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完熟欧州のCセグ・ハッチバックVOLKSWAGEN GOLF & PEUGEOT 308

2020年もSUVブームと言われたが、果たして本当か? 8代目が欧州デビューしたフォルクスワーゲン・ゴルフは最多販売台数モデルの座を守り、今年はプジョー308も次世代へ進化した。昨年はBセグ・ハッチバックが豊作だったが、今年はCセグ・ハッチバックがひときわ熱いのだ。フルモデルチェンジを控え完熟した欧州Cセグ・ハッチバック、その到達点を今一度、確認する。

TEXT / 南陽一浩 PHOTO / 神村 聖
SPECIAL THANKS / フォルクスワーゲン グループ ジャパン

完熟欧州のCセグ・ハッチバック

かたやフルレザーシートの豪華仕様で価格374万円の『フォルクスワーゲン・ゴルフTSIハイライン・マイスター』と、かたやエントリーグレードベースのお徳用パッケージ仕様で価格308万2000円の『プジョー308ロードトリップ』ゆえ、直接比較の遡上にはのせづらい。しかし2013~2014年に、半年少々のギャップを挟んでデビューした欧州Cセグ・ハッチバックの俊英2車であり、いずれも日本市場は2021年が最後。そんな最終熟成モデルたちである(注:取材は新型ゴルフのデビュー前です)。

VWゴルフ7は歴代ゴルフがそうであったように、定番として進化を運命づけられ、欧州市場でベストセラーの地位を保ち続けた。対してプジョー308は2014年の欧州COTYを皮切りに、先代までと一線を画すほどの高評価を手にした。事実、その3年後には同じEMP2プラットフォームの3008がSUV初の欧州COTYを獲得。SUVブームとはいえ、基幹モデルたる5ドア・ハッチバックの出来は、その成否を左右する。

VWグループとPSAグループは、欧州の販売規模で常に1、2位を占めるが、2020年実績ではざっと250万台vs150万台と、差は大きい。だがステランティス・グループが成立した今、フィアット&クライスラーの約65万台を加え、ポルシェなどハイエンド分を差し引くと、VWの王座は以前ほど安泰ではない。そしてBセグと並んで量でも質でも核となるのは、やはりCセグ・ハッチバックなのだ。

以上を前提に2021年の東京でゴルフ7と308を乗り比べると、優劣以上に個性の違いに驚かされる。まず機能コントロールやドライビングインターフェイスといったコックピットまわりの意匠からして、古典的で理性的なゴルフと、未来的で感覚的な308は対照的だ。操作系でドライバーを囲い込むことで、ゴルフはオーナーたるドライバーを立ててくれる雰囲気。一方の308のiコクピットは手元の小径ステアリングとペダルが主役で、目の前の道路に心置きなく集中せよといわんばかりのミニマルさ。ドライバーズカーを目指すのは同じでも、その表現がこれだけ異なるのだ。

エルゴノミーの考え方も甚だ異なる。ゴルフは前席内側のドアハンドルの先に固いプラスチックがあって、閉める時に爪がカチリと当たりやすい。308はこの辺りはこだわっていて、ドアパネル側で手の甲から指先が当たりそうな部分がカーブしており、パッドで柔らかく包まれる。ところがリアシートでは、軍配はゴルフに高らかに上がる。308を含めハッチバックもSUVも量販クラスのクルマは大抵、リアシートとサイドシルの中間、Cピラーの下部カバーが硬質樹脂なのだが、ゴルフはここにもレザーを張っている。深めに抉られたリアシートの座り心地とホールドのよさも、ゴルフの全方位的な気づかいが光る部分だ。

動的質感も独仏それぞれに図太く、方向性もしくは嗜好が鮮明に出ている。車重はゴルフが1320kg、308が1270kgだが、50kgの差以上に、ゴルフのどっしりと丹念に路面を捉えるような重厚なロードホールディングが際立つ。それこそ高速道路で速度域を上げた時のスタビリティは、水を得た魚というか、大型の回遊魚が突き進むかのよう。今のVWらしく弱アンダーステアを主張するでもなく、操舵に対する回頭性は素直で従順。微低速の小入力でも不整ギャップを拾った時の大きな入力でも足さばきが落ち着いていて、無駄な動きがとにかくない。SUV慣れした乗り手にはデトックス作用すらありそうな、澄みわたるように心地よいドライバビリティだ。

一方の308はあくまで軽快でスムーズで、しっとりしたロードホールディングの質はビロードのよう。姿勢をフラットに保つことにかけてはゴルフに譲るが、ライド感の滑らかさとフロアまわりのノイズの少なさでは308が優る。

