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雪国という必然から生まれた独自設計SAAB 900S

サーブというメーカーを覚えているだろうか? 北欧スウェーデンの大地で育まれたサーブは、過酷な冬の環境に対応すべく数々の独自設計に溢れている。日本でも80年代にヒットした初代900、通称"クラシック900"を通して、その心意気に触れてみてはいかが?

TEXT / 遠藤イヅル PHOTO / 近藤浩之

クラシック・サーブ900は1978年に登場。セダンは追って80年に追加された。いわゆる”尻下がり”なスタイルは全体の造形と合わせてサーブ900という独特のクルマのイメージを作る。

筆者は以前にもサーブをいくつか所持したことがある。まずはGM傘下でオペル・ベクトラをベースに開発された2代目サーブ900。3ドア、LHD、NA2.3リッターというレア度抜群の仕様だったが、不人気ゆえ当時の中古購入価格は38万円とリーズナブル。サーブらしい作りと乗り味、個性を残した内外装を味わえて大いに満足だった。

さらにそれより前、初代サーブ(クラシック)900にも乗っていた経験がある。赤いクラシック900ターボ16で、程度は抜群、走行距離も少なかった。でも持っていたのはたった1年ほど。なんで1年? というと、クラシック900は原設計が60年代ということもあってキャビンが狭くハンドリングも古いFFのそれで、トランスミッションは今や化石のようなBW製3速A/T。ギア比が悪く100km/hで3200r.p.m.を示すなど高速走行がツライ。ずっとフランス車に乗り長距離ドライブばかりしていた自分にはそれらが強く引っかかった。空調も温度調整がやたらに難しい。カタチは最高なのだが、乗るにはいろいろ我慢しないといけないクルマで、メインに乗るには(あの頃は)厳しかった。

先日、2代目サーブ900を買ったお店に車検で行くと、そこには売り物のクラシック900がいた。RHDの900S。900Sとは高性能版のターボ16ではなく、末期に追加された低圧ターボの中堅グレード。価格もターボ16の相場より断然安い。ソリッド紺の外装、青いモケットのインテリアもいい。車検代を頭金に……と”買い替えの正当化”が頭に巡る。結局僕はあまり迷わず買うことにした。変な開き方のボンネット、車体下いっぱいまで開くドア、トランクのスプリング、吹き出し口の多いヒーターなど厳しい環境の北欧が生んだ設計の全てが再び心に刺さる。これら”元来のサーブ設計のカタマリ”と、他の何にも似ていない姿の前では10年前に感じた様々なネガティブ要素は、もはやどうでも良かった。あの当時に比べて運転がおっとりとしたのもある。

結局筆者のサーブ遍歴は2代目サーブ900からクラシック900に”先祖返り”してしまった。2代目900にはサーブの血がちゃんと受け継がれていて今でもオススメだが、乗れば乗るほど”純血さ”が欲しくなった。カタチや思想の”必然から生まれた独善的設計のカタマリ”を、是非ともサーブで味わっていただきたい。

900Sはインタークーラーなしの低圧ターボ。ドッカンターボではないがタービンサウンドが心地良い。燃費は高速多めで9km/リッターほど。急加速や渋滞で燃費は急激に悪化する。

手前が一瞬上がり後端が持ち上がって開くボンネットも見どころ。

サイドシルがないのでドアはボディ裾まで伸びる。これは悪天候時にサイドシルでズボンの裾を汚さないようにする配慮。乗降性も抜群。
ロントウインドーの曲率にも注目。まるで円錐。Aピラーが手前に来るため視界はかなり良い。
この個体にはリアにレトロ感アップのロゴ入りマッドフラップが。

見るからにもっちりしっかりなシートは実際に座り心地が良い。背もたれは立て気味の方がしっくりくる。

全長を考えると車内は広くはない。80年代のデザインだが、モダンなデザインのインテリアに古さは感じられない。

手袋をしたままで操作できると云われるほど各スイッチは大きく、分かりやすい配置になっている。

前シート間中央に鎮座するイグニッションスイッチはサーブではおなじみだ。

ラゲッジ容量は大きいが、古いセダンなので奥に深く低い形状となっている。

トランクリッドのダンパーは当時凍結しないものが製造できなかったため、スプリングを用いていたと云われている。