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ルーマニアに流れる、もう一つのルノーDNADACIA DUSTER

素っ気ないが優れたデザイン、無駄を排した設計、機能を満たせばあとは気にしない潔さ……ルノー傘下のルーマニアのメーカー・ダチアが作るダスターには、そんな「ちょっと前のフランス実用車らしさ」と「ルノーらしさ」が溢れていた!

TEXT / 遠藤イヅル PHOTO / 山本佳吾

ルーマニアに流れる
もう一つのルノーDNA

ダチアは東欧ルーマニアのメーカーだが、フランス車好きにもぜひ注目してほしいブランドだ。なぜならダチアが作るクルマには現在のフランス車が忘れてしまった“フランス車らしさ”があるからなのだ。

現在はルノー傘下にあるダチアとルノーとの関係は古い。1966年からR8をダチアでも発売。1969年からはR12をダチア1300として生産を開始し1980年に1310に発展、本国でR12の生産が終了した後も2004年頃まで1310を販売し続け”新車でR12が買える”状態が継続された。だがルノーが1999年に株式の半数以上を取得してからは2002年の『ロガン』以降、矢継ぎ早に新型を投入。今やルノーのリーズナブル・ブランドとしての地位を獲得している。ロシア、モロッコ、コロンビアなどでも生産されるが、いずれの地域でも”驚異的ともいえる価格の安さ”が最大の売りになっている。

大きな面積を占めるブラック樹脂バンパーが、道具感をさらにアピールするリアビュー。トリムレベルによってはお好みでボディ同色バンパーも選択することが出来る。

その価格を実現しているのが、パワートレインはルノーの最新モードを採用する一方でサスペンション、スイッチ類などを可能な限り既存のルノーと共用する手法だ。ダスターはロガン以降のダチアでは初のクロスオーバーSUVとして2010年に登場したモデルで、4WD版では日産とルノーの関係を活かしてエクストレイルなどに採用される電子制御4WD『オールモード4×4』を搭載している。

フランス車を10台以上乗り継いで来たフランス車好きの僕は、初代ロガンがデビューした当時とても興奮した。ロガンに”装備が少なくシンプルな古のフランス車のかほり”を濃厚に感じたからだ。同じくダスターもそうだった。太いピラーでSUVの力強さをアピールする一方、装飾の無さで“いい意味での安グルマ”のかっこよさを、強烈に発散していた。むろん今でもその魅力は薄れていない。だから今回「ダスターに乗りますか?」という依頼が来た時は、嬉しくて心の中で小躍りをしたほどだ。しかも実車はまさかの白ボディに素っ気なさすぎる黒バンパー、それに加えて鉄ホイールという商用車然とした潔さ! 上位グレードではバンパーがボディカラー同色になるなど乗用車的な装いになるが、輸入したオートリーゼンによると、「ダスターらしくあえてロアグレード仕様を入れました」とのこと。なんてよくわかってらっしゃるのだろう(笑)。

グリルのセンターに輝くダチアのエンブレム。「D」を右に90度寝かせたようなデザインでこれまた地味。

4WDだということを外観上で唯一証明するリアハッチのステッカー。飾りっけの無いデザインなのもまたいい。

はやる心を抑えて乗り込む。柔らか過ぎず硬すぎずのシートは、座った瞬間にニンマリするルノーらしさを持っていることがまず嬉しい。もちもちにアンコが詰まったルノーのアレだ。見慣れた形状のシフトノブがNにあることを確認してキーをひねり、クラッチをつないで走り出す。このダスターは1.2リッター直4ガソリンターボH5F型エンジンを積んだTCe125(125ps)仕様だが、小排気量でも低速でガクガクすることもなく、アクセルを踏むと1.2リッターとは思えない鋭い加速を見せる。これは115ps仕様のH5F型を搭載するカングーと似たフィーリング。シフトノブ前のスイッチを切り替えてエコモードにしても日常使いでは充分なパワーである。商用車ベースなのに抜群の乗り心地を持つカングーを期待するとダスターのそれは少々硬い。だが快適なことは変わらないし、ダスターの名誉のためにもクルマが下ろしたてだったことは付け加えておかねばなるまい。

