OTHERS

<その他コンテンツ>
ニューカー、ヤングタイマー、クラシック、オーナー、ライフスタイル、
カタログ、100ドロ、ミニカーなどなど
CLASSIC&YOUNGTIMER

理性が吹き飛ぶ刺激を求めてMORGAN 3 WHEELER SUPER SPORT

身の丈に合ったモデルの中から事前に知識を蓄えて、理性的にクルマを選ぶ楽しさもあるが、ここは欲望のまま所有したいクルマ思い描き、浮かび上がったモーガン3ホイラーを紹介する。独特のドライバビリティや機構をそなえた3ホイラーを飼いならせるとしたら……。その瞬間の興奮と高揚を思い浮かべるだけで理性は吹き飛び、所有へ一歩踏み出したくなる。

TEXT / 中本健二 PHOTO / 前田恵介
SPECIAL THANKS / オートモービルアシスト・ブレス(https://themotorbrothers.com/special-shop/12731

理性が吹き飛ぶ刺激を求めて

市場に出回ることは稀で、ここで紹介する個体の様にエンジンが掛かる状態の3ホイラーとなれば希少性はさらに増す。エンジンはJAP製で3速M/T仕様。ボディ形状はバレル(樽)タイプで、テールエンドにスペアタイヤを搭載する。ブレス代表の加藤さんによると「経年変化がみられる箇所を手直しして、仕上げた状態での販売を当初考えていたのですが、現状でも問題はないので新しいオーナーとどこまで仕上げるかを相談して決めようと思っています」とのこと(取材時)。

モーガン社の創始者H.F.S.モーガンが生み出したプリミティブなスポーツカー『3ホイラー』。金属フレームと木骨を組み合わせた、生粋のスポーツカーを生み出すモーガンにとって、それはオリジンといえる。2011年に3ホイラーの復活が宣言され市販化されたが、ここで取り上げるのはハーレー製エンジンではなくJAP製Vツインを搭載する1933年式だ。

3ホイラーは、前輪2輪に後輪1輪での成り立ちで、無駄を省いたというよりも、当時のイギリスでの優遇税制の適合範囲内で、走る楽しさを追求したモデルともいえる。いわば、スポーツカーをいかに安価に作れるかへの挑戦だ。日本に於ける軽自動車のプライオリティが安価であることとパッケージング、ではなく走りに振れていたら3ホイラーのような(4輪だからセブンとなろうか)が誕生していたかもしれない。

「怖いなぁ」というのがモーガン3ホイラーを目の前にしての偽らざるコメントだ。厚化粧で本性を隠した雰囲気とは無縁で、素の良さをヒシヒシと感じさせる。ベースが良ければあばたもえくぼなんて強がりを言う必要もないのだ。佇まいの良さ、そしてシートを剥ぐってみても粗を見せるどころか、美しい木骨コンディションに、もはや片足からめとられたような気分になった。今買わずして、いつ買うんだ、と。

私がモーガン3ホイラーを初めて間近で見たのは、カー・マガジン434号で河口湖に集った4台を紹介した時のこと。その記憶は今も鮮明で、コーナーを前触れなくスパッと駆け抜ける姿に見とれた。ロールや溜めがなく鋭利な刃物を想起させるほどだ。ペースが上がるにつれて、リアの挙動が不安定となるがそれを抑え込むドライビングスタイルも初めて見るものだった。モーターサイクルのエグゾーストノートを響かせながら、低く構えた3ホイラーが次々と走り去っていく姿はどこか現実離れしていた。所有するクルマがクローズドボディで、適度にロールを伴い駆け抜けるスタイルであることも、気になる存在として拍車をかけたのかもしれない。

その後、イベントなどで見る機会はあったが、販売車両として店頭に並んだ姿を見るのは初めてだ。この車両を販売するオートモービルアシスト・ブレス代表の加藤さんによると、ボディの状態が良く、さらにエンジンが掛かる状態で売りに出ることは非常に珍しいとのこと。これは、個体数が少ないことに加えて長年ガレージに保管されて放出されること自体少なく、また手放すとしても良好な個体は「手放すときは一声」と先に話がついて、個人間でやり取りされるケースがほとんどのためだ。

これから細部の状態を見極めていくそうだがエンジンが掛かることは確認済み。同社の販売車両は価格が明示されているが、この3ホイラーについてはASK(取材当時)となる。その理由は、当初は仕上げて販売する予定であったが、タイヤや塗装などに経年変化が見られるものの致命的なダメージはなかったため敢えて手を加えておらず、新しいオーナーとどの程度仕上げていくかによって価格が変わるためだ。

80年以上も前の個体を扱えるのか。フットペダルではなく、ステアリングに備わるレバー式のスロットルを的確に操作しつつ、ダブルクラッチでノンシンクロの3速M/Tをスムーズに駆使できるのか。そもそも、チョークや進角を適正に操作してエンジンを始動できるのか、など不安要素を上げ始めればきりはない。しかし、脳裏に焼き付くドライビングスタイルを思い起こせばそんな不安は霧散する。

幸か……、いや不幸なことに取材日はあいにくの大雨で、外に出してエンジンを始動させるとは叶わなかった。ずっと頭の片隅にあっただけに、種火が灯ったなら理性は一気に吹き飛び、両足、いや体全体をからめとられていただろう。

モーガンでは当たり前だが、ボディは鋼管と木骨で構成される。シートを剥ぐると木骨の状態を確認できるが、腐食などはなく非常に良好に保たれていた。ブレス代表の加藤氏も、これほど状態の良いクラシック・モーガンは希少とのこと。
ノーズ先端に水温計が備わる。当時のオプションでコウノトリなどのマスコットが用意されていた。
エンジンはJAP製Vツインで、アマル製のキャブレターが1基備わる。
シートコンディションは良好。ドアがないため乗降には慣れが必要だ。オーナーであればスマートに決めたい。
ブレーキはドラム式で、フロントサスペンションは上下ふたつのスプリングを持つモーガン伝統のスライディング・ピラー式で、リアは1/4楕円リーフ式。