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謎のスペシャル・ミニ、BIOTAの衝撃!BIOTA

ミニ・マーコスやユニパワーGTなど、ミニのパワートレインを使ったスペシャル・マシンは数多いが、極端に低い車体と長いノーズを持つ、BIOTAというオープントップ・スポーツカーはご存知だろうか?

TEXT / 中島秀之 PHOTO / 奥村純一
SPECIAL THANKS / ミニー・ブリティッシュカーズ(https://www.minnie-bc.jp) Biota sportscar website(https://biota.jouwweb.nl

謎のスペシャル・ミニ、
BIOTAの衝撃!

運転席が後輪の直前にある独特なデザインのビオータ。フロントは曲線的だが、リアは直線的な形状。

1960~70年代のイギリスは、オープンスポーツカーの宝庫とも言うべき国だった。多くの車種が作られたが、いわゆるバックヤード・ビルダーが開発し、キットカーとして販売された車両も相当数存在した。

ビオータ(BIOTA)もそうした車両の一つで、ミニのパワートレインを使ったキットカーやワンオフ車を集めた「MAXIMUM MINI」という本に掲載されており、その存在は知っていた。だが一度も見たことはなく、今回初めて実物と対面することができた。詳細をお伝えする前に、ビオータの生い立ちを簡単にご紹介しておこう。

ジョン・フートンというイギリスのアマチュアレーサーが1960年代後半、パイプフレームにミニのパワートレインを搭載したミジェットカー(フロントエンジンの小型レース用車両)を製作し、ヒルクライムなどで活躍していた。彼はこれを元にロードカーを製作したら面白いと思いつく。そこで新たに2シーター・ロードスターのパイプフレームを製作。そのフロントに、ミニの横置きエンジン&ミッションをサブフレームごと搭載した。

おそらくイメージとしては、ミニのパワートレインを使ったロータス・セブンだったと思われ、乗員は後輪直前に座るポジションを採用していた。ただしボディは、リアにロールバー状の小さなルーフを持つ70年代風の直線的なデザインを採用しており、プロトタイプではアルミで製作されていた。

小さな2シーターの意味を持つビオータと名付けられ、1968年1月の英国レーシングカー・ショーに出展されたこのクルマを、フートンはキットカーとして市販しようとする。そこで、パイプフレーム・レーシングカーのノウハウが豊富で、後にコールドウェルGTというミニ・パワートレインのミッドシップ・レーシングカーを製作することになる、コールドウェル・エンジニアリングのビル・ニーダムに協力を依頼。試行錯誤の末、1970年夏にようやく市販を開始している。

パイプフレームのフロントに、ミニのパワートレインをサブフレームごと載せ、22のパーツからなるFRPボディを搭載。サスペンションは前がラバーコーンを利用したウィッシュボーン、リアはミニのアームとコイルオーバーショックを組み合わせていた。

フートンはビオータでヒルクライムに参戦して好成績を残し、プロモーションに一役買ったりしたものの、こうしたモデルではお約束の、販売不振と資金不足の悪循環に陥っていった。

1972年までに25台を生産した後、フレームを改良しリアサスペンションをリンク式に変更、フロントグリルやシートのデザインを変え、ボンネットを開閉式にするなどしたMk.IIモデルを生み出すが、これも1974年までに僅か6台生産しただけにとどまり、ビオータは姿を消したのだった。

さてこのビオータ、驚いたことに日本に3台あるそうで、2台はロードカー(内1台はナンバー付)、もう1台はコンペティションカーだという。今回取材させていただいたのは、貴重なコンペティションカーの方であった。

埼玉県上尾市の「ミニー・ブリティッシュカーズ」は、代表の関一美さん(52歳)が25年前に始められたミニ専門ショップで、現在は息子の彰太さん(32歳)と二人で仕事をされている。地元はもちろん、全国からメンテナンスやレストアの依頼がある人気店だ。

このお店にビオータがやってきたのは10年程前。同業のショップで長期在庫となっていたものを、「面白そうだから」と引き取ったのだそうだ。特にビオータに思い入れがあったわけではなく、お店のマスコットにでもなれば、という気持ちだったそうだが、各部をよく観察したところ、このクルマが只者でないことがわかった。

現車は1972年製のMk.IIの1台とのことだが、まずボディ形状が大きく異なる。リアのロールバー風ルーフは存在せず、代わりにドライバー後方のみフェアリング的カウルが装着されている。このためフロントウインドウも、レーシングスクリーンが運転席側に付くだけだ。またコクピット横は、ロードカーの場合乗降がしやすいよう切り欠きがあるが、現車にはそれがなく、スムーズな形状となっている。

しかし、ボディ以上に大きな違いがあるのがシャシーだった。パイプフレームそのものは、写真にあるロードカー用と大きな差はなさそうだが、なんとミニのパワートレインが、サブフレームを介さず直接フレームにボルト留めされているのだ。しかもマウントすら介されていない。これは、フレームの耐久性を無視してでも、ダイレクトな操縦性を追求したが故の処置と考えられ、明らかに競技用と思われる。またサブフレームがないため、前輪のラバーコーン上部はパイプフレームで押さえているだけの状態のようだ。更にロワアームはピロボールマウントとされ、キャンバー調整式だった。

一方リアサスペンションはビオータMk.II用で、左右が連結したビームを一対のトレーリングアームが支え、コイルオーバーショックとスタビライザーを備える構造となっていた。

ただ搭載されているエンジンは、ウェーバー45φが装着されているものの、それほどハイチューンには思えないとのこと。その証拠にドライブシャフトはラバーカップリングのままなのだ。おそらく、どこかでエンジンが積み替えられたと見るべきだろう。ただしエキゾーストエンドは、ロードカーとは異なり右前部に位置している。

この個体には車体番号などが一切ないのだが、関さんは「おそらくビオータ・ワークスでヒルクライムに参戦していた車両の1台だと思います」とのこと。実はビオータは、1972年のプレスコットBARCヒルクライム選手権に、2台のMk.I軽量バージョンをフートン自身とクリス・シーマンの運転で出場させ、シーマンがタイトルを獲得している。その後Mk.II仕様に変更されたという記述があるから、この個体はその1台の可能性が高い。関さんは、「さすがにロードカーにはできませんが、当時のカラーにして、ミニ60周年のイベントに展示できたらと思っています」とのこと。貴重な車両だけに、ぜひ実現してもらいたい。

TOPICS #1

ロータス7のようなミニを作りたい!

ビオータの創設者であるジョン・フートン(John Houghton)は、FFのロータス・セブンのようなクルマを作ろうとしたようだ。この写真は「Biota sportscar website(http://biota.jouwweb.nl/)」からお借りした、ビオータMk.Iのおそらくファクトリーメイドの新車当時のもの。ロータス・セブン風ウインドスクリーンやリアの小さなルーフ、すっきりしたインパネや、オリジナルのステアリングがよくわかる。

ロードカーのビオータはこのボディスタイルが標準。またこれはMk.Iで、取材したMk.IIとはフロント部分の形状が異なる。

この個体はイギリスのプレスコット・ヒルクライムのプロモーション用に、オランダ・ウーデンベルクで登録されたもののようだ。広告は1969年の英国の雑誌に掲載されたもの。
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