OTHERS

<その他コンテンツ>
ニューカー、ヤングタイマー、クラシック、オーナー、ライフスタイル、
カタログ、100ドロ、ミニカーなどなど
CLASSIC&YOUNGTIMER

逆インスタ映えなクルマにハマったオトコŠKODA 120L &
RENAULT 12 TL

世にクルマの達人と言われる人は多かれど、「ジミな欧州車」を好み、わざわざ自分で海外から入れてしまう人はあまりいないかも。それも2台も、さらに言うならその1台は旧共産圏のクルマだ。枯れ景色が似合うこの2台から見えた達人の“境地”を探る。

TEXT / 遠藤イヅル PHOTO / 奥村純一

逆インスタ映えなクルマにハマったオトコ

写真のベージュのジミなクルマを知っていたら、「これが日本に!」と感嘆すると思う。奥の緑のジミなセダンも、「これも日本に!」と驚くことだろう。しかも2台ともオーナーが同じだと知ったら、3度ビックリすること間違いない。そう、この2台は間違いなく2018年の日本にあるし、オーナーは同一人物なのだ。

ベージュのクルマの名は、「シュコダ120L」。シュコダは現在フォルクスワーゲンの元でVWのベースブランドを担っていることを知る人も多いはず。でもこのカタチのシュコダになると、知名度は日本では限りなくゼロに近い。それもそのはず、VW傘下に入る前の旧シュコダの製品で、そして「日本の有史以来初上陸」したクルマに違いないから! このシュコダ120Lは、こう見えてなんとリアエンジン(RR)というのも衝撃だ。

ルノー12も日本国内では生息数はかなり限られ、高性能版のR12ゴルディーニは数台が確認できるが、いわゆる「素」のR12となると数はさらに絞られる。そして知っている人にしてみたらただただ驚愕のこの2台は、ショップで売られていたのではなくオーナーの下山さん自らが海外サイトで探し並行輸入しているのも凄い。

濃いフランス車を乗り継いだ下山さんが至った境地は「欲しかったら自分で入れる」ことだったのだ。そんな下山さんが、クルマ趣味でも彼岸の域ともいえる「強烈にジミな欧州セダン」になぜ恋い焦がれたのかを知るべく、ステアリングを握り確かめてみることにした。

下山さんはシトロエンGS、GSA、BX、Dシュペールなどのハイドロモデル、ルノーではR4(キャトル)、R9(ヌフ)などを乗り継いできた。R9はその中でもジミで見た目はトラッドサニー的、知名度も日本では圧倒的に低いクルマだ。この段階で下山さんは既に十分「フランス車の達人」なのだが、長年「日本に入っていないけれど現地では当たり前のクルマ」に惹かれていて、それに乗ることを実現するためについに自ら輸入することにしてしまったのだ。下山さんがまず探したのは東独の「ワルトブルグ353」という共産圏のクルマだったが、思いの外価格が上がっていたためプラハからオランダに流れていたこのシュコダ120Lを購入したのだという。

1987 SKODA 120L

シュコダ120Lはシュコダ105/120系という車種の中の1.2リッター版(車名は排気量を示す)廉価モデルで、日本ではウルトラスーパーダイナマイト級にマニアックでレアなクルマだが、かつてのチェコスロバキアではカローラのようなクルマだった。僕も「現地では当たり前、日本では知られていない」系のクルマを何台か所有していたことがあり、しかもその手のクルマの最後の桃源郷は旧共産圏か南米だ! と思っていたので、下山さんがシュコダのRRモデルを買ったことに心から喝采を送りたい!

冷静になってシュコダ120Lをじっくり見てみる。競争原理が働かず進化や改良されにくかった共産圏の製品は、僕たち“西側諸国”の常識が通用しないところがあり、初めて触れる旧シュコダ製品の切ないほどのロークオリティにはむしろ感激した。四角いライトやウレタンバンパーで近代的な姿をしているが基本設計は1960年代のまま、エンジンは3ベアリングのOHV、内装の樹脂類も品質が低くパーツも浮いている。シフトフィールもグラグラだ。それでも日本に絶対に無いということ、共産圏で当たり前に乗られていたクルマという魅力と深い味わいの前には、それすら達人・下山さんにとっては「望んでいた通り」のものに違いない。

そして絶妙な色合いの緑メタが美しいルノー12も下山さんが並行輸入した一台で、こちらはドイツ仕様。外装は現地でボディ右側を修復、塗装も純正色で全て塗り直してあり素晴らしいコンディションだ。

1971 RENAULT 12 TL

ネット上では右側が写っていなかったが、現車を確認したところサビが多かったという(笑)。並行輸入って難しい(涙)。内装ではシートがレトロな生地に張り替えられているほか、樹脂類の状態がかなり良かったため状態は同じく抜群。メーターに刻まれた6.7万kmの数字も実走距離だと思われる。

