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自動車とオモチャの分水嶺をさまようMG MIDGET Mk.III

趣味のヒストリックカーとしては定番中の定番のひとつ、自分の周囲でも多くの友人が乗っていた"スプリジェット"。気が付けば、最近街中で見かける事もめっきり減って来たが、それでも今ならばまだ間に合う"元祖・ライトウェイトスポーツ"との暮らし。

TEXT / 長尾 循 PHOTO / 田中秀宣
SPECIAL THANKS / ガレージモーリス(http://garage-morris.co.jp/)

自動車とオモチャの分水嶺をさまよう

白いハードトップも当時のもの。オリジナル度高し。まごうかたなき”ホンモノの”ライトウェイト・スポーツカー。自分が学生だった頃の中古車価格を思い出すのはナンセンス。むしろ、一生ものの買い物としては安い。

打ち合わせなどで私がBowさんのガレージを訪れると、必ずと言っていいほど「今、どんなクルマが気になっている?」という話題になる。

私がまだ”スクラン”の読者だった時代から本誌の表紙画を手掛け、さらにそのずっと前からトライアンフTR3Aに乗っていたBowさん。最近のハヤリはどうだか知らないが、私は昔から”クルマ好き”とは本来そういうものだと思っている。だから私も”便利”や”お得”という基準ではなく、”昔から乗ってみたかった”という基準だけで最初のクルマを探し、それを手に入れたのだ。もちろん年季の入ったBowさんの”クルマ好き”振りには到底及ぶべくもないが、まぁ、平たく言えば私はそのまねっこをしているわけである。

というわけでずっと長い時間、旧い英国製オープン2シーターを維持していて、もうそういう状態が日常となっているふたりなわけだが、それでも事あるごとに「今、どんなクルマが気になっている?」なのである。懲りないというか何と言うか。

そんな私が今回”セブンはそのまま自宅に居続けるとして、ちょいとした浮気ゴゴロでもってお付き合いしてみたいお相手”として取り上げたのは、MGミジェット。編集部からもほど近い、クラシック・ミニの専門店『ガレージ・モーリス』さんで見つけた、程度極上のMk.Ⅲがそれ。

もともと歴代のMGミジェットは、姉妹車のオースチン・ヒーレー・スプライトと共に、ミニやビートル、2CVやチンクエチェントと同じくらい、趣味のヒストリックカーとしては定番中の定番だったはずで、実際私の周囲にも、ひと昔前までは常に2〜3人のスプリジェット・オーナーがいたのだが、そう言えば最近では街で見かける機会も減って、実はそのことも気にはなっていたのである。久しぶりにじっくりと見るミジェットは、やはり魅力的だった。

ごく大雑把に言えば、MGミジェットとそのベースとなったオースチン・ヒーレー・スプライトの構造は、1958年にデビューした最初のモデル、オースチン・ヒーレー・スプライトMk.Ⅰからラバーバンパーを備えた最終モデルの1978年のミジェット1500まで基本的には同じ。”カニ目”と呼ばれたシンプルでユニークなスプライトMk.Ⅰは1961年にモデルチェンジを行い、万人受けするエクステリア・デザインに改められると同時に、新たにリアのトランク・リッドが設けられるなど、より実用性を増した”Mk.Ⅱ”に進化。ほぼ同時に、BMCお得意のバッジ・エンジニアリングによってMGミジェットMk.Ⅰもデビューし、以後、この姉妹車はその名前をまとめた『スプリジェット』という愛称で、世界中のクルマ好きにライトウェイトスポーツの魅力を伝え続けたのは皆さんもよくご存知の通り。

その後の20年にも及ぶ生涯の中で、スプリジェット一族はエンジン排気量の拡大、ダンパーやスプリング、ブレーキなどの近代化、モデル末期には排気ガス規制や安全対策に追われるなど、様々な改良が加えられていったが、現在のヒストリックカー趣味の世界では、やはり年式が旧いモデルほど珍重され、中でも一族のルーツであるカニ目の人気は別格らしい。逆に、スプリジェットが本来持っていた軽快感を多いにスポイルしたと言われ、マニア筋ではあまり評判がよろしくなかったラバーバンパー・モデルの多くは、今ではメッキバンパーにコンバージョンされていたりする。

ともあれ。それにしても、スーパーセブンとMGミジェットの組み合わせ? まぁ、確かにどちらも基本設計古めのオープン2シーター・スポーツ。よりによって何故同じ様なクルマを? という疑問はごもっとも。しかしこれがスプリジェット一族の中でもカニ目とか、スプライトのMk.Ⅱ、ミジェットのMk.Ⅰとかではなく、ミジェットのMk.Ⅲというのがミソ。Mk.Ⅳならなお良かったかも、というココロ。

つまり、初期のカニ目とセブンではどうしても”プリミティブなピュア・オモチャ”としてのキャラクターが被るが、時代と共に進化していったMk.Ⅲとか Mk.Ⅳといった後期のスプリジェットであれば、”日常使いもこなせる、ちょっと旧い自動車”という棲み分けが成立するのだ。少なくとも自分の頭の中では。そういった意味では、かつてはあまり好みではなかったラバーバンパーの1500を、全くのノーマルにハードトップをつけて乗りこなす、なんてスタイルだってアリだと思っている。

そんな話をBowさんとしていたら、「いやぁ、ナガオ君、その気持ちはものすごくよくわかるよ」「セブンってどこまで行ってもただのセブンだけれど、ミジェットはちゃんとした自動車なんだよね」「高年式のミジェットだったら、全然フツーに使えるよ」と、激しく同意されて、そんな大先輩の言葉に、私はまさに我が意を得たりと、なんだかとても幸せな気分になったのである。

戦前からの長い歴史と伝統に則ったフロント・グリル。
いまや滅多なところでは出会えないセンターロックのワイヤー・ホイール。
巻き上げ式のサイドウインドーや三角窓。
きちんと使えるトランク・リッド、さらには不安の無いパーツの供給状況など、”日常生活に使える古典”としての資質が申し分無いMk.Ⅲミジェット。
さらに近代化が進められたMk.Ⅳや、ラバーバンパーの1500も、今回の様な主旨のクルマ選びとしては、もちろん多いにアリ。