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メガーヌの真価とは?RENAULT MEGANE GT

2019年5月にメガーヌR.S.トロフィーRがニュル北でラップタイムを奪還したことは記憶に新しい。だが、ルノー・スポール開発陣のこだわりと技術力は、より日常域に近いモデルでも存分に発揮されている。

TEXT / 斎藤慎輔 PHOTO / 神村 聖
SPECIAL THANKS / ルノー・ジャポン(https://www.renault.jp/

メガーヌの真価とは?

フロントグリルではブラックアウトされたハニカムメッシュにロザンジュが輝く。

ルノーにとって、日本市場はちょっと特殊である。元来、商用車がベースのカングーと、それとは対照的なメガーヌR.S.だけが突出した人気を得て、他はたいがい苦戦を強いられているからだ。

ルノー・ジャポンが、これまでの経験を踏まえて、カングーと、それ以外ではルノー・スポール系を主軸とする戦略を打ち立ててきたのも、それはそれで成功と言えそうだが、この状況についてルノー・ジャポンに伺ってみれば、意外なことに、本意ではないとのことなのだ。

確かに、売りあぐねてきたキャプチャーや、その車名さえほとんど知られぬままに日本での販売が終わりそうなカジャーなど、不遇な車種がある。それだけならともかく、メガーヌやルーテシアでも、R.S.の、とりわけ最も尖った仕様であるトロフィーに人気が集中してしまうことも、ルノーとしての、あるいはルノー・スポールとしての思いが、きちんと伝えられていないというもどかしさがあるようだ。

ルノー・スポールに関して言えば、2018年の春にシビック・タイプRがタイトルホルダーだったニュルブルクリンク北コースのFF量産車最速ラップタイムを、シビック・タイプRよりエンジン排気量が197cc小さいメガーヌR.S.トロフィーRで奪還するなど、ひたすら速さに拘っているように思えるところはあるし、それを技術の証としているフシもある。

けれども、R.S.に限ったことではないが、速さを追求するほどにレーシングカー的方向になりがちで、それは極限での速さと引き換えに、公道域におけるドライビングの楽しさや心地よさを阻害する要因をもたらすことになりがちだ。

だからこそ、ルノー・スポールではR.S.モデルで標準、カップ、トロフィー、トロフィーRというような、ユーザーの求めるスポーツ性能や特性に応じられるモデル展開をしてきた。でも、勢いトロフィーが選ばれることが多いことを、ルノー・ジャポンとして、手放しで嬉しいとは思っていないようなのだ。最速といった強い記号性に惹かれることは当然と理解しつつも、自身のドライビングや使い方に合った仕様を選んでもらえば……という思いは、実はルノー・スポールの開発陣の思いでもあるとのことだった。

これを踏まえ、今回は新型メガーヌでもGTを中心として試乗したが、GTもルノー・スポールにより手が加えられた仕様である。日本での新型メガーヌは、2017年11月にGTとGT-Lineを発売、翌年8月にR.S.が追加になっている。1.2リッターターボエンジンを搭載するGT-Lineは、ルノー・スポールの関わりは薄いようで、新型メガーヌの走りを強く特徴づけているリアアクスルステアの4コントロールも与えられていない。このGT-Lineが素のメガーヌに近いが、広報車の用意はなかった。ということで、ハッチバックのGTに約3週間、その前後でR.S.と、2019年3月に限定100台で発売された6速MT採用のR.S.カップも、それぞれ1週間以上手元に置き、堪能させてもらった。

そこで知れたのは、GTの快適性と走りのバランスの高さとともに、公道域ではR.S.やR.S.カップよりも、4コントロールの恩恵をはっきりと認識できることだった。R.S.ではやはり速さを問うことになるが、新型では2リッターから1.8リッターへと排気量ダウンされたことは、動力性能に少なからず影響をもたらしている。今回も、高速ワインディングなどでは、2リッターのシビック・タイプRに対して加速では明確に差をつけられていると感じたし、R.S.カップでシビック・タイプRと6速M/T同士での比較をするなら、発進時のアイドリング域からのイニシャルトルクでも、過給が立ち上がる直前での弱さを意識させることもあった。だからこそ、ニュルでのFF最速ラップタイムを目指したR.S.トロフィーRは、パワーアップとともに徹底した軽量化を施したのだろう。

GTのエンジンは1.6リッターターボで、これにゲトラグ製の7速DCT(ルノーではEDCと呼ぶ)を組み合わせる。このエンジンは、特に滑らかとか上質感があるものではないが、十分なトルク感を自然な感覚でもたらし、R.S.ほどのスポーツモデルではないという前提からすれば、むしろパワフルだと思わせる。ワインディングを元気に走らせたいような際でも、不足感を覚えることはなかった。

