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同じ動力源を持つ異母兄弟たちLANCIA DELTA VS ALFA 155 Q4

アルファ155Q4がランチア・デルタと同じパワートレインを採用することはよく知られた話だろう。ランチア好きから見れば、155Q4は何となく気になる存在かもしれないし、アルファロメオ好きから見れば、デルタは逆に異質な存在として感じているかもしれない。今回はその2台を同時に試乗することで、その共通点と違いを改めて認識することとした。

TEXT / 森口将之 PHOTO / 山本佳吾
SPECIAL THANKS / 末続高弘(デルタ)/カーボックス横浜(155Q4/http://www.carbox.jp/

同じ動力源を持つ異母兄弟たち

フィアットは昔から、同じイタリア国内の名門ブランドを救済すべくグループ内に招き入れ、維持と発展に努めてきた。その結果、たとえばランチアではフェラーリやアルファロメオ設計のエンジンが積まれるなど、コンポーネンツの共用化が進んでいる。

ここで紹介するランチア・デルタHFインテグラーレ・エボルツィオーネ(取材車は限定車の5)とアルファ155 Q4も、2リッター直列4気筒ターボ+4WDというメカニズムを共用する。コンペティションシーンで活躍したこと、その活躍に同グループ内のアバルトが大きく関わっていたことも一致する。

2台が積むエンジンは、アウレリオ・ランプレディがフィアット124スポルトクーペ/スパイダーのために生み出した1.4リッターDOHCを源流とする。その後このエンジンにはスーパーチャージャーやターボチャージャーが装着され、実戦に送り込まれた。ランチアのベータ・モンテカルロ・ターボやラリーでチャンピオンシップを制覇し、その経験を市販車にフィードバックしていったこの時期、アバルトの代表を務めていたのがランプレディ自身だったことは興味深い。

一方の4WDシステムはジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザインに源流がある。1980年のトリノ・ショーに、デビューしたばかりのパンダに独自設計の駆動系を組み込んだコンセプトカーを展示すると、これがパンダ4×4として市販化される前年のトリノでは、やはり同社がデザインを担当したデルタを4WD化したコンセプトカー、デルタ・ターボ4×4を発表しているのだ。

4WDシステムはパンダのセレクティブ式からセンターデフを備えたフルタイム式になっており、エンジンが1.6リッターだったことを除けば、1986年に市販化されるデルタHF4WDとほぼ同じである。

そのデルタHF4WD、当初はマイナーチェンジとともにデルタに追加された高性能版という位置付けだった。ところがトリノ・ショーでの発表直後にWRCでヘンリ・トイヴォネン駆るデルタS4が崖から転落しコドライバーとともに死亡。これを契機にWRCは翌年以降グループBからグループAで争われることになり、急遽白羽の矢が立った。

しかしこちらもアバルトが開発を担当したこともあり、初年度からチャンピオンの座に就くと、その後HFインテグラーレ、同16Vを経てエボルツィオーネに発展しつつ、史上初の6年連続マニュファクチャラーズタイトル獲得を達成したのである。

これだけの記録を残したパワートレインをデルタ専用とするのはもったいない。1992年にアルファが後輪駆動の75の後継車として送り出した前輪駆動の155には、トップモデルとしてインテグラーレのパワートレインと駆動系を与えられたQ4が設定された。

ここにもアバルトの血が注がれており、Q4をベースとして製作されたレース仕様車にはGTAの3文字が復活。同年のイタリアのスーパー・ツーリズモ選手権に参戦し、宿敵BMWを破って勝利を重ねると、1993年からはV6エンジン+4WDというパッケージの155V6TIが敵地ドイツのDTMに乗り込み、初年度に頂点に立ったのだった。

この間1992年にはデルタがWRCのワークス活動を終了している。なのでブランドは違えど、2台はひとつの線でつながっていたのではないかと思ってしまう。

でも乗り比べてみると、155は初代デルタよりひと世代新しく、サスペンション形式が異なるうえに、エンジンのチューニングも違うので、まったく違う世界を生み出してくれるのもまた確かだ。

エンジンはデルタHFインテグラーレ・エボルツィオーネの200ps/31kg-mに対し155Q4は185ps/30.3kg-mとなるうえに、155Q4の車両重量はデルタの1300㎏より180kg重い。クォーンという軽やかな響きとともにターボが明確に盛り上がるところは同じだけれど、乗り比べると155のほうが性格も音もジェントルだ。逆に言えばデルタのほうがコンペティティブな匂いは強い。

