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孤高のV8、それぞれの道PORSCHE 928 S4 & LOTUS ESPRIT V8

ポルシェの市販車の歴史で初めて、V8エンジン搭載車として計画された928。一方、ロータス・エスプリの長いモデルライフの最後を飾るように登場したエスプリV8。世紀末を象徴するような、これらのクルマでしか味わえない世界観を感じてほしい。

TEXT / 吉田拓生 PHOTO / 宮越孝政
SPECIAL THANKS / WANNA DRIVE(http://www.wannadrive.net/)/ポルシェ, オーセンティックカーズ(https://authentic-cars.com/)/エスプリ

孤高のV8、それぞれの道

ともに1970年代の基本設計を持ち、多くの空力付加物を追加し、リファインを繰り返した最終型に近く、そして何より専用設計のV8エンジンを搭載する。共通項の多いポルシェ928 S4とロータス・エスプリV8は、世紀末のスポーツカーシーンを象徴するスポーツモデルである。

「昔憧れたよ~」と言うなかれ。どちらのモデルも現代に通用するスタイリングやドライバビリティの持ち主というだけでなく、現代のスポーツカーを凌駕するほどのコストが掛けられ熟成された両雄なのだから。

ポルシェ928 S4というクルマを理解するのに、スペックシートを読み込む必要はない。硬質な革巻きステアリングを握って少し走らせるだけでこのクルマが秘めたとてつもない「密度」がわかるはずだ。928のエンジンは水冷だが、冷たい鉄が車両全体に行き渡ったような密度は空冷の911と肩を並べるものなのである。

現代のクルマは7年ほどでフルモデルチェンジを迎えることが多いが、20世紀の末頃は違った。特にスポーツカーは長い期間熟成されていくのが常で、ポルシェ928の場合1977年にデビューしてから1995年の販売終了まで、実に18年もの長きに渡って作り続けられ、リファインが繰り返されたのである。928の優れたポイントは、その長いモデルライフを全うしてもなお新鮮さを失わなかったスタイリングの優秀性だろう。

今でこそ2シーターから4ドアサルーン、SUVまで何でも揃っているポルェだが、1980~90年代当時のラインナップはエントリーモデルの944、伝統的な911、そしてグランドツアラーの928という3本立てだった。どのモデルも基本は2+2シーターだが、確かに928のリアシートは、荷物置きにしか見えなかった911のそれと比べればいくぶんラグジュアリーに見える。

外観と同様に、928 S4はドライバーズシートに座り周囲を見渡してみた場合でもあまり古さを感じさせない。全体がなだらかに傾斜し、そのままダッシュパネル中央がセンタートンネルのラインに繋がっていくコクピットは90年代の国産スポーツカーによくあるスタイルだが、その元祖が928であることは容易にわかる。メーターナセル全体がステアリングチルトに合わせて上下するアイデアも多くのコピーを生んでいる。

今回の928 S4はオプション満載なのか上質な革内装を与えられていたのだが、製造から27年もの歳月が過ぎ、7万3000kmを走行したあとでも、内装のヤレは全くと言っていいほど感じられなかった。やはりポルシェのクオリティはとてつもないのだ。

スポーティなボアストローク比を持ったV8エンジンだが、始動させてみると音、振動共に少なく迫力は感じられない。A/TのシフトレバーをDに入れ走り出すと、なんともゆったりと加速しはじめる。それもそのはず、ポルシェ928に用いられるA/Tはメルセデス製であり、ギアは4速あるがメルセデスの定石通り2速発進の設定になっているのである。

だから高速道路に合流して、80km/hを越えるまでは少し待つが、そこから先はトップギアのまま面白いようにスピードが伸びていく。その際の振動や風切り音も驚くほど少ない。スピードメーターに300km/hまで目盛りが振られた928 S4はアウトバーンを駆け抜けるための超高速ツアラーだ。

一方、真っ赤なロータス・エスプリV8は、ポルシェ928 S4より9歳も若く、そのミレニアムな雰囲気がスタイリングに良く現れている。928もエスプリも、70年代に誕生したスポーツカーだが、徐々に進化していく中で最も大きく変わったのはラジアルタイヤの性能とエアロダイナミクスだった。実際に、80年代の中頃にロータスがエスプリのスタイリング変更を画策した最大の理由は、ターボによる大パワーに対抗するためのダウンフォースの増加だったのである。

70年代後半と言えばオイルショックから立ち上がっていく最中であり、またライトウェイトというロータス・ブランドのポリシーから考えても4気筒は正しい選択肢と言えた。だが90年代ではどうだったのか? 特にロータス伝統のバックボーンフレームと、急激にパワーが立ち上がる4気筒ターボの相性は神経質で、乗りこなす人の腕を選んだのだ。

だが今回試乗する個体は、エスプリの最終期に華を添えたV8である。3.5リッターのV8はターボ過給され350psを発揮している。軽くリッター10psを越える現代のターボ・エンジンに比べればいくぶん控えめに感じられるが、実際はどうか?

