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50年近く、福井で輸入車といえばココ!天井にスピダーがあるショップ

恐竜で有名な福井県に、ティラノサウルス級に輸入車に強いショップがあるという。聞けばキャブ以前のクルマなら、エンジンとタイヤさえついていれば戦前車でも見てくれるという。いったいどんなモンスターショップなのか、実際に足を運んで伺ってみた。

TEXT / 三宅康朗 PHOTO / 山本佳吾
SPECIAL THANKS / 渡辺モータース(ルノーサービスサテライト福井北/http://blog.livedoor.jp/fwm1972/

数年前に「ルノーの桃源郷」ことルノー・ネクストワン徳島を取材し、新旧様々なルノーを有するヤードを紹介したところ、かなりの反響があった。そのルノー・ネクストワン徳島の代表である一宮氏に「達人と思う方はいらっしゃいますか?」という質問を投げたところ、教えて頂いたのが今回紹介する、福井県の「渡辺モータース」である。

電話で連絡し取材を快諾して頂いて、取材日に伺うと、真っ白な髪に立派なひげを蓄えたスリムな初老の男性が出迎えてくれた。この人こそが誰あろう、渡辺モータースを創業し、現在も福井を中心に本州西部のクルマ好きを支えている渡辺道広氏だ。

早速お店の中を見せていただくと、木目に囲まれた明るく落ち着きのあるショールームには、最新モデルのトゥインゴがちょこんと置いてあり、ルノーのサービスサテライトらしい佇まいを見せていた。聞けばここは渡辺さんの長男、一広さんが店長を務めているという。そこから奥の部屋に行くと、なぜかルノー4と最新のルーテシアが仲良く並ぶというちょっと奇妙な光景が。その奥にはMGとスピダーという2台の変わった取り合わせで置いてある。そして建物を出て工場に足を踏み入れた瞬間、その予想外の光景に驚かされた。

そこで我々を迎えてくれたのは、工場の天井から吊るされたルノー・スピダーのホワイトボディだったのだ。これだけですでにこのショップが只者ではないとビンビンに感じられた。そばにあるリフトには上には希少なクラシックカーのマセラティA6G/54が、その下にはさらに古い戦前車のアミルカーが! なんでルノーの看板を掲げたショップにこんなものがあるのか、さすが「あの」一宮さんが推すだけのことはある。

呆気に取られてそれらのクルマを見ていると、渡辺さんがやってきて「じゃぁ行きましょう!」と、今回のお目当てであるクルマ置き場に連れて行ってくれることになった。それぞれクルマに分乗し、貴重なクルマが保管してあるという倉庫へと向かった。

倉庫1 いきなり爆弾級のレア車

フランスの幻の高級車、ファセルベガ。こちらは小型のファセリアF2で、ボルボの4気筒1800ccを搭載したモデルだそう。ボディはキレイなグリーンメタリックに包まれている。
今となっては奇跡に近い、塗装のヤレが見られないアルピーヌV6ターボと、最初で最後のコンパクトハイドロシトロエンと言われるシトロエンGS/GSA。
美しいボディラインのクーペが向かい合わせで止まっていた。ベージュがジャガーEタイプ。レッドがアルファロメオ・モントリオールだ。
希少な高級車もいっぱい。ため息が出るほど美しいボディラインのBMW3.0 CS。
手前にジャガーXJ、奥にはクロカンの雄、トヨタのランドクルーザー40系。
手前がディムラーV8で、奥が二代目日産ブルーバードの411型。国産旧車も多数。
リフトにはマセラティのA6G/54と戦前車のアミルカー。どうしてここにこの2台があるのか、不思議。

場所は明かせないが、しばらく走った後に古ぼけた倉庫に到着した。おもむろに渡辺さんが勢いよくシャッターを開け放つ。すると、そこにあったのはファセルベガのファセリア。初対面がいきなりファセルベガ。それも珍しい小型のファセリアF2。聞けばボルボの4気筒を搭載した1800㏄のモデルという。

