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NEW CAR

シトロエン流、
最新・最良のベーシックカー
CITROËN C3

唯一無二の個性的なデザインをまとってデビューした3代目シトロエンC3。新世代シトロエンを象徴する外観もさることながら、フレンチ・ベーシックカーとしての伝統をしっかり引き継ぐ走りにも注目したい。

TEXT / 斎藤慎輔 PHOTO / 神村 聖
SPECIAL THANKS / グループPSAジャパン(https://www.citroen.jp/

シトロエン流、
最新・最良のベーシックカー

WRCの2018年シーズンにおいて、しばらく成績の振るわないシトロエンに、10月のラリー・カタルーニャで優勝をもたらしたのは、スポット参戦のローブだった。こうなると、WRカーとしては妙にフロントセクションが上下に分厚く思えていたC3が、なんだか迫力を増して見えてくるから不思議なものだ。この、二段重ねの如き独得のフロントフェイスこそが、今のシトロエンの顔であり、2019年に日本へ導入されたC3エアクロス、C5エアクロスなどが加わったことで、さらなる認知も進みそうだ。

日本におけるシトロエンの最新ラインナップを見てみたら、いつの間にかC4は落とされており、このC3とC3エアクロスSUV、C5エアクロスSUV、それに3列シートのグランドC4スペースツアラー、そして最近加わったベルランゴとなっている。

確かに、他とは違うとか、極めて個性的であることがシトロエンであるかのようなイメージを強く抱く日本市場において、C4は何よりデザインに特徴が乏し過ぎた。この時期は、シトロエン自体が明確な方向性を見失っていたようにも思えるが、プジョー、シトロエン、DSブランドが、それぞれに明確なポジショニングと差別化を打ち出して、その3ブランドの中で、最もベーシックで、価格的にも抑えたものとするといった話だった。もしやただの安普請グルマになってしまうのか、と心配されたものだ。だが、それこそベーシックカーの本流であるBセグメントに属する新型C3によって心配は払拭されたばかりか、日本にも限定導入されたC4カクタスから始まったスタイリングの方向性が、強い個性の中にも親しみやすさを備えたものとなり、単に変わっているといった観点からではなく、デザインから選ばれるところまできたのは想像以上だった。

クロスオーバー的な腰高感を錯覚させるデザインだが、実は全高は2代目C3より35mm低くなっている。全幅も20mm拡大しただけの1750mm。

と、日本で2017年7月にモデルチェンジされたC3を見て、その価格を知った際には、これは日本におけるシトロエンの久々のヒットになるかも、と思ったものだった。先代C3の販売台数が僅かに留まっていたこともあって、前年比では大幅な増加になり、それがそのまま日本でのシトロエンの販売台数を押し上げることになったのだが、導入された時に試乗した際には、残念だけど、これはとても誉められない、推せない、と落胆したというのが、本当のところだった。

その最大の要因は、ボクがクルマの動的な質の入口であり、要であると捉えているステアフィールにある。電動パワステのモーター出力とその制御があまりにも稚拙で、油圧から電動パワステへの変換期の初期によくみられたモデルのような、旋回時のみならず直進時でも操舵力が不自然に変化し続けるという、ステアフィールとそこから得られるインフォメーションにおいて、不出来の典型のようなものだったからだ。スタイリングや雰囲気、加えて動力性能や、さらに価格からは、ちょっといいかもと思っていただけにショックも大きかったが、この時にC3に関する試乗記等の依頼がなかったのは、むしろ幸いだと思っていた。

今回も、そこをどう評し伝えるべきかと悩まされるだろうと思っていたのだが、3週間以上に渡り手元に置いて乗れることになったC3は2018年5月に登録されたもので、日本に当初導入された車両とは全く異なる、好ましい印象をもたらすものとなっていた。メーカーからインポーターに対しては、届け出上で必要のない細かな仕様変更程度の内容は全く知らされないのは、プジョー・シトロエンに限らず普通のことで、いつ何をどう変えたかといった回答はまず得られない。ただ、初期のものが不具合でなかったとすれば、制御の見直しだけではなく手が入ったのではないかと想像できるほどの、大きな変化であった。もしかすると、2018年3月に装備を充実させて価格変更をしたモデルからだろうか。

ともかく、このおかげで、C3がBセグメントの輸入車において、俄然魅力ある一台に思えてきたことだけは確かだ。C3に限らずこのクラスの輸入車は、まずほぼ全車がターボ付エンジンを搭載しており、動力性能の余裕は、国産Bセグメントを一枚も二枚も上回る。かつてのフランスのベーシックカーは、少ないパワーをめいっぱい使って走らせるといったものだったが、いまや低回転域から過給効果を十分に得られるエンジンと、プジョー・シトロエンでは、アイシン製の6速A/Tとの組み合わせにより、高速域から登坂までまず不足を感じさせない。