それ以外は別物。まずドライビングポジションが違う。デルタはステアリングが遠く、ペダルともども上向きで、前輪に近い位置に座る。昔のイタリア車っぽさを残しているとも言えるし、空間効率を追求したジウジアーロ的なパッケージングとも評せるけれど、ラリーには適した環境だ。それに比べると155のポジションに癖はなく、スポーツタイプではないレカロ・シートのおかげで、長旅も楽にこなせそうという気分になる。

ハンドリングではデルタの短さと軽さが際立つ。とりわけ前後オーバーハングの短さは最初のコーナーを曲がった瞬間に分かるほど。短い車体の前寄りでステアリングを切って四角い車体をコーナーに入れ、立ち上がりでスロットルペダルを開けて4輪に力を伝え立ち上がっていく。なぜデルタがWRC6連覇を達成できたのか。それは公道を楽しく走るのに絶妙なボディとメカニズムが融合したからなんだと実感する。

それに比べると155は、走っていても3ボックスのスポーツセダンだと分かる。リアのオーバーハングを常に感じる代わりに、前後のグリップバランスはイーブンに近く、しっとりした乗り心地のおかげもあって、この時代のイタリア車ならではの甘美な雰囲気を堪能しつつペースを上げていける。初代ジュリエッタやジュリア以来のアルファロメオ・ベルリーナの伝統が息づいているのだ。

加速感は確かに似ている。でもそれ以外はデザインもハンドリングも明確に違う。仮に目を閉じていてもどちらがランチアでどちらがアルファか瞬時に分かる。これがイタリアの表現力なんだと、改めて感心した。

ランチア・デルタ・インテグラーレ5

WRC5連覇を記念して1992年に400台限定で発売されたインテグラーレ5が今回の取材車。オーナーの末続高弘さんはスーパーカーブーム時にランチア・ストラトスに憧れ、037ラリーやデルタS4の活躍に目を奪われていたそう。元々デルタ自体に興味はなかったが、2011年の弊誌イベント参加を切っ掛けに趣味車へと目が行き、紆余曲折ありつつ偶然この5に出会い、直感的に購入へ到った。「結局ランチアが好きでした」とコメントしている。

200ps/31kg-mを計上する2リッター4気筒ターボを搭載。

エボルツィオーネ系は、メーターまわりのグラフィックが変更になっている。

室内はアルカンターラのシートなども特徴となる。

インテグラーレ5の特徴と言えば、何といってもこのマルティーニ・ストライプ。

ジウジアーロが生み出したスクエアなフォルムにワイドファンダーなど存在感抜群。

リアゲートにはWRC5連覇を意味する、栄光の”5″ナンバーが宿る。

アルファ155Q4

こちらの155Q4は1996年式で、カーボックス横浜で販売中(取材時)の車両。走行距離は約2.5万km、車検は2021年5月までで内外装のコンディションもよく、なかなかこのような155には出会えないだろう。文中にもあるようにデルタよりはマイルドな雰囲気なので、デルタと同じパワートレインだからというよりは、この年代のイタリア車が気になる方におすすめと言える。車両本体価格249万円は、考えようによってはバーゲンプライスかもしれない。

同パワートレインとはいえ、ヘッドカバーが違うだけで見た目はいかにもアルファロメオ。ターボの効き方は確かにデルタのそれに近かった。

インパネまわりは黒を基調とした落ち着いた印象。

座った瞬間はいかにも同年代のイタリア車で、デルタよりは若干大きいとはいえ、現代のクルマと比べるとやはり小さいシート。

ロッソ・プロテオのボディカラーの状態が良好だったのは見逃せない。

スクエアな印象の155だが、フェンダーなどは意外とグラマラス。

リアには四葉のクローバー、クアドリフォリオ=4WDを意味するエンブレムを装着。

Which do you like better?

森口将之はどっちが好き!?

原稿を書きながら思ったのは、ランチア・デルタほどジウジアーロの関与が大きいWRCマシーンは存在しないのではないか? ということだった。そもそもラリーは公道での走りのイチバンを決める競技。デルタは実用車をデザインさせたらイチバンと言われるジウジアーロが手がけたのだから、WRC6連覇はむしろ当然という結論に至った。なので今回はデルタ推しとしたい。