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508SWが語るフランス製実用車の世界PEUGEOT 508 SW

ここで注目するのはプジョーのステーションワゴン、508 SW。そのフォルムはスポーツワゴンといった出で立ちで、正直実用的とは思えないが、フランス車がそんなに単純でないことは、多くの方がご存知だろう。果たしてこの508 SWも、奥深い“フランス車”と言えそうだ。

TEXT / 森口将之 PHOTO / 山本佳吾
SPECIAL THANKS / グループPSAジャパン(https://www.peugeot.co.jp

508SWが語る
フランス製実用車の世界

『プジョー・シトロエン・ジャポン』が2020年2月1日付で『グループPSAジャパン』に社名変更した。いまやプジョーとシトロエンに加えDS、オペル、ヴォクゾールを擁し、インターナショナルな企業グループに変貌しているうえに、FCAとの統合にも合意したので、ヨーロッパでは数年前から使われていた名称に合わせたということだろう。

そんな中でプジョーの立ち位置はどうなっていくのか。SUVには引き続き力を入れていくだろうが、セダンやワゴンといったオーセンティックな車種を大切にしつつ、操る歓びをアピールしてきたブランドだからこそ、このふたつのポイントを強調することでグループ内の他ブランドとの差別化を図って行くのではないかと、今回取り上げる508 SWに乗りながら勝手に想像していた。

現行508のセダンが登場した時、僕はあまり良い印象を抱かなかった。フランスらしい優美なフォルムの中に広いキャビンを備えた旧型が気に入っていたので、クーペのようなファストバックへの転換に違和感を持ったのだ。しかしグループPSA全体の中で見ると、プジョーらしさを研ぎ澄ませているのは間違いなく現行型のほうである。それを理解してからは、大胆な変貌を好意的に受け入れるようになった。

ただ今回乗ったステーションワゴンのSWは、そんなセダンとはちょっと違う印象を見た目から受けた。ゆったりとリアエンドまで伸びていくルーフラインや40mm長いリアオーバーハングのおかげで、正統派ワゴンという言葉を連想させたのだ。前後のランプまわりは共通の造形で、かなりモダンだけれど、リアのPEUGEOTの文字をウインドウ下端に沿って並べるなどヒストリカルな演出も入れていて、昔からのプジョー・フリークも好意を寄せるのではないだろうか。

インテリアは、小径ステアリングと遠くに置いたメーターという現行208以来のレイアウトを踏襲する。プジョー自身、この運転環境づくりに慣れてきたようで、かつてのようにステアリングが下にある感じることはなくなり、低めの着座位置と高めのインパネに絶妙にフィットしていた。

ピアノタイプのスイッチは見る楽しみ、触る楽しみをもたらしつつ、スロープしたセンターコンソールの下にはスマートフォンの非接触充電を備える。ここでも伝統的なディテールと革新的なスペックが絶妙に融合している。そこに派手すぎない淡いブルーのイルミネーションが、フランス生まれらしいセンスを加えている。

シートは前後とも低めに座る。優しい着座感はプジョーそのもの。リアの足元スペースはこのクラスの標準レベルだが、セダンに比べると頭上の余裕が増した。ドアの開口部が大きいこともセダンとの違い。広く使いやすいラゲッジスペース以外にも、実用車としての資質は高まっている。

エンジンはいずれも直列4気筒ターボのガソリン1.6リッターとディーゼル2リッター。試乗したベースグレードのアリュールは前者を積んでいた。以前セダンで乗り比べた経験から言えば、力強さではもちろんディーゼルに軍配が上がるものの、ガソリンも旧型より軽い車体と8速になったA/Tのおかげで、加速に不満はない。

逆に身のこなしでは、ディーゼルより100kg以上軽いガソリンのメリットをしっかり実感できる。小径ステアリングはこのために存在しているのだと思ってしまうほど軽快な振る舞いだ。SUVとは明確に異なる、ワゴンならではの低いスタンスがそこに安定感をもたらす。セダンもそうだが、どちらのエンジンを選ぶか悩みどころだろう。

ボディの剛性感については、セダンとの差は感じなかった。セダンも現行型は大きなリアゲートを備えているということもあるが、それ以上にEMP2と呼ばれる新世代プラットフォームの強靭さが伝わってくる。

