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小さなボディに最新の制御技術SMART fortwo & forfour

シティ志向のマイクロカーとして誕生したスマート。ショートホイールベースのRRレイアウトという特徴的なパッケージは、どこまで進化したのか?

TEXT / 斎藤慎輔 PHOTO / 神村 聖
SPECIAL THANKS / メルセデス・ベンツ日本(http://www.smart-j.com

小さなボディに最新の制御技術

スマートが生まれたのは、もともとは当時、ファッションウォッチが絶大な人気を博していたスウォッチの構想によるものというのは、よく見聞きする話ではあるが、この種のシティカー、マイクロコンパクトカーの発想は、それ以前からも、そしてこれまでも、よくあった。

たしかに、ふだんクルマに乗っているのはドライバー1人か、せいぜい2人。そんな大きなクルマはいらないのでは?というのは自然に生まれてきそうな発想ではあるが、現実では、世の中のクルマの使用形態はそんなに単純ではない。

各国で税制はいろいろあれど、サイズの大小に関わらずクルマを持てば、なんらかの税金が課せられ、保険が必要となり、保管場所の確保が求められ、そして走行に伴って諸々費用が発生する。

となった時に、趣味やある程度の実用性の犠牲は覚悟の上で所有するスポーツカーならいざしらず、小さいことが取り柄の2人乗りカーを積極的に選べる人がどれだけいるのだろうか。という現実の中で、スマートの販売は思惑通りにはいかず、発売当初から赤字を垂れ流した。

結局、早々にスウォッチはこのスマート事業から手を引き、パートナーであり実質的に車両の開発を行っていたダイムラー・クライスラー(当時)が事業を引き継いだ。その後も、三菱との協力関係の中で、4人乗りで高い実用性も盛り込んだスマート・フォーフォーを発売するも、販売超不振で約3年で製造中止となるなど、厳しい状況が続いていたのが、2000年半ばまでのこと。

もっとも、経営者や株主の思いを外にして言わせてもらうならば、こういうクルマが出てこないと、クルマの世界はツマラナくなる。スウォッチカーと呼ばれた初代も、そしてその思想もデザインもそのままに引き継がれた2代目でも、いかにもセレブといった雰囲気の女性が、都心で颯爽と買い物の足として使っている様子に遭遇したりすると、「カッコエー」と思っていたりしたものだ。

2代目スマート・フォーツーでは、軽規格に収めた日本専用仕様を開発するなど、市場適合への努力も見られるようになり、絶対的な台数はともかく、多少なりとも認知度は高まったように思えていたが、2代目の発売から数年を経て、あの生産状況の中で果たして次期型はあるのか、などと思っていたら、2010年4月に、ルノー・日産アライアンスとダイムラーAGで、電気自動車や次世代トゥインゴと次世代スマートでの協業を行うという発表がなされたのだった。

この協業発表の以前に、すでに次世代トゥインゴはRRで開発が始まっており、そこにスマートが「渡りに船」……ではないにせよ、開発と生産台数確保と双方の思惑がそれこそWin-Winとなったようだ。そこでの各々の独自性の確保が難しいところだが、スマートに関しては、スマートの本質ともいうべき2シーターのスマート・フォーツーを設定しているというところが、決定的な差となる。

フォーツーの日本への導入は、後に追加設定されたカブリオレを含めて、台数限定という形を採ってきたが、2016年12月からフォーツー・ターボが、いわゆるカタログモデルとして通常ラインナップされていた。日本向けトゥインゴが、装備がシンプルなM/T仕様を除き、全てターボエンジンを搭載するので、プレミアムコンパクトを標榜するスマートとしても、ターボエンジン搭載モデルを主力としていく方向だったようだ。

では、スマート・フォーツー・ターボだが、量産車かつ最新レベルの安全性と装備を備えるものとしては最も全長の短い乗用車で、たしかに、都心はもちろん街中での機動力は抜群だ。1875mmというホイールベースは、キャブオーバータイプの軽トラに近いが、全長はそれよりも600mm以上短いのだ。さらに前後の超ショートオーバーハングにRRの強みを活かした最小回転半径3.3mという小回り性は、ほぼどこでもUターンが切り返しなしで可能となる。もちろん、法規の中でかつ安全を確保しての話だが、大袈裟に言えば原チャリ感覚のごとき自在な動きが可能だったりする。

となると、直進安定性はどうなのか、というところだが、超ショートホイールベースにRRの重量配分が物理的に辛いのは当然で、路面外乱や横風といった要素の直進性への影響は、軽自動車の多くに比べても顕著だ。ただし、80km/h以上では、ESCを使って各輪のブレーキを必要に応じてどれか掛けることで、直進時、あるいは低Gでの旋回中にヨーレートが大きく揺らぐことを防ぐ。これは、フォーフォーでも、実はトゥインゴでも同じシステムを導入しており、RRの根本的な課題を、最新の制御を駆使して、できるだけ抑え込もうとしているわけだ。

もっとも、決して高い出力を備えるわけでもないのにリアからの蹴り出し感が顕著な点や、旋回においてわずかな操舵応答遅れから、最終的にオーバーステア方向に転じていこうとする動きなど、いかにもRRらしさを備えるのは、他にはない個性として楽しいともいえる。これはフォーフォーでも、もちろん同じだ。