R12は前後オーバーハングが長く、ルーフ後端が上がっているのにリアウインドウからトランクリッドはユル~い角度で下っているという変わったスタイルを持っているが、広い室内で高い実用性を持っていたことから当時の欧州ではかなり良く売れたクルマだった。設計が簡略なことからトルコやアルゼンチンなどでノックダウン生産されたほか、ルーマニアではダチアが「1300」という名前で2000年代半ばまで販売していた世界戦略車だったこともR12の優秀さを物語る。

実際ステアリングを握ってみると、とても良くできた実用車であることがわかる。粘ることで定評があるルノーのOHVエンジンは必要充分で、縦置きルノーの美徳で直進安定性もすこぶる良い。しかも乗り心地は低速域から優れ、乗って時間が経ってから「そういえば乗り心地がいいな」と気がついたほど。揺れが少ないので乗り心地の良し悪しにさえ気がつかなかったのだ(実話)。「これならハイドロいらないです」という下山さんと同意見だった。そしてうっすらと曇った天候のもと撮影ポイントにシュコダと並べてみたら、枯れきった冬の景色に2台の枯れた実用車はあまりにもぴったり。太陽が似合わないクルマ……!

このジミさは昨今流行りの「インスタ映え」とは程遠い“逆インスタ映え”な状態だけれど、きっとこのクルマたちが自身の地でこんな風景の中にいたのだと思うと嬉しくなった。それもまたジミ欧州車乗りの密かな喜びでもあるのだ。

OWNER/下山雅之さん

ルノー4、シトロエンGS、BX、Dシュペール、ルノー9などクセのあるフランス車を乗り継ぎ、ついに「欲しいクルマは自らの手で」という考えに至った達人。

1987 ŠKODA 120L

リアから眺めても、よもやこのクルマがRRだと思う人は皆無だろう。スタイリングのまとまりは良い。イタルデザインが関与しているとの説もある。

まさかのRRというだけでもオドロキなのに、ボンネット横開きなのはさらに驚愕! 腰抜けた!

リアに縦置き搭載される1174cc直4 OHVエンジンはジコフ製(日本での知名度ゼロ!?)キャブレターで52psを発生。上級版のLS/GLSでは58ps。

RRなのでエンジンがある位置にはトランクが。底は浅めだが積載力はありそうだ。スペアタイヤはこの下に吊られている。

165SR13サイズのタイヤを履くスチールホイールにセンターキャップを装着。中央にはシュコダのエンブレムが鎮座する。

インパネは近代的なデザイン。質感は低いが、各スイッチ類の操作性は良好。RRゆえ足元には何もなく、室内の広さに一役買っている。

メーター類も見やすい。最低限だがこれで十分。メーターにはチェコスロバキアの文字が踊る。

昔のタクシーなどで見られた玉すだれシートカバーが妙に似合う。クルマ全体がチープな作りなのにシートの形状が優れているのはさすが欧州車。

リアシートもしっかりと作られており、RRの恩恵で足元は広大。

モエポイント

日本にいる限り分離前の旧チェコスロバキア製品に触れる機会はごく限られているため、窓ガラスの「チェコスロバキア」の文字自体が貴重。ガラスにより刻印面が表側と裏側でバラバラだったりするのはご愛嬌。

スポーティなリアスポイラー……と思いきや、表面にはスリットが。なんとこれエンジンルームへの導風口。現車を見るまではさすがに気がつかなかった! ちなみにこのクルマは水冷でラジエターを前に備える。

MORE INFO.

西欧諸国にも輸出されたシュコダのヒット作品

旧チェコスロバキアのメーカー・シュコダは1895年に創立されたラウリン&クレメント社を祖とする歴史あるメーカー。現在はVW傘下にあることで知られる。今回取材したシュコダ120Lは、1964年登場の「1000MB」に端を発するRR車だ。シリーズ的には「105/120」と呼ばれ、1976年から1992年まで販売。1000MBの発展版「100/110」の後継車に当たるが、基本メカニズムは1000MBのそれを引き継いでいた。英国では「エステル」と称して売られていた。

SPECIFICATION
ŠKODA 120L
全長×全幅×全高:4160×1610×1400mm
ホイールベース:2400mm
トレッド(F/R):1280/1250mm
車両重量:875kg
エンジン型式:水冷直列4気筒OHV

総排気量:1174cc
最高出力:52ps/5000r.p.m.
最大トルク:8.7kg-m/3000r.p.m.
サスペンション(F/R):ウィッシュボーン/スイングアクスル
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤ(F&R):165R13

1 2