OTHERS

<その他コンテンツ>
ニューカー、ヤングタイマー、クラシック、オーナー、ライフスタイル、
カタログ、100ドロ、ミニカーなどなど
CLASSIC&YOUNGTIMER

熟成が極まり、趣味車として花開くCITROËN GSA

1980年~2000年にかけて生産された”ヤングタイマーカー”。ここではそんな中から、DS譲りのハイドロニューマティックを持ち、絶品シートとあわせて極上の乗り心地を持つシトロエンGSを紹介する。個性の塊と言えるDSと2CVにスポットが当たりがちなシトロエンだが、現在の目で見ると同年代に活躍したGSも実に興味深く、個性を放つ存在なのだ。

TEXT / 森口将之 PHOTO / 前田惠介

2CVとDSという2大看板に挟まれて、主役の扱いを受けることが少なかったシトロエンGSが、ここへきて趣味的な視点で語られることが多くなってきたように思う。

GSがデビューしたのは1970年。2年後に日本への輸入が始まった。当初は1リッター、途中から1.2リッター・エンジンを積む大衆車でありながら、DSで実用化したハイドロニューマティック・サスペンションを採用し、空力的な6ライトボディをまとった姿はまさに夢のファミリーカーだった。

たしかにそのエンジンは、2CVの発展系と言える空冷の水平対向4気筒で、高温多湿な日本の夏は苦手としていたし、車体に対して小さめの排気量はストップ&ゴーの続く道路を得意とはしていなかった。

でも実用車としてではなく、趣味のパートナーとして眺めれば上記の特性はさして不満には映らないし、その後の多くのファミリーカーが夢より現実を重視したクルマづくりになったことも、理想を貫いたGSが魅力的に見える理由かもしれない。

以前取材したGSクラブ・ブレークを思い出しながら、そんなことを考えていたとき、今度はGSA X3取材の話が舞い込んできた。

GSAはGSのアップデート版として1979年に発表され、翌年輸入開始。2年後にはプジョーの水冷直列4気筒を積んだ次世代型BXが生まれるが、GSAはその後4年間作られた。ハイドロや空冷フラット4をGSから受け継ぎつつ、リアにハッチゲートを追加し、バンパーやインパネなどをモダナイズした。細かいところではリアクォーターウインドウやドアハンドルの造形も変わっている。

今回乗ったX3はスポーティバージョンで、メカニズムに変更はないものの、黒塗りの窓枠やスポイラー、ハイバックのフロントシートなどで少しだけ精悍に装っていた。

GS時代からこのラインはあり、1974年にGSXとX2、78年にX3が登場し、GSAではX1とX3の2車種になっている。最後の数字には意味があって、排気量がXは1リッター、X1は日本に導入されなかった1.1リッター、X2は1.2リッター、X3は1.3リッターだった。

デビューしたときは流体フォルムと角張ったバンパーの組み合わせに違和感を覚えたスタイリングは、今見ると淡いブルーグレーにライトグレーというフランスっぽいコーディネートともども、1980年代らしさをストレートにアピールしてくる。

変わった動きのドアオープナーを引き、明るいキャビンへ。お尻をソフトに包み込むようなシートに座り、イラスト入りのインジケーターパネル、昆虫の目のようなグリーンのボビンメーターと相対する。最近はやりの液晶ディスプレイに通じる眺めだ。シトロエンはやはり未来を見通していたのか。でもドラムのようなサテライトスイッチの扱いはアコーディオンを想像させて、むしろアナログ的だ。

前席以上にふっかりした後席には170cmの人間が楽に座れ、後方の荷室は驚くほどの広さ。でもインパネは薄く、反対側のドアに簡単に手が届く。慎ましやかだった1970年代のファミリーカーを語り継ぐ存在でもある。

シングルキャブレターのエンジンは簡単に掛かる。インパネ中央に手を伸ばしてパーキングブレーキを解除し、ややゴリゴリしたタッチだが遊びが少なくストロークの短いシフトをローに入れて発進する。

歴代GS/GSAでもっとも力強い65psの1.3リッターエンジンと、X3だけに装備される5速ギアボックスの組み合わせは、かなりの余裕をもたらす。GSではお決まりだった非力という言葉はX3には当てはまらない。しかも空冷らしからぬ静かさとなめらかさ。これならロングランも苦にならないだろう。