だからこそ伝統芸である猫足が、さらに際立つ。現行プジョーでは唯一のマルチリンク式リアサスペンションと電子制御のアクティブサスペンションとの組み合わせは、これぞプジョー! の乗り心地を届けてくれる。石畳はさぞ気持ちよかろう。進化した運転支援システムとのコンビで、どこまでも走っていけそうという気分になれるし、そんなシーンに似合うのはやはりSWのほうだ。

プジョーは第2次世界大戦前からワゴンボディを用意しており、戦後は多くの車種にブレークやファミリアーレとしてラインナップしてきた。その系譜が、大胆にパーソナル方向にシフトしたセダンの508とは違う、正統派ワゴンのデザインと実用性にこだわったキャビンに結実していた。一方のSUVは、プジョーでは遊び心を前面に押し出したデザインを取り入れているから、それとも一線を画している。かつてのプジョーの持ち味だった保守本流のフランス製実用車の世界を、もっとも濃厚に受け継ぐ1台が、実はこのプジョー508 SWではないかと思った。

ボディサイズは全長が+40mmとなる以外はセダンと同様。1860mmという全幅は1850mmが境目となる都心ではいかにも惜しい。

日本に導入される508 SWは、1.6リッターのガソリンエンジンが取材車となるアリュールとGTライン、2リッターのディーゼルがGT BlueHDiという計3グレードとなる。

プジョーの最近のコックピットと言えば小径ステアリング、高めの位置にあるメーターで、好みは分かれるが、座高の高い担当にはありがたいレイアウトだった。

最近のプジョーで言えばこのトグルスイッチも特徴で、ライオンの爪のように見えなくもない。

デザインの変更できるメーターはこの画面が一番独特だった。

EMP2プラットフォームにアクティブサスペンション、リアマルチリンクを組み合わせた乗り味の素晴らしさは、車幅の広さを補って余りあるほどだ。

リアのラゲッジスペースは見た目のスタイルから予想する以上に広い。

取材車のアリュールのタイヤは17インチで、乗り味が柔らかい。

SPECIFICATION
PEUGEOT 508 SW Allure
全長×全幅×全高:4790×1860×1420mm
ホイールベース:2800mm
車両重量:1540kg
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1598cc
ボア×ストローク:77.0×85.8mm
圧縮比:10.2

最高出力:180ps/5500r.p.m.
最大トルク:25.5kg-m/1650r.p.m.
変速機:8速A/T
燃費(WLTCモード):14.1km/リッター
サスペンション(F/R):マクファーソンストラット/マルチリンク
タイヤ(F&R):215/55R17
価格:442万円

初期プジョー500シリーズを振り返る

真ん中にゼロを挟んだ3桁数字の車名を1929年から使い続けているプジョー。しかし500番代の登場は遅く、最初の車種は1968年の504だった。8年前に発表された404のメカニズムを一部流用しつつ、サスペンションを4輪独立懸架とし、その後のプジョーの伝統になった吊り目のヘッドランプと尻下がりのリアエンドが特徴のピニンファリーナ・ボディをまとっていた。

そのボディはセダン、ワゴンのほかピニンファリーナが製作も担当したクーペとカブリオレがあり、主として新興国向けにピックアップもあった。当初、直列4気筒のガソリンとディーゼルだけだったエンジンには、後にルノー・ボルボと共同開発したV6ガソリンがクーペとカブリオレに積まれている。ラリーでの活躍も有名で、サファリではセダンが1975年、クーペV6が3年後に総合優勝をものにしている。

そんな504の後継車として1979年に登場したのが505で、いまなお評価が高い端正なピニンファリーナ・デザインのボディはセダンとワゴンに絞られた。メカニズムは504から継承したが、エンジンはガソリン/ディーゼルともにターボも用意。1975年からフラッグシップの座にあった604が生産中止となるとV6ガソリンエンジンも復活した。504ともども多くの新興国で作られており、生産終了自体は505よりも504のほうが遅く、2005年にようやく現役から退いた。

プジョー504シリーズ

1968年9月から1989年9月までに338万2860台を生産。その後も新興国で2005年まで作り続けられた504シリーズは、元祖プジョーのワールドカーと言える。ボディタイプもご覧のように様々で、508 SWの先祖にあたる504ブレークは1971年に登場した。

プジョー505シリーズ

504の基本構造に604のコンポーネンツを組み合わせ、1979年にデビューしたのが505シリーズ。その後継となる605がFFとなったため、最後のFRプジョーとして知られる。1982年にはブレークを追加。同ボディで8人乗りのファミリアーレもラインナップした。