あたかも後輪を中心に回るかのような回頭感を備えるフォーツーと比べ、フォーフォーでは、620mmという大きなホイールベースの差が、実際の動きでも感覚でも結構な違いとなるのだが、それでも、このクラスの大半のFF車あるいはそれをベースとした4WDとは別物だ。

これを純粋に評価すれば、接地性の変化にも動きにも感覚にもクセがある、となるのだが、好きか嫌いかでいえば、ボクは嫌いではない。端的にいうと、退屈なハンドリングでないという話である。

一方、どうしても気になるのは、リアフロア下に横置きする3気筒エンジンのトルク変動と6速DCT及びトランスアクスルのクラッチ制御、変速制御の際に生じるショック、あるいはスナッチだ。

エンジンの振動伝達をどこまで抑えるかとの妥協点だろうが、3気筒エンジンはこの点では厳しいか。どうしてもソフトめのマウントで逃げることになるのだろうが、とにかくパワーユニットが前後に揺動する。897ccという小排気量ターボは、イニシャルトルクの絶対的な細さと、過給が立ち上がった後のトルクとの差もあり、発進時にDCTのクラッチ制御が微妙に掴んだり離したりする様子に繊細さは感じられない。また、走行中は、アクセルの緩やかなオン・オフでもパワーユニットが揺れてギクシャクする。

ただし、我々がお借りする試乗車は、だいたいが荒い走りをされていたことが多く、学習制御においてエンジンやDCTの制御も、その走りのパターンに合わせてしまっていることが予想される。今回は、フォーツー、フォーフォーそれぞれ一週間以上手元において、日常的な走行パターンで穏やかに乗ったので、いずれも後半は少し改善された感はある。

ちなみに、超ショートホイールベースのフォーツーは、ギクシャクがより明確なピッチングとして現れる。なので、スタート&ストップシステム(アイドリングストップ機構)は使う気になれず、環境、燃費のことは多少気にしつつも、常にオフにしていたというのが実際である。

つまり、走行面ですぐに指摘できてしまうような荒い面も残されている。これは、比較のためスマートの後に乗ったトゥインゴも同様であった。在り方自体が個性豊かであることは大賛成だが、走りの質のさらなる煮詰めを進めてほしいと感じた。

SMART fortwo

2人乗りのスマート・フォーツーは2015年秋に日本発売。2020年モデルからは全て電気自動車(BEV)となり、日本でも「スマートEQ」として秋から導入が予定されている。

超ショートオーバーハングで最小回転半径はわずか3.3m。タイヤは15インチで前後異サイズ。

フォーツーのドアはサイズが大きく、日本のように駐車スペースが狭い場所での乗り降りに際しては、コンパクトなボディのメリットをスポイルしかねない。

フォーツーとフォーフォーで搭載するエンジンは共通で、ルノー・トゥインゴとも同じユニット。リアのラゲッジルーム下に搭載されている。0.9リッター直列3気筒ターボは90ps/13.8kg-mを発揮し、軽量なボディには必要十分な加速を与えてくれる。

シンプルな構成ながらポップさと上質感を両立したコクピット。右上に見えるのは回転計&時計。

狭さを感じないというより、ゆったりした座り心地のシート。

テールゲートは上下分割式で、ラゲッジ容量は260~350リットル。

SPECIFICATION
SMART fortwo turbo
全長×全幅×全高:2755×1665×1545mm
ホイールベース:1875mm
トレッド(F/R):1470/1430mm
車両重量:960kg
エンジン:直列3気筒DOHCターボ

総排気量:897cc
最高出力:90ps/5500r.p.m.
最大トルク:13.8kg-m/2500r.p.m.
サスペンション(F/R):ストラット/ド・ディオン
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤ(F/R):165/65R15 /185/60R15

SMART forfour

2代目フォーフォーは2014年秋に本国で発売され、日本では2016年1月発売。ルノー・トゥインゴとシャシーやエンジンを共有する兄弟車。

フォーフォーの最小回転半径は4.1m。これも取り回し抜群だ。フォーフォーのタイヤは15インチで、ターボのみブラックの16インチを履く。

コクピットはフォーツーとほぼ同一。フォーフォー・ターボではステンレス製ペダルが標準装備される。

シートもフォーツーと同じだが、後席の存在が大きな違い。

ラゲッジスペースは185~975リットルでアレンジが可能。

SPECIFICATION
SMART forfour turbo
全長×全幅×全高:3550×1665×1545mm
ホイールベース:2495mm
トレッド(F/R):1445/1435mm
車両重量:1060kg
エンジン:直列3気筒DOHCターボ

総排気量:897cc
最高出力:90ps/5500r.p.m.
最大トルク:13.8kg-m/2500r.p.m.
サスペンション(F/R):ストラット/ド・ディオン
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤ(F/R):185/50R16/205/45R16

PROFILE/斎藤慎輔

確かな洞察とブレない評価軸に基づいた車両評価、特に動的性能の分析には定評があり、ファンも多いモータージャーナリスト。