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本気でスポーツするための
ヒストリックカー
AUSTIN A35

旧いクルマでレースやサーキット走行を愉しむ人が増えている。そのための専用車両を用意している人も多くなってきた。そこで、本気でスポーツ走行するために作られたヒストリックカーと、オーナーをご紹介しよう。

TEXT / 中島秀之 PHOTO / 奥村純一
SPECIAL THANKS / ACマインズ(http://ac-minds.com

本気でスポーツするための
ヒストリックカー

毎年9月にイギリスのグッドウッド・サーキットで行われる「グッドウッド・リバイバル」。観客まで当時のファッションを義務付けられるヒストリックカー・レース・イベントで、抜群の雰囲気の良さを誇る。

一方で参加者は、例え時価数億円の希少なマシンであっても、クラッシュ覚悟で本気のレースを戦うことで有名だ。様々なカテゴリーのレースが用意されているが、その中でも人気の高いものの一つに、セントメリーズ・トロフィーがある。これはいわゆるサルーンカー(ツーリングカー)のレースで、開催年ごとに1950年代縛りか1960年代縛りか異なるが、バラエティに富んだ車両が、ゲストのプロドライバーも交えて、排気量別のクラスごとに激しいバトルを展開する。

このセントメリーズ・トロフィーの1950年代縛りのレースで、最も熱い戦いを繰り広げるのが、オースチンA35だ。948ccのBMC Aタイプユニットを搭載したFRの大衆車で、1956~59年に作られた2ドアセダンをレース用に仕立てたマシンが、大挙して参戦するのだ。元々イギリス各地のヒストリックカー・レースで人気があり、現在では厳格なワンメイク仕様のマシンレギュレーションまで確定されているそうなのだが、2016年のグッドウッド・リバイバルのセントメリーズ・トロフィーは、A35生誕60周年を記念して、ワンメイクレースとして開催されたほどである。

で、このA35によるレースの人気を高めた功労者が、1960年代からツーリングカー・レースで活躍してきたベテラン・ドライバーのレイ・デービス(RAE DAVIS)だった。彼のファクトリーショップであるモトビルド・レーシングとレイ・デービス・レーシングが仕立てたA35は、毎年セントメリーズ・トロフィーで(クラス)トップ争いを展開。今もデービス本人やゲストドライバーが素晴らしい活躍を見せ続けているのだ。

グッドウッド・リバイバルのセントメリーズ・トロフィー。写真は2016年にA35ワンメイクとして開催された時のもの(撮影:藤原よしお)。

1956年にリリースされたA35。ノーマルの姿はご覧の通り、可愛らしいスタイルのごく普通の2ドアノッチバックのファミリーカーだ。

今回ご紹介する赤いA35のレースカーは、2004年のセントメリーズ・トロフィーで優勝した、レイ・デービスのマシンだ。愛知県岡崎市のイギリス車のスペシャル・ショップ「ACマインズ」が輸入した個体だ。驚いたことに日本のナンバーを取得しているため、公道走行が可能だ。そこで、近くの撮影場所まで運転させていただいた。

現在HRDCアカデミーで設定されているA35レースの規定と、改造した年次の古いこの個体が同一仕様かは不明だが、エンジンは現規定と同じCMES製1275ccで、スチールクランク&コンロッド、ビッグバルブヘッド、レース用ピストン、ウェーバー40φキャブレター、軽量フライホイールなどでチューン。ジャックナイト製ドグミッション、メタルクラッチ、コイルオーバーショックなども装備する。

さすがにカリカリかと思いきや、ほぼアイドリングからフラットで豊かなトルクを6000r.p.m.以上まで維持することに驚かされた。回転計のレッドゾーンは8500r.p.m.になっており、そこまで試しはしなかったが、あながちハッタリではないように思えたのも確かだ。現代のヒストリックカーレースでは、こうしたフレキシビリティが求められるということだろう。

低回転から高回転まで豊かなトルクをキープする性格のエンジンが気持ちいい!

もちろん各部はレース用に設えられており、極めてスパルタンだ。詳細は写真でご確認いただきたいが、こうしたマシン製作に手慣れたメカニックによる仕事であることがわかる。ただし国内で登録する際、運転席をクラシカルなローバックバケット(イギリスではシートは新しいフルバケットであることがほとんど)に交換したようで、その際ロールバーの斜めの部分が邪魔だったのか取り外されていた。

もしこのA35を入手したら、例えばサイドウェイ・トロフィーのようなレースにはそのまま出場できるはずだ。しかもナンバー付だから、自走でサーキットまで向かうことができる。エンジンはフレキシブルだし、足周りもそれほどハードというわけではないので、公道でも快適に走行できるだろう。

この魅力的なA35で、アングリアやマイナーなどとバトルするのはこの上なく愉しそうだ。ただし販売価格は500万円(2018年当時の販売価格)! その内容とヒストリーを考えれば安いかもしれないが……。

ディテール一つ一つが魅力的

ボディ形状はノーマルのままで、バンパーさえ残されているが、極端に低い車高がただならぬ迫力を醸し出す。エンジンをかけると、それなりに野太いサウンドを発する。

ンジンは、各部がチューンされた直4 OHV1275ccのAタイプ・ユニット。キャブはウェーバー40φ。

ミラーは左右とも、アルミでできたステーの上に、砲弾型のものが装着される。
CMESはA35ワンメイクのエンジンサプライヤー。ジャックナイトはギアボックス。
フロントバンパー下中央に備わるのは空冷式のオイルクーラー。
サスペンションはレース用に締め上げられており、スタビライザーも強化タイプのゴツイものを装着。ただし乗り心地はそれ程悪くない。
レッドロケット・スペシャルはこのクルマの愛称と思われる。
ドライバーでありチューニングも手掛けるレイ・デービス・レーシング。
前フェンダーにはドライバーの名前が2名入っている。
ホイールはウェラー製のスチールで、現在はヨコハマ製155/65R13の一般道用タイヤを装着していた。
インパネは、メーターやカットオフスイッチが追加された程度。ステアリングはモトリタの革巻き。
運転席には本来フルバケが装着されていたと思われるが、ローバックのクラシカルなシートに変更されていた。
スミス製タコメーターは常用回転域を上にして斜めに装着。8500r.p.m.まで回る。
アクセルペダルはOMP、残る2ペダルはチルトン製。ステップも作られている。
トランク内のフロアを切って低い位置に燃料タンクが備わる。燃料ポンプはシングルでミツバ製。