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イタリアンデザインで包み込んだ、刺激的なツインカムFIAT RITMO ABARTH 130TC

"130"は馬力、"TC"はツインカム、もしくはツーリングコンペティションの略と言われるが、これに加えて"Abarth"の名を冠したこの高性能ハッチは、パワーユニットの個性で他を圧倒する。心をざわつかせる力強さを感じる、2基のウェーバーを組み合わせたランプレディ・ツインカムが、ステアリングを握る者にトラディショナルなスポーツフィールを堪能させてくれるのである。

TEXT / 清水雅史 PHOTO / 山本佳吾
SPECIAL THANKS / Lusso Cars(https://themotorbrothers.com/special-shop/12689

イタリアンデザインで包み込んだ、刺激的なツインカム

数少ないコンパクトハッチ

その2リッター・エンジンの燃料供給は、キャブレターが司る。取材車にはウェーバー40DCOEが2つ、真っ赤なエアクリーナーボックスの奥へ隠れるように収められていたが、ほかにソレックスCA40ADDHE×2の場合もあった。

フィアット・リトモが登場したのは1978年だが、130TCがラインナップに加わったのは1983年のこと。例えばフォルクスワーゲン・ゴルフGTIやプジョー205GTiがそうであるように、高性能を謳うモデルがこぞって電子制御の燃料噴射を用いモアパワーを手に入れていた時代だ。キャブレターならではの少しラフなアイドリング、スロットルを勢いよく開けたときに耳に届く吸気音、そしてダイレクトなレスポンス。ツインキャブ+DOHCエンジンを搭載したリトモのホットモデル、アバルト130TCは、そういった味わいを心ゆくまで楽しむことができる、当時としても数少ないコンパクトハッチだったのである。

リトモはフィアットの傑作FF車、128の後継車として開発されたが、1974年デビューのゴルフの成功に大きな影響を受けたと言われる。確かに1978年のトリノショーでベールを脱いだそのフォルム、とくに後ろ姿にはゴルフIの面影が重なる。けれど、表情豊かなフロントフェイスや、「やっぱりイタリア車!」と思わせるスタイリッシュなインテリアなど、いま振り返ってもポップでキュートなデザインはじつに魅力的だ。デザインはベルトーネ。3ドアと5ドアが用意された3ボックスデザインは、実用性をきっちり押さえつつ個性を巧みに演出している。

意欲的なデザインが象徴するように、フィアットはリトモを新世代のモデルとして位置づけていた。それまでのコードナンバーから新しい”名づけ方”に変更したのもその現れだが、ボディの組み立て・溶接・塗装を全自動で行うロボガーテ(Robogate)と呼ばれる生産システムの導入も大きな話題になった。未来へとつながる大きな期待を背負ったモデルだったわけだが、エンジンとトランスミッションを横一列に並べたジアコーサ式FFレイアウトや、フロント:マクファーソンストラット+コイル、リア:ストラット+横置きリーフスプリングのサスペンション形式など、メカニズムの多くは128から受け継いでいた。エンジンは当初1.1(60HP)、1.3(65HP)、1.5(75HP)リッターの4気筒ユニットを用意しており、のちに1.6リッター・ツインカムを搭載した上級版、リトモ105TCがラインナップに加わっている。

エンジンを味わうホットハッチ

実用3ボックスとしての魅力を磨き上げて登場したリトモだったが、発売後まもなくモータースポーツの世界でも見かけるようになった。活躍の場はラリーフィールドだ。ワークス活動も含めイタリア国内ラリーからWRCまで、幅広く参戦。アバルトの名を冠したリトモには、そのモータースポーツにおけるノウハウが活かされていると言われる。よりスポーティな味付けが与えられ、少しだけ尻下がりになったサスペンション・セッティングなど、高性能バージョンらしいスパイスが随所にふりかけられているが、なんと言っても注目は、2リッターユニットを搭載していることだ。

初お目見えは1981年。リトモ・アバルト125TCのネーミングが与えられ登場する。キャブレターはツインチョーク・ウェーバー34DMTR51がひとつだったが、アバルト製ピストンやハイカム、マレリ製CDI等の採用で、最高出力125ps/5800r.p.m.、最大トルク17.5kg-m/3500r.p.m.を発揮し、小粋な実用ハッチのイメージを大きく変えることになる。そして、このモデルをさらに超えるパフォーマンスを与えられたのがリトモ・アバルト130TCなのだ。

リトモシリーズが1982年に内外装を刷新するビッグマイナーチェンジを行った翌年に、130TCはデビューする。冒頭に記したようにウェーバーもしくはソレックスのツインチョーク・キャブレターを2連装し、マレリ・ディジプレックス・イグニッションを採用するなどして、130ps/5900r.p.m.、18.0kg-m/3600r.p.m.を実現。軽量化もあいまって0-100km/h加速8.0秒、0-1000m加速29.4秒、最高速度190km/h以上という動力性能をマークした。

