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自動車型録美術館

デイムラー・リムジンDAIMLER LIMOUSINE

古今東西の自動車カタログをご紹介します。

TEXT / 板谷熊太郎

モンティパイソンを生んだ英国らしいカタログです

今回は英国で最も古く、英王室最初の御料車として認められたデイムラーです。英国らしく少し毒を含んだウィットのあるカタログをどうぞ。

デイムラーと王室

英国は階層によって乗るべきクルマが決まっているような社会です。たとえば首相はジャガーまで。映画でもそのあたりはよく描かれていて、『パトリオットゲーム』にでてくる英王室ゆかりの人物は、デイムラーのリムジンを使用していました。

そのような英国において最初に王室が購入したクルマがデイムラーです。1900年のことで、1902年には王室御用達になっています。デイムラーと皇室

英王室を範とした日本の皇室でも、1912年に皇室初の御料車としてデイムラーを導入しています。その後も、1953年に、時の皇太子殿下、現在の天皇陛下がエリザベス二世の戴冠式列席のために英国を訪問された際、デイムラーをご購入、ただし、これには国民からの批判の声も多く、以後9台ものプリンス車を乗り継がれる遠因となりました。

デイムラー・リムジン

このデイムラー・リムジンDS420は1968年から1992年までの長きにわたり生産されています。デイムラーは1960年からジャガーの傘下にあり、ベースとなっている車両は、ジャガーの420Gです。今回ご紹介するカタログにはブリティッシュレイランドの印がありますので、初期のものと思われます。

(初出カー・マガジン465号/連載第13回)

まず、このカタログサイズが実に微妙です。デイムラー・リムジンのベースとなっている同時期のジャガー420Gのカタログと重ねてみると、デイムラーの方が縦方向に2mmほど大きいのです。これはまるで、エンジンをはじめ内外装以外は全てジャガーになってしまったデイムラーを象徴しているかのようです。ただし、カタログ自体は斬新です。高級車が高級たる所以は、価格でもエンジニアリングでもなく、誰が乗っているかで決まるのだ、とまさに真髄をついた内容になっています。『黄色いロールスロイス』という映画でも、ロールスロイスの販売店を訪れた顧客は、エンジンなど全く興味なさそうでした。このカタログ、最後まで生真面目につくらないところが英国の面目躍如です。

●サイズ(縦×横)209mm×299mm ●全12ページ

デイムラーのリムジンが参りました。どうぞお乗りください。と書かれた表紙で始まるカタログには、後席乗員が4例ほど挙げられています。最初は硬直化した英国そのものを表わしたようなふたりで、これはいわばメートル原器のような位置付け。次は多分ビジネスマン。当時ロンドンの経済界はユダヤ系が牛耳っていました。3番目はおそらく米人。女性の着座位置や何より風体でそれと知れます。最後は日本人ご一行。あえて解説は控えます。

プロフィール●板谷熊太郎
幼いころからのクルマ好き、実車よりもカタログや書籍などの紙モノに魅かれる変わり者。カー・マガジンの『自動車型録美術館』の他、姉妹誌モデル・カーズにも『自動車博物記』を連載中。