ファセルベガに驚かされて周りを見るのを忘れていたが、他のクルマも貴重なモデルばかりが並ぶ。しかも状態が非常に良さそうだ。BMW3.0CS、ジャガーのEタイプ、XJやマーク2、やっとルノー関係の一台、アルピーヌV6ターボがあったと思えば、すぐ隣にアルファのモントリオール。「ルノーのディーラー……」と頭の中に「?」が何個も浮かんでは消える。一通り見て感嘆の声を上げていると、「次行きましょう」と次を促してくれた。驚いて「他とは?」と聞けば、まだ倉庫があるという。我々は驚きを隠せないまま、次の倉庫へと向かった。

倉庫2 メインはルノー車ながら……

塗装が剥離された状態で置かれていたのは、幻の二人乗り国産車「フジキャビン」。なんとか復活させたいというが、完成はいつの日になることやら。
初代ウニモグ。ボディも平面ならガラスも平面という四角四面のボディフォルム。
この個体は渡辺さんの手でスーパーチャージャーでチューン済。
ボディサイドのプレートには、ウエスタン自動車謹製の「ウニモク」と書かれたプレートが。
シュペールサンクの後期型。スポーツグレードではなく、ベーシックモデルのGTLというのがまた泣かせる。
内外装ともキレイな状態に保たれたジャガーXJシリーズ3。渡辺さん曰く、ジャガーは好きなこともあって整備ならお手のものだそうだ。
日本導入僅か128台というサフラン。渡辺さんは気に入ったので試乗車を用意して懇意のお客さんを乗せまくり、その中の1割に当たる13台も販売したそうだ。
ゴールドのホイールが眩しいクリオ・ウィリアムズ。あまりにパワーとハンドリングのバランスが素晴らしくて1台取っておいたそうだ。
カングーの祖先にあたるルノー・エクスプレス。とってつけたような荷台がカワイイ。
初代ルノー・トゥインゴ。こちらはマニュアルトランスミッションのパックで、しかもキャンバストップ仕様。ここら辺のベーシックグレードはホントに見なくなった。
さりげなく置いてあるエンジン、よく見るとオイルキャップの脇に「A」の文字が走るアルピーヌA110のユニット。今や超貴重なシロモノだ。

次は先ほどより少し大きい倉庫。中に入ると、いきなり見慣れない塊が目の前にあった。饅頭のお化けのようなその物体は、塗装を剥離したフジキャビンだった。「えー、博物館級のクルマがここに! なんで?」とまた更に頭の中に「?」が飛び交う。気を落ち着かせてその後ろを見ると、緑色の巨大な箱のような物体が。よく見ると、初代ウニモグのトラックだった。四角いボディフォルムに味があっていい感じだ。渡辺さん、何を思ったのか颯爽と乗り込み、何かをチョコチョコっと弄ったかと思ったら、ニコリと笑っていきなりエンジンキーを捻りだした。「キュンキュンキュン」とセルが回る。でもかかる気配がない。「キュンキュンキュンブオオォォォ」。かかりそうになったがダメ。さらにもう一度「キュンキュンキュン、ブロォォォォォ」とエンジンが長い眠りから目覚めた。渡辺さんは微笑みながら「さすがにこいつはタフでね、バッテリーを繋げばいつでもちゃんとエンジンがかかるんですよ」と笑う。さらに「パワーはあるんですけど、ギア比が低いんですね、貨物ですから。ですからね、ちゃんと走るようにスーパーチャージャーを取り付けたんですよ。そしたらまともに走るようになりました」と嬉しそうにエンジンルームを開けて話してくれた。