僕はCXとBXを愛車にした経験があるので、ボビンメーターやサテライトスイッチの冷静な判断は難しいかもしれない。ただ新車の速度表示にデジタルが増えていることを考えれば、シトロエンのアプローチは理に叶ったものと言えるし、ハザードランプやリアデフォッガーを含めて主要なスイッチを手元に置いたのは安全にも寄与しているはずだ。

久しぶりに味わったハイドロは、やはり別世界だった。試乗ルートには荒れた舗装も多かったのに、ゆったりした揺れとともに通過していく。分厚いカーペットを敷きながら走っているようだ。圧巻は撮影場所近くのダートで、無敵という言葉を使いたくなるほどの快適性だった。この世代のハイドロの常で段差には敏感に反応するけれど、それを帳消しにしてしまうほどの快感が堪能できる。加えてGS/GSAには軽量級ハイドロならではの魅力もある。とにかく身のこなしが軽い。

動き出せば軽いステアリングはカチッとした反応で、丸いノーズはスッスッと向きを変える。重心の低いエンジンも効いているのだろう、ソフトなサスペンションなのにロールは適度で、地上すれすれを滑空しているような心地良さとともにコーナーをクリアしていく。踏圧で効かせる強力なブレーキも、こういうシーンでの味方になってくれる。でもその走りには2CVとの近さも感じる。水平対向エンジンの息吹、段差は拾うがそれ以外はふんわりゆったりの乗り心地などから血のつながりを感じるのだ。モダンなのに素朴。近年GS/GSAに惹かれる人が増えたのは、単に独創的なだけでなく、そこに愛らしさが宿っているからではないだろうか。

シトロエンGSとは?

2CVとDS/IDという両極端なモデルレンジの中間へ、1970年に投入されたのがGSだった。コンパクトなボディに、DS譲りのハイドロニューマティックサスペンションを持ち極上の乗り味と実用性を兼ね備える。

こちらのショーモデルは、ベルトーネがGSにスペシャルボディを架装し、1972年のジュネーブ・ショーへ出展したカマルグ・クーペだ。

DESIGN

GSのデザインは、社内のデザイン部門に所属していたロベール・オプロンが手掛けたといわれる。テールエンドがスパっと切り落とされたファストバックスタイルで、Cd値では流麗なデザインを持つDSよりも優れる。6ライトは開放感抜群で、車内は明るすぎるほど陽光が差し込む。

INTERIOR

インストルメントパネルの中央にはGSの側面図が警告灯と共にデザインされ、その左右にサテライトスイッチが備わる。

凸面レンズ越しに見えるボビンメーターもGSAのトピックだ。

フロントシートに挟まれるようにラジオが設置される。

ラゲッジルームはスクエアで使い勝手に優れる。

SEAT

ヘッドレスト一体型のシートは、面で体を支えてくれるため思いの外ホールド性に優れる。

写真でもわかるようにリアシートの座面は厚みがあり、フロント以上にふっかりとして居住性はとても高い。

EXTERIOR

GSAでは前後バンパーがGSの金属製から樹脂製へと変更され、グリルも上下2分割デザインとなった。

専用デザインのアルミホイールやリアスポイラーの装着、窓枠をブラックアウトしている点などがX3の特長だ。

ENGINE

フロントへ搭載されるエンジンは空冷の水平対向4気筒で非常にコンパクト。空冷のメリットで補器類は最小限で済むため、フルサイズのスペアタイヤがエンジンルーム内に備わる。排気量は1299ccで取材車のX3には5速M/Tが組み合わされる。

SPECIFICATIONS
CITROËN GSA
全長×全幅×全高:4195×1625×1350mm
トレッド(F/R):1380/1330mm
ホイールベース:2550mm
車両重量:970kg
エンジン形式:空冷水平対向4気筒SOHC
総排気量:1299cc
ボア×ストローク:79.4×65.6mm
圧縮比:8.7:1

最高出力:65ps/5500r.p.m.
最大トルク:9.8kg-m/3500r.p.m.
変速機:5速M/T
懸架装置(F/R):ダブルウィッシュボーン+ハイドロニューマティック/トレーリング・アーム+ハイドロニューマティック
制動装置(F & R):ディスク
タイヤ(F & R):145SR15
新車当時価格:260万円