いずれ、ハッチバックの競争レベルと完成度のこれほどの高さを目のあたりにすると、余裕と見えたものが実は余剰でもあるFFのクロスオーバーSUVが、割高な派生ボディに人気が流れ集中し、敢えて選ぶものではあっても必要に迫られた代物ではないことを痛感せられる。欧州で8代目のデビュー早々から矢継ぎ早に様々なモデルを投入するゴルフの、永遠の王者ゆえの難しさはそこにある。あるサッカーのスター選手の言葉だが、点を取って賞賛されるのが並の選手で、点が取れない時はおろか試合のない日も批判されるのがスターの宿命だ、と。ゴルフは毎世代の各モデルが、それに当たる。

308は確かに欧州Cセグの有力オルタナティブとして力をつけ認められたが、まだゴルフのライバルの中で頭ひとつ抜けたに過ぎない。ゴルフの本当の敵は、実はID.3のような身内の新たなEVかもしれないし、むしろCセグ全体にとってルノー・ルーテシアのように完成度を高めたBセグ・ハッチバックかもしれない。その答えは次の数年で出るはずだが、内燃機関の生活車として今、欧州Cセグの代表格2台が欄熟を迎えていることは確かである。

コックピット:ダッシュボードとセンターコンソールの上下繋がりの一体感が強く、ドライバー側にチルトしたゴルフは囲まれ感重視。その集中コントロール性によってドライバーズカーであることを主張する。どっしり握りが太く、中央のマスも少ない3本スポークステアリングも古典的だ。一方の308はセンターのタッチスクリーンこそドライバー側に傾けられるが、物理ボタンや表示情報の量を抑えてドライビングに集中させる造り。理性より本能に訴えかけるタイプだ。
シート:今回は308がADAS充実の特別仕様車でゴルフはハイエンド仕様だったため、シートの素材感、質感で差がついた。シート座面がフラットで長くサイドサポートも立ち気味のゴルフは、乗り手がシートにヒップを嵌め込む感覚。逆に308は、サイドサポートの張り出しを気にせず乗り込め、腰回りが曲線で包み込まれる着座感だ。ドライビング姿勢は、腕を下ろし気味に少ない舵角で操れる308に対し、ゴルフは小さ過ぎずクイック過ぎずの操舵感が得られる。
エンジン:308の1.2リッター直3ターボ130psは3気筒らしからぬ音質と振動の少なさだが、1500r.p.m.という低回転域早々から最大トルクを絞り出すゴルフの1.4リッター直4ターボは音質ごと力強く分厚い。ただシフトまで含めると、308のピュアテック130+アイシンAWのトルコン8速A/Tの方がリニアで扱い易くもある。ゴルフの7速DSGは変速の歯切れよさとダイレクト感はそのまま、スムーズさが改善されたが、DとRつまり前進、後進の切り替えでややギクシャクする嫌いがある。
タイヤ&ホイール:試乗車のゴルフT S I ハイライン・マイスターは225/45R17、銘柄はブリヂストンのトランザ。対する308 はベースグレードのアリュール同様の205/55R16、ミシュラン・プライマシー4を履く。17インチvs16インチの違いは乗り味にそのまま反映されていて、ゴルフは操舵レスポンスも横方向の動きもソリッドで至極ナチュラル。対する308は縦方向には鷹揚で、小径ステアリングも手伝ってダルな感覚は無いが、人によってはGTラインの17インチを好むだろう。
ラゲッジスペース:道具性という点では、荷室開口部が左右下端までスクエアで荷物が出し入れしやすく、室内に回らずともリアシート裏からトラップが開閉できてトランクスルーにしやすいゴルフ7の使い勝手がすこぶるいい。だが純粋な荷室容量ではゴルフ7の380リッターに対し、308が420リッターで上回る。あまつさえ、ゴルフの荷室フロア下はパンク修理材のみだが、16インチ仕様の308はテンパータイヤを積んでいる。リアシートを倒した時のフラット性は、僅かにゴルフが上回る。

SPECIFICATIONS
プジョー308ロードトリップ
●全長×全幅×全高:4275×1805×1470mm
●ホイールベース:2620mm
●トレッド(F/R):1555/1555mm
●車両重量:1270kg(アリュール)
●エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ
●総排気量:1199cc

●内径×行程:75.0×90.5mm
●最高出力:130ps/5500r.p.m.
●最大トルク:23.5kg-m/1750r.p.m.
●変速機:8速A/T
●懸架装置(F/R):マクファーソンストラット/トーションビーム
●制動装置(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
●タイヤ(F&R):205/55R16
●価格:308万2000円

SPECIFICATIONS
フォルクスワーゲン・ゴルフTSIハイライン・マイスター
●全長×全幅×全高:4265×1800×1480mm
●ホイールベース:2635mm
●トレッド(F/R):1535/1510mm
●車両重量:1320kg
●エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
●総排気量:1394cc

●内径×行程:74.5×80.0mm
●最高出力:140ps/4500~6000r.p.m.
●最大トルク:25.5kg-m/1500~3500r.p.m.
●変速機:7速A/T(DSG)
●懸架装置(F/R):ストラット/4リンク
●制動装置(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
●タイヤ(F&R):225/45R17
●価格:374万円(取材時)