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疲れた心が癒される、80年代の軽量カブリオレHONDA CITY CABRIOLET &
PEUGEOT 205 CTI

景気が右肩上がりで良くなった1980年代、より日常的にオープンエア・モータリングが愉しめるクルマとして、3ドアハッチバックをベースとしたカブリオレが流行した。現代ではほとんど見かけなくなったこうした軽量カブリオレの代表的な2台をご紹介しよう。

TEXT / 中島秀之 PHOTO / 奥村純一
SPECIAL THANKS / ガッティーナ(シティ、http://gattina.net/), オート・ポワ・ルージュ(205、http://www.auto-pois-rouge.com/

知人が新車で買ったMGBを、自分が譲り受けたのは1986年12月のことだった。時代はバブル前夜で、ユーノス・ロードスターはまだ存在せず、オープンカーと言えば、メルセデス・ベンツSL(ほとんどが屋根を閉めていた)などの高級車か、ヒストリックカーか、自分のMGBやアルファロメオ・スパイダーのように長い間生産されていたモデルのどれかだった。当然都内でもオープンカーは珍しく、屋根を開けて走っていると、信号待ちなどでたびたび声をかけられたりしたものだ。

ただこの時代、少しずつ増え始めていた新たなオープンカーがあった。それは、1979年に発売されたVWゴルフ・カブリオレを端緒とする、FF・2ボックス車ベースのオープントップ・モデルだった。元々VWでは、ビートル時代からカルマン社に委託する形でカブリオレを用意しており、ゴルフも同様の発想と手法で開発されたわけだが、横転時の安全性と剛性確保のため、センター部分にロールバーを残しているのがミソだった。

各国のメーカーはこのゴルフ・カブリオレに刺激される形で、同様のカブリオレの開発に着手。日本ではホンダがいち早く反応し、既に若者の間で大人気となっていたユニークなトールボーイスタイルの2ボックス車、初代シティをベースとしたカブリオレを、1984年6月に発売したのだった。

オープン化に関しては、実績のあるピニンファリーナに開発を依頼。また横転のリスクを少しでも減らすべく、トレッドの広いシティ・ターボIIのシャシーとボディ下側が流用された。また同様の理由からか、1.2リッターSOHCシングルキャブレターで、M/Tが67ps、A/Tが63psのエンジンが搭載され、性能的には穏やかなものだった。

ユニークなのはボディカラーが12色も用意され、しかもピンクなどビビッドな色調のものが多かったことで、シートもビニールレザーかグレンチェックのファブリックが選択できた。

今回ご紹介するのは、1986年式のマイアミブルーの1台で、シートはファブリック、ミッションはホンダマチックだ。まずその懐かしい姿に暫し言葉を失ってしまう。塗装や内装など各部は非常に良い状態で、30年前にタイムスリップしたかのように思える。

シートは後方にあまりスライドせず、かなり寝たステアリングと折り合いを付けながら、ポジションを取る。パワステは備わらないが、据え切りでもさして重くないので問題ない。むしろ心配だったのは、無段変速を謳いながら、実質的にはセミA/Tだったホンダマチックの方だ。スターレンジに入れてさえおけば発進から3速相当までを賄えるというもので、急加速時や登坂時にはLレンジを、また高速域ではODレンジを使用する。

これがはたして現在の路上で通用するのか? 結論から先に言えば、全く問題ないどころか、M/Tより新鮮で楽しかった。エンジンは63psと非力な上に、ボディはHBより100kg以上重い810kg。ところが、ホンダマチックを積極的にシフトして走ると、結構元気に走ってくれるのだ。もちろん絶対的な加速はゆるやかなものなのだが、オープンにしている限り、「あぁもうこれで十分! のんびり走れてサイコー!」という気分に、不思議となってくる。

髪を乱す後方からの風の巻き込みもまた気持ち良かったりして、いつの間にか80年代のヒット曲を鼻歌で歌っている自分に気が付いた。

1986 HONDA CITY CABRIOLET

これで十分! のんびり走れてサイコー!

