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シベリアで活躍する狩人UAZ HUNTER

「生きて帰るため」の性能を持つ軍用車のタフさは魅力的。氷点下50度にも達するシベリアの過酷な環境にも耐えるロシアの「ワズ・ハンター」は、旧共産圏製品特有の味わいにあふれた唯一無二の4WDだった。

TEXT / 遠藤イヅル PHOTO / 宮越孝政

ロシアや東欧の“東側”製品は、基本的に“西側”諸国の日本では流通していない。謎のベールに包まれていた冷戦時代では、その傾向はなお強かった。だが細々と入ってくる情報の中に「UAZ(ワズ)」のジープ型軍用4WD、「469」があった。西側製品とは明らかに異なる独特の雰囲気を持つ469は存在感があった。469は1970年代初頭から生産が行われたモデルで、シンプルで堅牢な設計によりメンテナンスや修理が容易なこと、過酷なロシアやシベリアの環境に耐えたことから、ソ連とワルシャワ条約機構加盟国が軍用車として使用していたほか、民生用にも提供された。

80年代になって、見た目はほぼそのままにアップデートして「3151」になり、2010年代に民生仕様がさらに進化を遂げて「ハンター」となった。実際の“型式”は「315195」で、この脈絡のない謎の付番方法や、多くが愛称名を持たなかったソ連製の乗り物らしく、かつてロシア製カメラを愛好していた筆者のような“共産圏製品好き”には大いに刺さる。ハンターを輸入するオートリーゼンは、ワズのバンモデルである「2206」も日本に上陸させているが、前述のように、かつてはどちらも日本で見ることは叶わなかったモデル。469=ハンターは過去に好事家がわずかに輸入していた数台のみだったので、ハンターが目の前に存在するという事実に大感激。ハンターからは、社会主義の共産圏製品では市場で売れるための努力が基本的に必要なかった……という、西側の製品開発とまったく異なるアプローチが強く感じられた。

このクルマを取材できる僥倖に興奮しつつ、いざハンターを観察してみよう。ハンターはそれほど大きくないと考えていたが、思いの外ボリューム感があって驚く。全体的には機能性重視なクルマだが、よくよく見ると、平板構成がメインなジープに比べると曲面が多用されていて、かなり凝ったデザインなのにも気づいた。特にボディ後部は“く”の字に造形されていて、冷酷なほどに機能性オンリーじゃないのが、ハンターの得難い愛らしさを生んでいるのだろう。その一方、前後ドア下半分が前後で共用、窓がスライド式なのも、コスト重視・機能重視な軍用車らしい。

乗り込んでみても、内装は軍用車の出自を隠そうともしない。内張も質素の極みで、ほんとうに必要なモノしかない。ステアリングホイールも、シフトノブも、鉄板に張り付いたメーターも「必要なものがあるべきところにある」というだけ。なんという潔さだろう。軍用車に求められるのは「生きて帰ること」なので、装備が少ないハンターでもクルマの情報を提供するメーターは合計で5つもある。ビニールレザー張りのシートも機能一徹。横開きの後部ドアを開けると、広いトランクスペースが現れるが、後部座席は分割可倒式となっており、2アクションで前方に格納すると荷室にさらに広い空間を作ることができる。

見た目をいい意味で裏切るのはエンジンだ。ハンターにはディーゼルとガソリンの双方が用意されるが、日本に入ってくるのは2.7リッターのガソリン車で、なんとこれがDOHC。燃料供給もマルチポイントインジェクションという現代モードで、始動やメンテナンスの心配がない。冷間時始動性にも優れるこのエンジンは、ロシアのZMZ(ザヴォルジェエンジン工場)製。2.7リッターガソリン版「ZMZ-409.10」は最高出力134.6psを発生する。最大トルクは22.1kg-mでこれを低回転域で発生するため、5速M/Tを駆使して走らせれば、1.9トン近い車重でも必要十分な加速を披露してくれる。

はっきり言ってしまえば、全体的な仕上げは21世紀のクルマとは思えないほどに懐かしい雰囲気だ。ハンドリングや乗り心地も、古典的なジープ型四駆の範疇に収まる。でも、ビニールレザーのシートとゴムフロアは汚れても気にせず洗えて、荷室の積載量も多く、無骨な中に愛嬌もあり、「レトロ調」ではなくホンモノのレトロデザインで、それでいてエンジンは扱いやすい。このように日本に数台しかないハンターは、他のクルマでは得られない価値に溢れている。いま新車でこれほどに「機能だけが形を作ったクルマ」もそう存在しない。だから、このクルマが唯一無二な存在であることに気づき、それを気に入って使いこなしたら、アウトドアシーンが似合う最高のパートナーになるだろう。ハンターは、氷点下50度にも達する過酷なシベリアでも活躍した軍用車というお墨付きを持つ。それは、クルマにヘビーデューティー&タフなど道具感を求めるユーザーのクルマ選びには、とても大きなポイントになることは間違いない。デビューが古く、いつ生産が終わってもおかしくないクルマでもあるだけに、今が手に入れるチャンスなのだ。

過酷なシベリアの環境に耐える
シンプルでタフな4WD

手を伸ばしたところにステアリングとシフトノブがあり、正面にはメーター類が並ぶ。メーター類が豊富というのが軍用車らしい。シフトレバー右の短いレバーは副変速機となる。

ビニールレザーなので汚れも気にならない、機能一徹なシート。装飾は二の次とばかりにフロントシートも簡素な作りだ。

同じくビニールレザーで機能性重視のリアシート。6:4分割可倒式となっており、足元はかなり広い。

古風な外観に比べ、エンジンルームの眺めは最近のクルマっぽい。ZMZ製2.7リッター直4ガソリンエンジン「ZMZ409.10」はDOHC(!)+マルチポイントインジェクションとの組み合わせで134.6psを発生する。

ボンネットの排熱スリット、高い位置に置かれた方向指示器などは、「デザインではなく機能が求めたカタチ」の発露。

床はゴム敷き。汚れてもざぶざぶ洗える。シートが立っている状態でも十分な荷室容量を誇る。

鉄ホイールに225/75R16サイズのタイヤという組み合わせ。タイヤは「KAMA-216」というロシア製のオールシーズンを履く。

前後ドアの窓はスライド式。何もかもが必要最低限という潔さ。

ドアヒンジは外側。カバーで覆われているのは“民生用”らしい箇所といえる。

レトロ感を増すシンプルなデザインのエンブレム。ワズのバンで、同じくオートリーゼンが輸入する「2206」にも装着されている。

前後ドアの間、左右にある給油口。タンクも左右にあり、容量はそれぞれ35リッターで合計70リッターとなる。

前ドアの形状、下の部分がカットしてあるのは、ドア下半分が前後で共用されているため。内張も質素の極み。

SPECIFICATION
UAZ HUNTER
全長×全幅×全高:4100×1730×2025mm
ホイールベース:2380mm
トレッド(F&R):1465mm
車両重量:1845kg
エンジン形式:直列4気筒DOHC

総排気量:2693cc
最高出力:134.6ps/4600r.p.m.
最大トルク:22.1kg-m/2500r.p.m.
サスペンション(F/R):ストラット/リーフリジッド
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤ(F&R):225/75R16