寝そべるように低いコクピットだが視界は良好で、タイヤの位置も把握しやすい。鉄の塊のような928 S4と比べれば、エスプリV8は羽根が生えたように軽く、加速も鋭い。

スロットルの踏みはじめこそターボ特有の掃除機に吸い取られるような加速感を見せるが、その先は4気筒ターボのエスプリや、フェラーリF40のようにドッカーンとパワーが炸裂する性格ではなく、回転に比例してパワーが増していく。だからこそスロットルの動きにどこまでも忠実で、ロータスらしいドライバビリティが確保されているのである。

エスプリV8は、ついに念願のV8エンジンを搭載したことで「名実ともにスーパーカーになった」などと表現されることもあるが、実際は「ロータスとしての完成度が高まった」と言った方が正しいクルマなのである。ポルシェ928 S4はファーストコンセプト通りのGTだし、エスプリV8もまた、初志に忠実なライトウェイトスポーツカーだったというわけだ。

近年は古めのスポーツカーの価格高騰が問題となっているが、幸いなことに、928やエスプリは適正な価格が保たれたモデルといえる。

ここまで手間暇かけて作り込まれ、しかも熟成されたモデルは現代のスポーツカーには存在しない。本当のクルマ好きならば、少し古めのモデルの本質に惚れ込むべきだ。

PORSCHE 928 S4

ポルシェが渾身で作り込んだ高速ツアラー

70年代半ばのデザインと思えないほど斬新なポルシェ928のスタイリング。S4は前後のスポイラーを追加し、時代とパワーに見合った空力特性を獲得している。
モダンな928のリアスタイル。一体感のあるキャビンがリアに向けて絞られるシェイプは見事だ。
後の968にも受け継がれることになる928のヘッドランプ。目玉を出すと911にも通じるポルシェの顔になる。
エスプリと同じくフェンダーリップを追加して太いホイールを履く。
1977年に4.5リッターSOHCとして登場した928専用のV8は、1985年にDOHC化され、最終的に5.4リッターに到達した。928 S4のスペックは5リッター/320ps。
後の日本製スポーツカーに大きな影響を与えた928のコクピットデザイン。
この個体のインテリアは丁寧に革が張り込まれ、シフトノブの蛇腹まで革を縫い合わせて作られている。驚くべきクオリティの高さだ。
明るく広々としたコクピット。リアシートは911よりも少し広めだ。
ワイパーモーターはボディ側、ワイパー自体はゲート側についており、閉めることでシステムが噛み合う。

SPECIFICATION
1991 PORSCHE 928 S4
全長×全幅×全高:4520×1836×1282mm
ホイールベース:2500mm
トレッド(F/R):1551/1546mm
車両重量:1600kg
エンジン型式:水冷V型8気筒DOHC
総排気量:4957cc

最高出力:320ps/6000r.p.m.
最大トルク:43.9kg-m/3000r.p.m.
サスペンション(F/R):ダブルウィッシュボーン/セミトレーリングアーム
ブレーキ (F&R):ベンチレーテッドディスク
タイヤ(F/R):225/50ZR16/245/45ZR16
新車時価格:1390万円

LOTUS ESPRIT V8

GTI譲りのスポーティさを
ライトな気分で味わえる

ジウジアーロのオリジナルデザインを活かし、ピーター・スティーブンスが手掛け1987年デビューの2代目エスプリ。V8モデルは1996年に登場している。
リアボディの印象を大きく変えるリアスポイラーがエスプリV8の特徴となっている。
いかにもスーパーカー然としたヘッドランプ。現代のクルマにはなくなってしまった意匠だが、古さは感じない。
ジウジアーロからスティーブンス・ボディにシフトして最も変わった部分は空力。車体下側のスポイラー類に進化が見える。
トヨタAE86譲りのテールランプが有名なリアビュー。
設計年次を考えればかなり大き目な17インチホイールを履くため、フェンダーにリップが追加されているが、ボディとのバランスは良好。
エスプリのV8エンジンは自社開発のオールアルミ製。クランクシャフトはスポーツカー用V8の象徴であるフラットプレーンタイプとなる。
寝そべったドラポジは全てのエスプリに共通する。ドアインナーやシフトゲートにボディと同色のパネルが奢られ、色気を醸し出している。
コクピットに余計なスペースは何もないが、サイドシルが低く乗り込みは容易だ。

SPECIFICATION
2000 LOTUS ESPRIT V8
全長×全幅×全高:4369×1883×1150mm
ホイールベース:2420mm
トレッド(F&R):1520mm
車両重量:1380kg
エンジン型式:水冷V型8気筒DOHCターボ
総排気量:3506cc

最高出力:350ps/6500r.p.m.
最大トルク:40.8kg-m/4250r.p.m.
サスペンション(F/R):ダブルウィッシュボーン/セミトレーリングアーム
ブレーキ(F&R):ベンチレーテッドディスク
タイヤ(F/R):235/40ZR17/285/35ZR18
新車時価格:1180万円

PROFILE/吉田拓生

新旧を問わずスポーツカーに造詣の深いモータリングライター。ちなみに本人は実生活でもアシはドイツ車、趣味はイギリス車で使い分けている。