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ザ・"ラスト"・ビートルVOLKSWAGEN THE BEETLE

1998年にニュービートルとして偉大なるビートルの車名を受け継ぎ、2011年には、ザ・ビートルとしてフルモデルチェンジを果たすも、2019年での生産終了が発表され、後継モデルが存在しないことが判明。改めてザ・ビートルの魅力を検証してみたい。

TEXT / 森口将之 PHOTO / 山本佳吾
SPECIAL THANKS / フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン(https://www.volkswagen.co.jp/ja.html

ザ・”ラスト”・ビートル

単一車種累計生産台数2152万9464台という世界一の記録を保持するフォルクスワーゲン(VW)ビートル。その系譜を受け継ぐザ・ビートルが後継車を迎えないまま、販売終了となる。あまりに大きなニュースなのに、話題にする人が少なかったのはなぜなのか。ビートルへの敬意があるならば、真摯にこの一件に向き合うのが筋ではないかと考える。

なぜザ・ビートルは幕引きせざるを得なかったのか。同じようにかつてのベーシックカーをリバイバルさせ成功に結びつけたミニやフィアット500と比較すると、大きかったこと、5ドアがなかったこと、真面目すぎたことが関係しているのではないかと感じる。

ビートルもミニも500も、ヒストリック時代は実用車だった。でも今は違う。”愛されキャラ”である。ザ・ビートルはその立ち位置にふさわしいふるまいだっただろうか。

愛玩的なクルマはやはり小柄なほうがふさわしい。5ドアを生み出せなかったのも大きさが関係していると思っている。ミニや500は3ドアが小さかったから、ひとまわり大きな5ドアのクロスオーバーや500Xなどを次々に用意し、販売台数が少ない3ドアをアイコンとして存続させることができている。

それと愛されキャラ度では、先代にあたるニュービートルのほうが上だったような気がする。しかしザ・ビートル日本発表時のプレスリリースを見ると、ニュービートルの後継車という表現はなく、クルマがもたらす楽しい生活を提供するとしながら、そのためにVWの最新テクノロジーを満載したと記してある。確かに自分が最初に乗ったとき、それはビートルの形をしたゴルフに感じた。

ミニが上下動の目立つ乗り心地をゴーカートフィールという言葉で許容したり、500が滑らかさとは対極にあるツインエアエンジンを投入したりしてドライバーに刺激を届けてくれるのに対し、ザ・ビートルのエンジニアリングはゴルフ同様、ひたすらいいクルマを目指しているという印象を抱いたものだ。

我々にも反省すべき点はある。ニュービートルでは奥行きの長いインパネと対照的に狭い後席など、パッケージングに不満が上がった。ザ・ビートルではその後ゴルフが新世代のMQBプラットフォームを採用すると、旧世代という言葉が使われるようになった。確かにドイツ車は機械としての優位性をアピールすることが多いけれど、歴代ビートルにまでその図式を当てはめてしまった。もう少し多様な視点を持つべきではなかったか。

中古車専門メディアのカーセンサーをチェックしてみると、そう思わざるを得ない。販売価格の上位に、新車当時から高価だった2.0 Rラインとともに並んでいるのは、2016年に限定販売された『#ピンクビートル』や、同年と翌年にやはり台数限定でリリースされたホットロッド風の『デューン』なのだから。少なくとも日本に限れば、人々がザ・ビールに求めていたのはいいクルマであることより、キャラの立ったクルマだったのだろう。

ただ販売終了に際して用意された特別仕様車『マイスター』に乗ったら、それなりにキャラが立ったクルマだと見直した。丸目の顔は最近のトレンドの火付け役のひとつでもあるし、先代ゴルフと共通のプラットフォームを用いながら、ヒストリック・ビートルを思わせるボディから独立した前後フェンダーを実現した技は、素直に賞賛したい。硬めのシートはVWそのもの。細いリムのステアリング、大きな速度計。丈の短く立ち気味のウインドーが雰囲気を盛り上げる。

ザ・ビートルには1.2、1.4、2リッターの直列4気筒ターボエンジンが積まれた。以前乗った2リッターは速さ以上に、空冷時代を思わせる音の演出に感心した覚えがある。それに比べると今回の1.2リッターは薄味だが、回転を上げずに走れるターボと7速のトランスミッションを生かして低回転をキープして走っていると、それっぽい感触が得られる。

デビュー当時はゴルフそのものという印象を抱いたサスペンションも、おおらかになっていた。ゴルフと共通のコンポーネンツの中で、ゴルフとは異なるテイストを出そうとしたエンジニアの努力が伝わってくる。

ゆっくりと走りたくなるのはインテリアの雰囲気だけが理由ではない。昨今のクルマが様々な分野で激烈な競争をしている中、ザ・ビートルが我が道を行く存在に思え、それに合ったペースで走りたくなるのだ。

こういうエッセンスは時代を超えて受け継いでもらいたい。VWは現在、電動化に邁進しているが、その中でEVについてはかつてのタイプ2に似たID.BUZZ、デューンバギーを思わせるID.Buggyなど、空冷時代のモチーフをEVで蘇らせようとしている。ビートルもこの路線に乗せてほしい。優しい顔つきやフォルムはEVに合っている。次回はぜひとも愛されキャラ全開で戻ってきてほしい。

取材車は2018年10月にザ・ビートルへ設定された『マイスター』シリーズの1台、『デザイン・マイスター』。具体的にはバイキセノンヘッドライト、純正ナビ『716SDCW』、リアビューカメラ、2ゾーンフルオートエアコン、パドルシフト、10スポークの専用ホイールなどを標準装備としたものだ。
センターが大きく配置されるメーター、ボディ同色のインテリアパネル、愛らしい丸目ヘッドライトなど、クラシック・ビートルのアイコンが各部に散りばめられている。その乗り味ともども時代に迎合せず急いでいない雰囲気は、ひと回りして、現代には逆に心地よい。惜しむらくは5ドアがなかったことでモデルの寿命を縮めた感もあるが、改めて見直して正解の1台であった。

SPECIFICATION
VOLKSWAGEN THE BEETLE DESIGN MEISTER
全長×全幅×全高:4285×1815×1495mm
ホイールベース:2535mm
トレッド(F/R):1580/1545mm
車両重量:1300kg
エンジン形式:直列4気筒SOHC+ターボ
総排気量:1197cc

内径×行程: 71.0×75.6mm
最高出力:105ps/5000r.p.m.
最大トルク: 17.8kg-m/1500-4100r.p.m.
圧縮比:10.0
変速機:7速A/T(DSG)
懸架装置(F/R):マクファーソンストラット/4リンク
制動装置(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク

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