バリアントの純正オプションだったパネルバン
空冷フォルクスワーゲンのモデルの中でも根強い人気を誇る、タイプ3バリアント。このモデルにパネルバンが存在したのはご存じであろうか?
このモデルをレストアしたのは、タイプ3の専門店として世界でも名を知られている横浜の『トーアインターナショナル』。ヨーロッパで希少なモデルが売りに出ていることを知り購入。日本に輸入して、1968年モデルをベースに66年US仕様へと、約3年かけてレストアを施した。

このパネルバン、じつは当時の純正オプション仕様“M265”を指定してファクトリーにオーダーされていたモデル。バリアントのボディのリアウインドウにパネルを溶接することでパネルバンとしている。後部座席も残されているが、それを倒すことで広大なカーゴスペースを確保できる仕様になっている。またリアのサイドパネルにはベンチレーターがあり、空気を取り入れられるようになっているなど、細かな配慮もあったようだ。
あくまでも実用車であり、モールなどの豪華装備は用意されていなかった。スイスなどでは郵便車としてもオーダーされていたモデルだが、現存している個体は非常に少ない。

『トーアインターナショナル』向井氏の手によってレストアされた68年式は、ボディカラーをL282ロータスホワイトからL87パールホワイトに変更。足まわりを5穴にしてMOONEYES製スピードマスター15インチホイールを履いている。またサイドにはヨーロッパモデルのウィンカーが備わり、細かなディテールに拘っている。インテリアもTMI製の生地で張り替えられ、スペシャルオーダーしたGene Berg製シフターに変更。見事、66モデル仕様へとディテールを変更している。
このクルマは2019年7月に完成。アメリカに輸出され、カリフォルニアでデイリーカーとして向井氏が乗ることが決まっているため、エンジンも1641ccにエクスチェンジ。荷物を満載してイベントなどで活躍する予定だ。歴史を調べれば調べるほど奥ゆかしい、稀少な特別仕様車である。

希少なオプション仕様、M265。パネル側の裏側もスチール製でシンプルな構造になっている。

リアのシートを倒すと、広大なカーゴスペースが出現する。オプションでウッディな背面素材を選ぶこともできたようだ。

シャシーナンバープレートの刻印には1968年5月に生産されたことが明記されている。

ダッシュパネルは66年式仕様にモディファイ。Gene Berg製シフターにはTOAの刻印が入れられた。シートはTMI製。

ボンネットの中まで綺麗にレストアされた。クリーンなインナーパネルも今では希少なNOSパーツ。

ウィンカーはスタンダード仕様のブレットタイプが備わる。

アメリカで牽引ができるようにヒッチメンバーも用意。

ドアパネルも66年式スタンダードのNOSパーツと交換されている。

エンジンは1641cc、ストレートカットのギアに変更しトルクアップを図っている。