リアガラスに貼られたルノー・エルフならぬ『DACIA elf(ダチア・エルフ)』の文字に胸がキュンキュン。

ドアミラーの付け根には覆いさえないシンプルの極み。でもミラーとしての機能は果たせるのだからそれでいいという割り切り。

撮影のために停めて改めて内外装を見てみる。全体に漂う機能に徹したチープ感がたまらなくいい。とことん華飾を廃した飽きのこないシンプルなデザインに”最低限の美学”を感じることができる。ホイールアーチ内はスカスカだがそれをカバーなどで隠そうともしない。リアドアの室内側の取っ手はアームレストにただくぼみがあるだけだ。今日日のSUVでドアミラーが左右とも手動というのも驚きである。でもちょっと前のフランス実用車は機能さえ満たしていれば、例えばダッシュボードがプラスチッキーであることを気に留める様子も無かった。これでいいじゃないかという凄まじいまでの割り切りと、上も下も見ていない脱ヒエラルキーの潔さの魅力があった。ダスターはまさにこうした”あの頃のフランス車”らしさを今に色濃く残しているのだ。

逆にルーフレールは無骨で頑丈。使い勝手を優先するメリハリが気持いい。

欧州では無論アルミホイール装着も可能だが、この個体が履いていた鉄チンこそダスターにふさわしい。しかも妙にデザインもいい。

素晴らしいハンドリングなのにねっとりとした乗り味も、僕も何台か乗った数字車名ルノーを思い出させる。この乗り味はまさにルノーのDNAだが、むしろ本国のルノーでは失われつつあるものでもある。ダスターはそれもしっかりと継承している。それでいて最新エンジンで燃費が良く、日本が設計した高性能4WDを備えSUVとしての機能性も満たすのだから、実用車好きや古めのフランス車が好きな人にとって、ダスターを構成するこれらの要素は大いに刺さるポイントなのではないだろうか。少なくとも僕はすっかり穴だらけである(笑)。

スタイリッシュな現在のSUVには見られない広大なタイヤハウスの隙間だが、タイヤのトラベル量の多さを視覚的に感じさせて好ましい。

床下を覗き込めばドライブシャフトが後輪へと動力を伝えているのが分かる。オールモード4WDなのでセンターデフがない。

オートリーゼンが輸入するダスターは125psを発生する1.2リッター直4ガソリンターボを搭載。2016年のフェイスリフトで追加されたエンジンだ。

写真では質感があるが実車はもう少しプラスチッキー。親会社のカングーなどに比しても遊びの無いデザインだが、使い勝手は良好。

シフトノブ前の4WD切り替えスイッチは日産のパーツからの流用。メーカーの関係性を暗に教えてくれる部分だ。

小気味よい6速M/Tのシフトフィールは、見た目もそのままにルノーのフィールだ。

ドアミラー調整はなんと手動。 廉価版グレードの『Ambiance』とはいえ、21世紀の現在になんという潔さ。だが、これでいいのだ。

座った瞬間にルノーの血脈を感じるモッチリアンコ系シート。体の各所にフィットする形状はさすがの一言。

リアの居住性は前後左右方向に余裕が感じられ充分に高い。シートは平板気味だが面で身体を支えてくれるため長時間の着座でも疲労度は少ない。

リアドアを閉めるときの取っ手はアームレストに穿ったただのくぼみのみ。くぼみの内側には滑り止め加工が施される。ドアを閉めるだけならこれで充分という設計思想だ。

シングルフォールディングでリアシートを倒せば広大な空間が(参考:筆者は165cm)。

SPECIFICATION
DACIA DUSTER TCe 125 4×4 Ambiance
全長×全幅×全高:4315×1821×1695mm
ホイールベース:2674mm
トレッド(F/R):1559/1560mm
車両重量:1387kg
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ

総排気量:1199cc
最高出力:125ps/5250r.p.m.
最大トルク:20.9kg-m/2000r.p.m.
サスペンション(F/R):ストラット/マルチリンク
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤ(F&R):215/65R16
価格:259万2000円

プロフィール●遠藤イヅル

現地では売れていても日本にはほぼ入ってない車種・仕様を愛してやまないおかしな生態を誇る絵描き/ライター。好物は実用車、商用車。大小問わず。