パステル調のマイアミブルーも鮮やかなボディは、30年前に作られたとは思えない素晴らしい状態だった。幌は手動で開閉するが、慣れればそれほど時間がかからない。幌を閉めた姿はC ピラーの角度がHB より寝ている印象。ターボIIのワイドトレッド・ボディがベースのため、踏ん張って見える。

シティ・カブリオレは畳んだ幌が大きいため、オープン時に後方視界があまり良くない。幌をかけると、205よりリアウインドウが小さいのがわかる。
A/Tで63ps、M/Tでも67psを発揮するに過ぎない1.2リッターSOHCシングルキャブレター・エンジン。
タイヤは165/65R13で、ホイールは鉄チンに樹脂のカバーを共締めするタイプ。
ごくシンプルなインパネ。ステアリングが寝ていて、ペダルも左にオフセットしているため、最初少し戸惑う。
メーターはこの時代らしい左右対称レイアウトのスッキリしたデザイン。
ホンダマチックのセレクターレバー。通常は★(スター)レンジで走行するが、急加速や坂ではLレンジ、高速域ではODレンジを使用する。
シート地はグレンチェックのファブリックでお洒落。ドアの内張りも同じ表皮でコーディネートされている。
リアシートは足元が狭いものの、なんとか大人2人が座れる。ただしオープンで走ると風が容赦なく襲いかかる。
ドア内張りにあるドリンクホルダー。この時代ペットボトルはまだ小さなサイズが普及していなかったので、缶を想定したものと思われる。
トランクは2人分の旅行荷物なら入りそうなサイズ。間口が狭く、リッドが上ヒンジで直角にしか開かないため、出し入れは不便かも知れない。

SPECIFICATION
1986 HONDA CITY CABRIOLET
全長×全幅×全高:3420×1625×1470mm
ホイールベース:2220mm
車両重量:810kg
エンジン形式:水冷直列4気筒SOHC
総排気量:1231cc

最高出力:63ps/5500r.p.m.
最大トルク:10.0kg-m/3000r.p.m.
トランスミッション:OD付ホンダ・マチック(5M/T車も存在)
サスペンション(F&R):ストラット
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤ(F&R):165/70SR12

1992 PEUGEOT 205 CTI

GTIと変わらない走りが楽しめる!

さてゴルフ・カブリオレに、ドイツ以外の欧州メーカーで真っ向から勝負を挑んだのはプジョーだった。既にカブリオレ以外は第2世代に移行していたゴルフの直接のライバルとして、世界的にヒットとなっていた205に、1986年、カブリオレが追加されたのだ。こちらもオープン化はピニンファリーナが担当。元々のデザインがピニンとプジョーの共作だったから、その仕上がりは実に自然だった。

欧州では1.4リッターSOHC+ツインキャブのCTも存在したが、日本には1.6リッターSOHC+インジェクションで115ps、5速M/T・左ハンドルのCTIが1987年に導入された。車重はHBに比べ40kg重いだけで、走りはGTIとほぼ変わらず、更に価格がゴルフ・カブリオレより80万円も安かったことから人気を博した。

ただ日本では、この手のモデルにはATが必須ということあり、1988年に1.9リッターSOHC/100psの右ハンドルに仕様変更され、5速M/Tに加え4速A/Tも用意された。1989年からは4速A/Tのみとなり、更に1992年には、1.9リッターエンジンを120psとして、電動開閉式トップを採用した最終型が導入されている。

今回お借りしたオーナー車は、電動トップを持つ1992年式。ただしミッションは5速M/Tに換装されていた。内外装は年式相応にヤレた印象の1台なのだが、コンソールのスイッチで幌をオープンにしてから走り出すと、まずエンジンのトルクフルなことに驚かされた。非力なシティから乗り換えたためと言えばそれまでだが、990kgのボディに120ps/15.2kg-mだから元気いっぱい。街中では各ギアで引っ張る必要もなく、スイスイとシフトアップしていける印象だ。