1995ccの排気量を持つこのエンジンは、フィアット・ツインカムと呼ばれる一連の4気筒DOHCユニットの仲間で、開発したアウレリオ・ランプレディの名をいただいてランプレディ・ツインカムとも称される。1966年に124に搭載され世に出た歴史に残る名作だが、ツインキャブを得て力強さを印象づけたこの2リッターユニットこそ、リトモ・アバルト130TCのキャラクターを決しているといっても過言ではない。

イタリアの納屋で長らく眠っていたという驚きのオリジナルコンディション、本国仕様モデルのボンネットを開け、じっくりエンジンルームを眺めていたら、もう20年も前にワインディングを駆け抜けた思い出が鮮やかによみがえってきた。ずっしり手応えのあるステアリングフィール、グッと肩を押されるようなトルク感、胸のすくウェーバーの咆哮……。新世代を感じさせるデザインの中には、自ら操るというクルマが持つ本来の楽しさが詰まっていたのである。

フィアット・リトモとは?

1974年から1988年まで、長期間生産されたコンパクトハッチ。丸目2灯ヘッドランプと非対称グリルの組み合わせが斬新だったが、1982年にマイナーチェンジを実施し後期型へ移行。取材車のような4灯フェイスに刷新されたほか、その後長らくフィアット車に用いられるグリルの5本ラインも後期型で初採用されたものだ。
エンジンとトランスミッションが横一列に収まるエンジンルームは、真っ赤なエアクリーナーボックスと黄色い樹脂製タイミングベルトカバーが目を引く。バルクヘッドとエンジンの隙間から下を覗くと、純正装着される4-2-1タイプのエキゾーストマニフォールドを確認することができる。
サソリのエンブレムとABARTHの文字を配したエアクリーナーボックスの奥にウェーバー40DCOEキャブレターが2基。フィアット・ツインカムを楽しむにはこの上ない組み合わせだ。
エンジンルーム左側のバッテリーを固定するパネルからステーを延ばして取り付けられているのが、130TCで新たに採用されたマレリ製ディジプレックス・イグニッション。
マフラーは、乾いた心地よい排気音を奏でるマルミッタ・アバルト。レイアウトが少々ユニークで、前方から届くエキゾーストパイプがタイコの後部側に接続している。ちなみにスペアタイヤはつり下げ式だった。
専用の樹脂製オーバーフェンダーがグッと張り出し、185サイズのタイヤを収めた姿はなかなかの迫力。エアロダイナミクスに配慮してボンネットを大きくスラントさせることができたのは、ジアコーサ式のFFレイアウトを採用したからこそ。
リトモ・アバルト130TCは1983年にラインナップへ追加されたので、マイナーチェンジを経た後期型の特徴を持つ。天地にボリュームがあり個性的だった樹脂製前後バンパーがオーソドックスな形状に変更され、ヘッドランプやテールレンズもバンパーパネルに収まらないデザインになった。取材車両はイタリア仕様でリアライセンスプレートがバンパーに組み込まれているが、日本仕様はリアガーニッシュに取り付けられる。ルッソカーズがストックするこの130TCは当時の面影を忠実に残し、ビアンコ コルフ(BIANCO CORFU)のボディカラーもオリジナルペイントだ。
フロントグリルには、フィアットの新たなアイディンティティとして採用された5本ラインが中央にレイアウトされる。5.5×14サイズのクロモドラ・ホイールが標準で、ラウンド形状の別デザインもあった。ウインドー下に取り付けられたリアスポイラーは125TCと共通の”ABARTH”の証。左右端が持ち上がった独特のデザインが目を引く。
アバルト・ステアリングの奥には、各種警告灯のほか速度、回転、水温、燃料、油圧、油温、電圧の7つのメーターを収めたインストルメントパネル。グローブボックスを開けると大きな鏡とライトが顔を出す。イタリア車だということを再認識されられた。サイドサポートがしっかりしたフロントシートと、一括で折りたためるリアシートは、ブラックのファブリックにレッドのラインがスポーティ。年式によって黒×グレーカラーも設定されていた。

SPECIFICATION
フィアット・リトモ・アバルト130TC
●全長×全幅×全高:3980×1665×1375mm
●ホイールベース:2342mm
●トレッド(F/R):1440/1410mm
●車両重量:950kg
●エンジン形式:直列4気筒DOHC

●総排気量:1995cc
●ボア×ストローク:84.0×90.0mm
●圧縮比:9.4:1
●最高出力:130bhp/5900r.p.m.
●最大トルク:18.0kg-m/3600r.p.m.
●変速機:5速M/T