OTHERS

<その他コンテンツ>
ニューカー、ヤングタイマー、クラシック、オーナー、ライフスタイル、
カタログ、100ドロ、ミニカーなどなど
EVENT REPORT

モーガンの現在・過去・未来THRILL ON THE HILL

優に100年以上の歴史を誇るモーガンは、戦後生まれの新興ブランドや量産車メーカーとはまったく異なる時間を過ごして来た。その長い歴史の中には伝統と革新、理性と蛮勇、あらゆる要素が渾然一体となって詰まっている。そんな同社の一端に触れる旅。

TEXT / 石井昌道
SPECIAL THANKS / モーガンカーズ・ジャパン(http://morgan・cars.jp/)

進化し続けなければ、
100年以上もクルマを作り続けられない

モータージャーナリストを生業としていても モーガンと接する機会はそう多くはないのだが、いつも漠然とした憧れを抱いてきた。あれはまだ大学生の頃、自動車専門誌ティーポの編集部でアルバイトをしていたときにオーナーズクラブの取材に同行し、オーナーの方々の深いモーガン愛に触れて「いつかは自分も」と刷り込まれたからだ。 

そんななか、モーガン本社があるイギリス・マルヴァーンで5年前から開催されているイベントを訪れる機会に恵まれた。『スリル・オン・ザ・ヒル』と名付けられたイベントは2日間に渡り、Day1は本社敷地でフ ァクトリーツアー、ステージでのエンジニアトークやライブが行われる。多くのモーガンがところ狭しと並べられマニア心をくすぐられるが、駐車場には移動遊園地が出現するなど子供も楽しめるように配慮されて いる。オーナーやファンだけではなく、従業員が家族を連れて職場を案内するという意味合いも強いのだ。生み出す自動車と同様に、会社も暖かみがあることをうかがわせた。

イベントDay2はヒルクライムだが、とくにタイム計測を行っておらず、オーナーそれぞれが自分のペースで楽しむのだという。それもまたモーガンらしいと思ったが、スリーホイラーには過激なオーナーも少なくなく、トライアルにすると危なっかしいから、という裏事情もあるらしい。

今回(2018年)の参加台数は2日間で900台にのぼった。50周年を迎えたプラス8がテーマとなっていたこともあり、エアロ8も含めて150台が参加したという。

現地では現行モデルの4台にも試乗した。 4/4、プラス4、ロードスターはクラシック・シリーズで基本的に同じプラットフォームを採用。1936年に誕生した4/4は、今でもベーシックモデルとして愛され続けている。フォード製1.6リッターのシグマ・エンジンを搭載して車両重量は795kg。165/80/15 の細いタイヤを履き、トレッドはF1222/R1384mmで全幅1630mmとナローなのが見た目にもわかる。プラス4はフォード製2.0リッターのGDIエンジンで927kg。タイヤは195/60/15でトレッドは1290/1440mm、全幅は1720mm。ロードスターはフォード製3.7リッ ターのサイクロンV6エンジンでタイヤは205/60/15、トレッドは1300/1390mm、全幅は1720mm。パワーがあがるごとにワイドになっていくが、それはフロントグリルの両サイド、ヘッドライトが備わる部分のパネルが横に広がっていることでわかる。

もう1台の現行モデルはモーガンの礎を築いたスリーホイラーだ。オリジナルが登場した1900年初頭のイギリスでは、四輪よりも身近で税制的にも有利な3輪のサイクルカーが流行した。現行モデルは2011年に復活したもので、ハーレーダビッドソン用のVツイン・エンジンをフロントに搭載し、ベルトドライブでリアを駆動する。2.0リッターで最大トルク129Nmは、585kgの車両重量には十分以上だろう。

最初にステアリングを握ったのはスリーホイラー。クラッチを繋いだ瞬間から力強く背中を押され、弾けるように加速を始めるが、回転上昇とともにパワーの頭打ち感が出てくるので、ポンポンと早めにシフトアップして低回転からの強大なトルクを味わったほうが気持ちいい。リアが1輪しかないから、ちょっと無茶をすれば簡単にホイールスピンするが、それを考慮してアンダーステア気味に躾けられており、コーナーを 攻めていっても無用な不安感はなく、案外と安定している。見た目からは想像できないほどに楽しいライトウエイトスポーツなのだ。ステアリングの切れ角が少なく、Uターンなどに苦労する以外はいたって乗りやすいのだった。

“最新のプロダクトが正義”というのは、
単なる幻想かもしれない

クラシック・シリーズのモーガンは今や雰囲気で乗るもので、スポーツカーとしてあんまり期待しちゃいけないよ、というような声を聞くこともあるのだが、それは本当なのかどうか、今回の試乗で確かめてやろうと思っていた。4/4 で走り始めてコーナーを2つ3つクリアしていくうちに「期待しちゃいけないなんて、そんなはずはない」という希望的な予想があたっていくことになる。コーナーへ向けてステアリングを切り込んでいくと、フロント外側のタイヤのたわみ始めからロールの進行、ヨーの発生といったコーナリングの一連が綺麗に繋がっていて旧き佳きライトウエイトスポーツの味わいが見事に表現されていた。スチー ルフレームのしなりまでバランスされているかのように全身でコーナーを駆け抜けていく感覚が気持ちいい。ステアリングから伝わるインフォメーションも繊細で良かった。

4/4は軽量で速さ的に不満はないものの、プラス4の中・高回転でも元気なエンジンを味わってしまうとこちらもいいなと思わされる。コーナーだけではなく、街中での日常的な走行や直線路でも楽しめるからだ。

ロードスターのV6は迫力満点で、スロットルを床まで踏みつけるならそれなりに集中しなければならない。そのジョンブル魂的な蛮勇も魅力だが、豊かなトルクを生かして余裕のクルージングをこなすほうが似合っている。エンジンはあまり回転落ちがいい部類ではなく、ギア比の関係もあって、全開で素早くシフトしていこうとするとリズムが合わなかったりするからだ。

プラス4、ロードスターとタイヤが太くなっていくにつれ、ハンドリングのバランスは変化していく。2台はパワーステアリングを装着(!!)していることもあり、微舵域では手応えがあまりなく、そこからタイヤがグイッとグリップするので、コーナリングの流れが少し唐突となる。 4/4 のように見事なバランスからは外れていくが、それでも癖を掴んで乗りこなしていくうちに手懐ける楽しみが生まれてくる。モアパワーはスポーツカー乗りの永遠の欲求。大きなエンジンを搭載してちょっと不器用な感じになっても止められないというのも、イギリスのスポーツカーの伝統と言えるだろう。BMW V8 搭載モデルは残念ながら供給側の都合もあって生産終了となってしまったが、4気筒やV6で縁の深いフォードから、マスタング用V8を調達しての新型車が登場するという予測はある。  モーガンは伝統を守り続けるだけではなく、素晴らしきスポーツカーの世界を続けていくために、新しいチャレンジをも厭わない。過去には燃料電池車のコンセプトカーを発表したこともあり、スリーホイラーの EVすらを発表している。モーターはほぼ無音だが、ドライブベルトの音が意外と楽しいとエンジニアは笑っていた。本格的な電動車の時代を迎えるにあたって、自動車業界は100年に一度の大変革時代と騒がしいが、100年以上の歴史を誇るモーガンは、どっしりと落ち着いて構えているようにも思えるのだ。

1 2