
現行型『アルファロメオ・ジュリエッタ』の元を辿っていくと、みなさんご存知のアルファ147、145が歴史にあがってきます。でも”そういえば145の前って何?”と聞かれて、すぐに答えられる人は、少ないかもしれません。というわけで今回は『アルファロメオ33(アルファ33)』を紹介します。
33は1983年から1994年まで製造されたモデルで、アルファスッドの後継にあたります。生産当時の車格では2 代目ジュリエッタや75などよりも下に位置するエントリーモデルで、スッド譲りの水平対向エンジン+FFレイアウトが最大の特徴でした。また、33はアルファロメオに”工場のロボット化”、”設計にコンピュータを積極的に導入”など大幅な近代化をもたらしたクルマでもあります。
当時まだ国営だったアルファロメオが、欧州進出を目指した日産と提携したことで両社によって1981年に設立された『ARNA(アルナ)』は新工場を建設。パルサーの車体にスッドのエンジンを積んだモデルの生産を開始しました。そしてこの工場には、日産の最新工場施設が詰め込まれていたのです。アルナは商業的には失敗に終わりましたが(アルナの話だけでここが埋まるほど面白いのですが……割愛・涙)、品質が悪いことで知られたスッドの悪夢を振り払うほどの素晴らしい技術がアルファロメオに残ったのでした。スッド後継の33は、工場こそスッドと同じでしたが、部品点数の削減、防錆など品質向上に日産の技術を反映していたのです。
しかしその代わり、理想主義的設計なスッドで採用されていたフロントインボードブレーキ、4輪ディスクブレーキなど贅沢な装備は姿を消しています。セダン風のクリーンな5ドアハッチバックはアルファロメオ自身がデザインした一方、1984年追加のジャルディネッタ(ワゴン)はピニンファリーナがリスタイルしていました。エンジンは当初1.3 /1.5リッターのOHC フラット4で、後に1.7リッターやVM製1.8リッター直4ディーゼルターボ、1989年の大幅マイナーチェンジではDOHC ヘッドを持った1.7リッターエンジンも登場。1984年には4WDも追加してバリエーション拡充を図っています。
33は日本に正規輸入されなかったこともあり、現在ではわずかな台数が日本に残るのみですが、ビート音がスポーティなフラット4エンジンは痛快で、希少性も相まってなかなかツウ好みな存在になっています。個人的には75風の前期モデルと164風のフロント&リアを持つ後期モデル、どちらも捨てがたいところです。ちなみにぼくはスッドを2 台乗ったほどのスッド好きなので、この33と145の初期にあったフラット4 搭載版(そう、あったんですよ!懐かしい!)はいつか手に入れたい車種だったりするのです。