周りを見渡すと、程度のよさそうなジャガーがある。それ以外ではルノー車が多く、サフラン・バカラ、シュペールサンク、エクスプレス、トゥインゴ、そしてクリオ・ウィリアムズまで。「こちらのクルマは売り物ですか?」と尋ねると「息子のモノなので、私がどうこう言えるものではないんです」とのこと。距離は10万kmオーバーだが、保管状態は良くピカピカ。さて帰ろうと出口に向かうと、足元にエンジンが置いてある。よく見るとヘッドに「A」の文字が! そう、アルピーヌA110のエンジンだ。「これはね、OH済みのものを海外から買ったんだけれど、外はキレイだったんだけど中がダメでね。いやぁ、やられました。なのでこれは返そうかと思ってね」とのことだ。なんともスゴイ話だ。

ヒストリックカーレストア工房

最後に案内してくれたのが、ヒストリックカー専用のファクトリー。キレイに整頓された工場内で、旧車が修理の順番を待っていた。
レストアが終わり、あとは出荷を待つだけという状態のMG-TD。幌やエクステリア、インテリアはピッカピカ。
オールペンの途中だったコスモ・スポーツ。まだ着手したばかりとのことだ。
まだ手が付いていない状態のコスモ・スポーツ。2台ほぼ同時進行でレストアしていく予定だとか。
ボディカバーをめくると、中からテントウムシことスバル360がお目見え。こちらもレストア待ちだそうだ。
ファクトリーの天井には、なぜかキャブレターをメインに様々なパーツが吊り下げられていた。
タイから日本へ来た後、壊れてここに流れ着いたというトゥクトゥク。こちらも修理予定。

そして最後はヒストリックカー専門工場へ。ここは渡辺さんの次男、道男さんがメカニックを務めている。工場の前にはちょっと旧いルノー車たちが雪をかぶったまま並んでいた。パッと見たところルーテシアの1と2、シュペールサンクが見える。

工場に入ると、ピカピカにレストアされたMG-TDがあった。その横にはレストアで入庫したというコスモ・スポーツが2台。1台は未着手の状態で、もう1台は塗装の途中であった。さらにトゥクトゥクやスバル360が修理の順番を待っている。「ここはヒストリックカー専門の修理工場です。メカだけでなく、鈑金もできるようにと作りました。外注でもいいのですが、最近の塗装はピカピカすぎて面白くないですからね。もう少し旧車に似合う塗装があってもいいんじゃないかと思いましてね」と、この工場を立ち上げたそうだ。

渡辺さん、何が達人かって、これだけ様々なクルマを看てきたことも凄いけど、若者のクルマ離れが叫ばれる昨今、息子さん二人を見事クルマ関係、それもエンスー色の濃い道に進ませたことがスゴイ。ご本人はヒストリックカーの修理やメンテナンス、長男の一広さんはルノーの新車販売とサービス、次男の道広さんはヒストリックカーのレストアと、渡辺さん親子は3人で力を合わせて福井の自動車趣味人たちの根底を支えている。こんなに素晴らしいことはない。ボクも男の子二人を育てているが、こんな風にクルマ関係に行きたがってくれるといいなぁ、できればマスコミ以外の道で。

自宅横にある工房では、個人的な趣味としてジャガーE タイプをセルフレストア。時間を見つけてはビール片手に自らの手でコツコツ、少しずつレストアしているそうだ。
工場前にはサンクやルーテシア1 & 2など、ヤングタイマー世代のクルマが多かった。
本社裏には純正色にはないイエローの2代目ルーテシアR.S.、初代カングー、そしてジャガーEタイプが置いてあった。
手前のルーテシアは次男の道男さんが板金塗装の練習で塗ったというベージュのボディカラー。

地元のクルマ好きを
支える渡辺親子

中央が今回お話を伺った渡辺モータースの代表、道広さん。右が長男でルノーサテライトサービスの店長を務める一広さん。左が次男で旧車のレストアを手掛ける道男さんだ。男3人、とことんクルマ好き、とことんクルマバカ。それにしても羨ましい。