一方、トルコンを持たないDCTとの組み合わせでは、クリープ感をどう与えるか、それとトルク及び過給の立ち上がりとクラッチワークをどう巧みにシンクロさせるかが、特に発進時の動的クオリティに大きく影響するが、日常の発進域はもちろん、車庫入れのような際、ゆっくりと動きながら同時にちょっとした段差を乗り越えたいような状況でも、唐突さのない優れた制御をみせる。ここは国産車に多いCVTや下手なATよりむしろまともで、これで小気味よい変速感を得られることを思うと、DCTを忌み嫌う国産メーカーを疑問に思うことも多い。

一方で、このDCTの制御では、下り勾配等の状況下でも、パドルシフトによるダウンシフトを行った際、アクセルを全閉にし続けていても(つまりエンジンブレーキを積極的に使いたい状況だ)、短い時間経過で自動アップシフトされてしまうのは好ましくない。これは、先月号でジュリアと比較試乗したプジョー508(こちらはアイシン製8速A/T)でも同様の制御がなされていたが、最新の排ガス規制値等への対応で必要なのだろうか。

4コントロールを備えた足は、R.S.と違いノーマル形状のストラットサスを与えられたフロント側との剛性バランスが肝。なにより旋回スピードが速くても修正舵が少なくて済むことに、このシステムの恩恵を強く感じるし、ともかくラクなコーナリングができるのがいい。

前輪側と同位相になる速度域はR.S.の方がGTより高いと公表されているが、それだけに、旋回速度も横Gも高くなるR.S.の方がリアステアで強引に曲げていく感覚が強かった。またR.S.カップでは、トルセンLSDの威力でより強い駆動力が得られる分、アンダーステア域にも入りやすいが、そこをリアステアで上手くバランスさせているという感覚だった。

ちなみに今回のGTは2018年11月に登録されたものだったが、その1年前に日本で発売された際に乗ったGTに比べると、リアステアでとにかく曲げてやる的な動きは少し薄れたように感じ、日本のワインディングの速度域ではアンダーステア感皆無で安定感も伴っていたし、街中では小さな旋回半径を不自然さのない動きでもたらしてくれて、初期より制御も板についてきたように思えた。

乗り心地には、上下にひょこひょこする感覚が残り、車重から考えても、もう少し落ち着きがほしいと感じることが多いことが惜しい。また居住性の面でも、リアシートは、フロアと前席下の間隙が小さく、足先を入れると圧迫される感覚となってしまうので、足元スペースにゆとり感が得にくい。ここはホイールベースが50mm長いスペースツアラー(ワゴン)なら、レッグスペース自体に余裕が備わるし、4コントロールのメリットが、ハンドリングでも旋回半径の面でも、より強みを発揮すると思われる。

更なる安全装備の最新化や、全車速追従ACCの搭載、もう少しユーザーフレンドリーなコネクトやタッチパネル操作など、ルノーとしての装備面で進化、充実を望みたいところはあるが、ワインディング下りで、しれっとしながらのスゴい速さに心動かされ、ルノー・スポールの「だろ」という声が聞こえる気がした。

4代目メガーヌは2016年7月に本国で発売され、日本市場では2017年11月から販売開始となっている。

メガーヌGTではボディサイドなど随所にルノー・スポールのロゴが配されている。

C字型デイタイムライトはルノーの最新デザイン言語。

目立たないデザインのリアスポはGT-Line、GTで共通。R.S.ではより大きくなる。

GTのブレーキディスクは前φ320mm、後φ290mm。タイヤサイズは前後とも225/40R18となる。

4コントロールはリアタイヤを最大2.7°まで操舵。時速60km/hまでは前輪に対し逆位相に動き、最小回転半径は5.2m。高速域では同位相に動き、安定性を高める。

1.6リッター直4ターボのTCe205エンジンは205ps/28.6kg-mを発揮。公道域では十分以上のパワーだ。

ブルーがアクセントとなるインテリア。4代目メガーヌからセンターコンソールにドリンクホルダーが備わった。

パドルはコラム固定式なのでコーナリング中でも安定してシフト操作することが可能。

アンビエントライトは設定で色を好みに変更できる。

サイドサポートの大きいスポーツシートはアルカンターラをふんだんに使用。

後席にもアルカンターラが奢られ安定性が高い。ただし足元スペースはややきつめ。

ラゲッジ容量は383リッターで、Cセグメントのハッチバックとしてはと申し分のないスペース。

SPECIFICATION
RENAULT MEGANE GT
全長×全幅×全高:4395×1815×1435mm
ホイールベース:2670mm
トレッド(F&R):1575mm
車両重量:1430kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1618cc

最高出力:205ps/6000r.p.m.
最大トルク:28.6kg-m/2400r.p.m.
サスペンション(F/R):ストラット/トーションビーム
ブレーキ(F/R):Vディスク/ディスク
タイヤ(F&R):225/40R18
車両本体価格:346万2000円

PROFILE/斎藤慎輔

確かな洞察力とブレない評価軸に基づいた車両評価に定評のあるモータージャーナリスト。長距離を走り込んでの批評を旨とする。