧く。とっておきの1台ではなく、日々をともに過ごす1台として、理想の造形ではないかと感じる。

ボディサイズは3655×1645×1550mmと今の軽自動車に近いものの、後席にも身長170cmの僕が余裕をもって座れる広さは確保しているし、前後とも乗り降りしやすいことも特筆しておく。右ハンドルのドライビングポジションはややステアリングが遠く、イタリア車であることを実感。シートの座り心地はフィアットとしてはまろやかな感触なので快適に過ごせる。日本仕様の現行パンダはすべてターボ付き0.9リッターのツインエアを積む。M/Tは4×4などで何度か限定販売されたものの、カタログモデルはデュアロジック、つまり2ペダルの前輪駆動車であり続けている。今回もイージーのグレード名を持つレギュラーモデルに乗った。

2気筒のパンダは初代前期型にあった空冷縦置きのパンダ30以来になるけれど、パンダ30の運転経験がない僕にとっては、500のように旧型に重ね合わせることはできない。なので自分も乗っていたモト・グッツィやドゥカティの4輪版という感覚で、ツインを味わい尽くす走りになってしまう。

それにパンダはそもそも実用の道具だからして、イタリア人がそうするようにエンジンを回し、元気に駆けたくなる。レブカウンターに頼らずとも美味しいところが分かるのはツインのいいところ。鼓動を味わいながらゆったり流すのもいいけれど、独特のパンチが心地いい3000r.p.m.あたりを使うべくマニュアルモードを駆使すると、手前がアップ、奥がダウンというレイアウトに「分かっているなあ」という言葉が出る。

プラットフォームは半年前にも乗った500と基本的に共通。車両重量の差は50kgほどで、タイヤサイズは同じ。でも乗り心地はマイルドだ。ホイールベースが2300mmしかないとは思えない落ち着きぶりである。その分ハンドリングは500より穏やかで、背の高さもあるので痛快というレベルではないが、フィアットらしく素直に回っていく。

FCAジャパンのウェブサイトでは、パンダ40周年を祝うジウジアーロとジョリートのメッセージを見ることができる。その中でジョリートはこんな言葉を記している。『フィアット・パンダを語るとき、私たちは単にプロダクトとしてではなく、その存在意義やユーザーフレンドリーな使い勝手の良さについて話をします』。

3世代すべてでデザイナーが違うし、ハードウェアでも40年間受け継がれたものは少ない。それでも根強いファンがいるのは、作り手が乗り手の場所まで降りてきてクルマを作っているからだろう。そんなクルマづくりがある限り、パンダはこれからもパンダであり続けてくれるはずだ。

現代日本で買えるパンダは、ツインエアを搭載する右ハンドル+セミA/T(デュアロジック)のイージーのみ。取材車のボディカラーはアイスホワイトで、他にレッド、グレー、ブルー(これだけメタリック)の4色を用意。取材車のシートはグレーとグレーの2トーンで、レッドの外装だけレッドとグレーの2トーンになる。こうして見ると地味に思えるカラーリングの組み合わせだが、毎日乗るベーシックカーとしてはいい塩梅かもしれない。

Check Points

LED全盛の昨今、普通のヘッドライトを見るとほっとするから不思議。ドアポケットに入るペットボトルのイラストや、テールゲートを開けて現れる車名に遊び心を感じた。現行パンダといえば『スクワークル』と名付けた”カドマル”のデザインで、ボディサイドや内装などでアイキャッチとなっている。見れば見るほど見事だ。

specification
FIAT PANDA EASY
●全長×全幅×全高:3655×1645×1550mm
●ホイールベース:2300mm
●トレッド(F/R):1410/1415
●車両重量:1070kg
●エンジン形式:直列2気筒ターボ
●総排気量:875cc

●内径×行程:80.5×86.0mm
●最高出力:85ps/5500r.p.m.
●最大トルク:14.8kg-m/1900r.p.m.
●変速機:5速セミA/T
●懸架装置(F/R):マクファーソンストラット/トーションビーム
●制動装置(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
●タイヤ(F&R):185/55R15
●価格:224万円

パンダ40年のヒストリー

ジウジアーロの初代については語り尽くされた感があるので写真で楽しんでいただくとして、ここでは2代目にスポットを当てることにしよう。

2代目が当初はパンダという名前ではなかったことはご存知の読者もいるだろう。2002年にお披露目されたコンセプトカーはシンバ(Simba)、翌年発表された市販型はジンゴ(Gingo)というネーミングだった。ちなみにシンバのときは遅れて登場するパンダ・クロスのようなSUVルックで、背の高い5ドアボディともども、パンダとは違うイメージを持たせようとしていたようだ。デザインはベルトーネが担当した。

ところがルノーから、ジンゴはトゥインゴに発音が似ているとクレームが付いたことから、フィアットはパンダの名前を与えることにした。この一件がなかったらパンダの車名は一代限りで終わっていた可能性がある。

プラットフォームは新設計で、その後500にも展開。1.2リッター直列4気筒SOHCは、初代中期型以降に積まれたファイアエンジンだった。大きく変わったのはドライブトレインで、前輪駆動で選べる2ペダルはCVTのセレクタからデュアロジックと呼ばれるロボタイズド式になり、4×4はレバーで切り替えるセレクティブ式からビスカスカップリングを用いたオンデマンド式と、現行型と基本的に同じ内容を確立していた。

初代にはなかったスポーツグレードが用意されたのも特徴で、1.4リッターDOHC16バルブを積むその名もパンダ100HPが設定された。M/Tは6速で今に至るまでパンダ最多ギアとなっている。欧州COTYを受賞したことを含め、見るべきところが多い世代だと思っている。

初代パンダ
初代のファーストモデルは左のパンダ30と45 で、前者は126 の空冷2 気筒、後者は127 の直列4気筒を搭載。縦グリルが右側なのが30で左側にあるのが45だ。その後も4×4など多くのモデルを送り出すが、中には実験的電気自動車、エレットラも存在した。
2代目パンダ
2003年にデビューし見事、欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した2代目。前年にお披露目されたコンセプトカーはシンバ、翌年発表された市販型はジンゴと呼ばれたが、トゥインゴに発音が似ているとパンダになった経緯がある。100HPやファッション系コラボなど、様々なモデルを生み出した。
3代目パンダ
2011年デビューということで10周年となる3代目パンダ。何度かマイナーチェンジを繰り返しているが、2020年初頭に500と共に発表された左のハイブリッドは大きなニュースだろう。500に続き、ピュアEV 誕生の噂もある。もう1枚は40周年記念で発売された90台限定のパンダ・コンフォート。