また、全開にするとDレンジのままでも最高出力発生回転の5500r.p.m.を越えて、メーター上はレッドゾーンに飛び込んでさらに上の6200r.p.m.近くまで回り変速する。加速力の面からはもう少し早いタイミングで変速したほうがよいだろうと思うくらいだが、このあたりがただ効率で決めていく日本車との違いか。一方、Sモードもあるのに、スイッチはドリンクホルダーの奥にあり、その気になった時に、とてもすぐには押せないような在り方も、ちょっと笑えてしまう。

角の丸いやわらかな四角がデザインモチーフとして随所にちりばめられる。

気になるところでは、旧態依然としたエンジンマウントの在り方は、アイドリングや、エンジンスタート/ストップ機構の作動時の振動を抑える反面、エンジンやA/T変速によるトルク変動での前後揺動は大きく、ダンピングを緩やかにしたサスペンションと相まって、加減速時、制動時にピッチングを誘発する要因ともなっている。なので、静止させる際にも、発進の際にも、ユサっとした動きを伴いがちだ。このあたりをして、フランス車らしいユルさとか柔らかさと、贔屓目の捉え方をしてくれる人もいるようだが、これは駆動伝達ロスにも繋がるものなので、そろそろ何か策がほしい。

一方で、乗り味と乗り心地に関しては何の変哲もないシンプルなサスペンションにして、よく足が動くと感心する。前述したピッチングの大きさを除けば、このボディサイズ、この車重にして、Dセグメントはおろかその上のセダンのような路面の凹凸への追従感を備え、バネ下だけで細かな揺れの大半を吸収している感覚だ。ロールは小さくないが、沈み込みから戻りまでG変化に対しての高いリニアリティを備えており、好ましくなったステアフィールは、直進時の落ち着いた座り感だけでなく、路面、操舵状況に応じた反力もわかりやすく返してくる。

乗り心地に関していえば、ホールド性よりも幅広い面で受け止めることを重視したシートも効いている。ちなみに、今回の試乗車には、質の高い人工皮革を使った専用シートカバーが装着されていた。このシートカバーは、クッション面のしわを目立たせないようにしながら適度な張力に保たれ、シート本来の性能を極力損なわないようにしてある。また、シートバックにはポケットもあり便利だ。

装備充実を機にSHINEに採用されたインテリジェントハイビームも、この種のものとしては状況に応じた上下の切り替えが素早く実用性が高かった。ただし、ライトがいまだハロゲン球というのは、LED等の明るいライトに慣れた身には暗く感じられ、そろそろ進化させてもらいたい。

オプションのナビを含め、スイッチ類の使い勝手の悪さなど、課題はいくつかあるが、それでも日本語対応しているだけでも、ちょっと前のフランスのコンパクトカーからは考えられないほど、機能も性能も進化し、ドライバビリティを犠牲にしてでも燃費にひた走る同クラスの日本車の多くを超える。その上での、このデザイン、雰囲気、そして価格だ。本音で、ちょっといいじゃないのと思う。

高く立ち上がったフロントエンド。ランプ類は上からデイライト&ウインカー、ヘッドライト、フォグランプ。
ブラック&クロームのアロイホイールにタイヤは205/55R16を履く。
C4カクタスから採用されたボディサイドのエアバンプはドアを傷から守る役割。
立体的なデザインのテールランプ。その下は外側がリアフォグで内側がウインカー。

1.2リッター直列3気筒となったダウンサイジングターボは最高出力110ps/5500r.p.m.。最大トルク20.9kg-mは1500r.p.m.から発揮され、走り出しから高速域まで軽快。

丸みを帯びた四角形が特徴的なコクピット。
メーターもポップな雰囲気。中央にはデジタル表示が配される。
センターには7インチのタッチスクリーン。ナビやオーディオのみならず、空調もタッチスクリーンから操作する。
旅行鞄のストラップのようなドアハンドル。日常的に触れる部分が洒落ていると所有する満足感も高まる。
ドライブ中の風景を簡単に撮影できるコネクテッド・カムという遊び心も。
撮影車はモンブランカラーの専用シートカバー(オプション)を装着。
後部座席の足元や頭上にも必要十分+αの余裕がある。
間口の広いラゲッジルームは300リッター、後席を倒せば最大922リッターまで拡大する。

SPECIFICATION
CITROËN C3 SHINE
全長×全幅×全高:3995×1750×1495mm
ホイールベース:2535mm
トレッド(F&R):1480mm
車両重量:1160kg
エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ
総排気量:1199cc

最高出力:110ps/5500r.p.m.
最大トルク:20.9kg-m/1500r.p.m.
サスペンション(F/R):ストラット/トーションビーム
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤ(F&R):205/55R16
価格:254万円

PROFILE/斎藤慎輔

確かな洞察とブレない評価軸に基づいた車両評価、特に動的性能の分析には定評があり、ファンも多いモータージャーナリスト。