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クルマとドライバーの最適な距離FIAT PANDA CLX

イタリアンベーシックカーの筆頭に挙げられることの多いフィアット・パンダには、ユーザーが望むものをなんとなく想定して盛り込むのではなく、デザイナーがコストダウンに真っ向から挑戦して出した明確な回答が盛り込まれている。制限は多く厳しいほど傑作は生まれる、そんなことを感じさせる1台なのだ。

TEXT / 中本健二 PHOTO / 前田恵介
SPECIAL THANKS / アウトパンダ(https://themotorbrothers.com/special-shop/12917

クルマとドライバーの最適な距離

コストダウンを達成するため、直線と平面で構成されたスタイリングが良く分かる。見た目のサイズ以上に広い車内空間が、簡素な装備によるものだとすれば大いに歓迎したくなる。

週末にわずかな時間を共に過ごすだけで満たされるクルマ。一方、毎日使いたくなるクルマ。ここで取り上げたパンダはまさに後者であり、オドメーターの数値が上がる程、オーナーとクルマが馴染む感覚を体感できる。

“大衆車”という響きから特別な何かを感じることは難しいが、ポピュリズムとは異なりデザイナーの意図がハッキリと込められたパンダは、それが明快かつシャープであるため時代を超える資格を有した。逆に、想定ユーザーが求めるものをとめどなく詰め込んだクルマは、デビューと同時に”過去のモデル”となり淘汰されてきたことは時代が証明している。

1980年に登場したパンダは、2003年に2代目となり、現行モデルは3代目となる。ここで取り上げたのは初代の1100ccエンジンを搭載するCLX。ジョルジェット・ジウジアーロがデザイン、そしてパッケージングまで手掛けたことは、これまで本誌でも幾度となく紹介してきた通り。そして、大衆車として徹底した合理化、コストダウンを命題として作られていることもご存じだろう。そのため、装備は必要最小限。しかし不要な装備がないため、車内空間は意外なほど広い。加飾はなくシンプルだが、オーナーとなって付き合えば、なるほどと感心させられる創意工夫の塊だ。

もちろんパンダの魅力は使い勝手だけではない。一般道はもちろん高速道路、そして近距離、長距離でも不満なく移動できる。遮音材は最小でエンジン音は車内へ入ってくるが、むしろダブルサンルーフを開け放ち、風切り音も加えて鼻歌交じりでドライブを楽しみたくなる。5速M/Tのシフトの感触に色気を望むことはできないが、どのポジションに入っているかは明快だ。レブカウンターは備わらないが、シフトタイミングはよほど鈍感か初心者でなければ間違えることはない。電子の膜は介在せず、ドライバーとクルマの距離感が実に心地良い。

初代パンダは、最後期モデルでも生産から10年以上が経過しているため、プラスチックパーツは硬化し、ヒビや割れが見られることもあるがまだ復活可能だ。CVTを搭載するセレクタも、たとえ壊れたとしてもマニュアルへ乗せ換えるという選択肢もある。取材に協力いただいたパンダ専門店アウトパンダの下江さんによると、「ペダル類なども変える必要がありますが、ベースがM/T仕様なのでもとに戻すといった感じですね。もちろん手間はかかりますが、作業が滞るといったことはありません」とのこと。

専門店の豊富な経験から、頭に浮かんだ思い付きのような質問でも的確に応えてくれて、またアドバイスも受けることが出来る。ちなみに、パーツの供給は複数のルートを確保しているため大きな問題はないそうだ。しかし、部品取り車やベース車は減る傾向にあるため、昔に比べると販売可能な状態のパンダを定期的に用意することは難しいようだ。次の仕上がりは未定だが、乗りたいと思ったオーナーはこまめにチェックしてその思いを実現させている。 “クルマの白物家電化”とは面白みがなく均一化されたクルマを揶揄して言われる言葉だが、”冷蔵庫のような電化製品”をイメージして、ジウジアーロが生み出したパンダはそれらと一線を画す。オーナーの生活に寄り添う大衆車だが、長い時間をかけてその真価とデザイナーのメッセージに迫りたくなるのだ。

1100ccの4気筒エンジンは、ドライバーを興奮させる官能的な音、強大な出力はないが、意のままに操り、パワーを全て使い切る楽しさがある。スペアタイヤはエンジンルーム内に納まる。
インパネ内の計器は必要最低限の情報、そしてイラストも交えて表示するシンプルなモノ。レブカウンターはないが、エンジン音や振動からシフトタイミングは把握できる。
取材車はCVTのセレクタからM/Tへ乗せ換えられていたが操作に不具合ない。吊り下げタイプのエアコンユニットは、正規輸入モデルの方が並行モノより整備性、機能とも上のようだ。
お勧めはやはりダブルサンルーフ付き。この解放感は一度体感すると納得のはず。特にボディが弱い訳ではなく、幌の構造はシンプルなため張り替えは簡単。2枚目の写真はスチールルーフだ。
凝ったところはないが、座るとなぜか落ち着くシート。ポップなファブリックのデザインも魅力だ。
後席スペースは広大ではないものの大人でも乗ることのできるスペースが確保されている。
ラゲッジスペースは、底面だけに薄いビニールが引かれており、側面は鉄板がむき出し状態とここにも割り切りがみられる。
スペアタイヤはエンジンルーム内にあるため活用可能なスペースは広い。