パワーステアリングも備わるため、やや入りにくいギア(ブッシュ類が劣化しているのかも?)にさえ注意すれば、座り心地の良いシートに身を委ねて、快適に走り続けることができる。

また幌を閉めれば、遮音性がかなり良いため、GTIとなんら変わらない走りを楽しめるのも魅力と言える。ヒーターで足元を暖めつつ上半身を寒風に晒しながら走っていたら、こちらは、ふとバブル期の、どことなく恥ずかしい記憶が蘇ってきたりした。

1980年代に20代を過ごした自分のような世代には、日常の疲れた心を癒してくれる今回の2台のカブリオレは、「甘く危険な香り(©山下達郎)」以外の何物でもない。でも諸事情がクリアになって、もし実際に買ってしまったら、「手に入れてしまったよ、お目当てのあの娘を……(FUN✕4©大滝詠一)」って歌っちゃうんだろうな!

ピニンファリーナにより巧みにオープン化された。シティもピニン製で、ロールバーの処理が似ている。幌を閉めた姿に全く違和感がないのは、さすがピニンファリーナ。幌は本来黒のはずだが、ベージュのものに張り替えられていた。
205CTIは幌が小さく収まり、オープン時の後方視界を妨げない。また幌をかけた時のスタイルが、通常の3ドアHBに近く、違和感がないのは流石。
後方に寝かせて搭載される1.9リッター直4 SOHCエンジンは、電子制御燃料噴射付で120ps/15.2kg-mを発揮。1トンを切るボディには十分なパワーとトルクだ。
タイヤは185/60R14サイズのミシュランで、純正のアルミホイールを組み合わせている。
インパネはデザイン的に優れている上に、各種スイッチが使いやすく配置されている。
メーターは様々な計器を左右対称にレイアウト。油圧、油温も備わる6連タイプだ。
センターコンソールは上から下まで繋がっているような形状。シフトレバーの前にルーフの電動開閉用スイッチがある。
GTIと同様ハーフレザーのセミバケットシートが備わる。赤いカーペットもGTIと同じだ。
後席は独立した2座仕様で、別々に折り畳むことが可能。こちらも足元は狭いが、大人2人が座れる広さ。
トランクはシティよりかなり広く、間口も大きい。リッドも真上近くまで開く上ダンパー付で実用性が高い。

SPECIFICATION
1992 PEUGEOT 205 CTI
全長×全幅×全高:3705×1590×1375mm
ホイールベース:2420mm
車両重量:990kg
エンジン形式:水冷直列4気筒SOHC
総排気量:1904cc

最高出力:120ps/6000r.p.m.
最大トルク:15.2kg-m/3000r.p.m.
トランスミッション:4速A/T
サスペンション(F/R):ストラット/トレーリングアーム
ブレーキ(F&R):ディスク
タイヤ(F&R):185/60HR14

80年代の国産カブリオレ

この時代、国産3ドア・ハッチバックベースのオープンはこの他、フォード・レーザー・カブリオレ(1986)、ダイハツ・リーザ・スパイダー(1991)、スズキ・カルタスConv.(1992)などがあった。

NISSAN PULSAR EXA CONVERTIBLE
初代パルサーのクーペであるEXAを元に1985年、100 台限定で市販されたオープントップ仕様。

MAZDA FAMILIA CABRIOLET
6代目ファミリアに1986年追加されたオープンモデル。1.5リッターターボの5M/Tで色も一種類だった。

80年代の輸入カブリオレ

輸入車ではベルトーネ・リトモ・カブリオ(1981)、フォード・エスコートIIIカブリオレ(1983)、オペル・カデットEカブリオレ(1987)、ローバー200カブリオレ(1992)他が存在。

VW GOLF CABRIOLET
1979年誕生のゴルフIカブリオレは1993年まで生産された長寿車。写真は樹脂バンパーの前期型。

TALBOT SAMBA CABRIOLET
プジョー104がベースのタルボ・サンバ・カブリオレは1982年登場。1.4リッターエンジン搭載で850kg。