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小さく軽い“古いフィアット”を楽しもうライトウェイトなヒストリックカーでヒルクライムへ!

近年盛り上りを見せるヒルクライム。本場イタリアでは古いフィアット系のクルマ達が未だ大活躍。小さく軽いヒストリック・フィアットで参加するという選択肢は、日本でも充分に“アリ”なのだ!

TEXT / 遠藤イヅル PHOTO / 宮越孝政
SPECIAL THANKS / SCC(http://www.scc-g.com), トゥルッコ(https://a-trucco.com), FKR

小さく軽い“古いフィアット”を楽しもう

ヒルクライムというイベントをご存知だろうか。欧州では古くから行われているが、簡単に言えば誰が一番早く山のてっぺんまで走れるかを競うシンプルな競技だ。イタリアなど本場では日本でいう村祭りのような小さいイベントから、FIAの公認を持つ比較的規模が大きいイベントまで各地で開催されている。彼の地のヒルクライムの特徴は小さなクルマの参加が多いこと。特にフィアット系各車は500、126、127、128、A112などの1960~70年代モデル達が、最多参加ゾーンであるプジョー106やシトロエン・サクソなどのヤングタイマーに負けずに元気に山々を駆け上っている姿を見ることが出来る。今なおそれなりの台数が走っているのだから驚きだ。

彼らが古いフィアットを走らせるのには理由がある。それは古いクルマゆえのシンプルさとアフターパーツの豊富さ、それと絶対的なクルマの軽さだ。タイムアップのためにはクルマを軽くすることが必要だが、これらのモデルはそもそも小さく、軽いのである。

今回紹介するような古いフィアット系のクルマで日本のヒルクライムイベントを走れば、すっかり本場気分が味わえる。そんな「心の演出」をしてくれるのも嬉しい。モディファイが施された姿もシビレルほどかっこいいから、注目度も抜群である。

まだまだ日本のヒルクライム文化は始まったばかり。参加する様々なクルマの中で、イタリアのライトウェイト・ヒストリックカーという選択肢は多いにアリだと思うのである。

FIAT 128

本場イタリアでモディファイされたヒルクライム用128

イタリアの街を走っていたフィアット128の姿そのままに、ファットなタイヤとバンパーレスでレーシーな装いに。逆に言えばこれからどんな色にも染めることが出来るということだ。

実はこのフィアット128は、2016年の5月にイタリア取材に行った際に現地で運転した個体そのものだ。SOHC 1.1リッターエンジン(55ps)を搭載したごくごく普通の2ドアセダンだった。なお128は、フィアット初のFF車として知られ、横置きエンジンの隣にギアボックスを配置するレイアウト「ジアコーザ式」を普及させた立役者だ。全体的にソツがないフィアットらしい小型実用車として当時高く評価されたモデルである。

この128、現地ですでにヒルクライム用に改造後日本に輸入することが決まっていて、イタリア滞在中にぼくも装着するパーツを売っている場所と改造を担当するショップを訪問している。つまり「イタリアン・モディファイ」のクルマなのだ。エンジンはランチア・プリズマ用の1.3リッター77psに、トランスミッションはフィアット・リトモ用の5速に載せ換えられ、足まわりは強化され太いタイヤが足元を引き締める。バケットシートとステアリングホイールも交換、内装も剥がされていて、このままでもサーキット走行や競技に参加出来る内容の改造が施されている。外装はイタリアで会ったときそのままでエンジンもノーマルだが、このクルマを買ったオーナーが今後自分の好みでクルマを作り上げる楽しみが残っていることもポイントだ。

この128のモディファイをプロデュースしたのは、神奈川県藤沢市にショップを構える「SCC」。ガス検が不要な1975年以前のイタ車の輸入に豊富な実績と経験を持ち、代表の高田氏はイタリアの文化ともいえるヒルクライム(現地ではサリータと言う)を日本で広めたいと願っている。イタリアでは安く手軽にヒルクライムに参加する場合、安価に手に入る古いフィアット系が選ばれることも多い。本場イタリア人がモディファイを手がけたこの128は、現地のヒルクライム文化をも輸入したクルマといえるのである。

見事な3BOXセダンのスタイルがむしろ新鮮に感じる。車高の落とし方、タイヤの張り出し量はセンス抜群。

ステアリングはOMP製を選択。ちなみに助手席前のパネルを128ラリー用に交換済。芸が細かい。

車内にぴったり収まったスパルコのバケットシート。リアシートは撤去。

エンジンはノーマルの1.1リッターからランチア・プリズマ用の1.3リッターにスワップ。基本は同じエンジンなので交換は容易。

改造前はタコメーターが無かったためメーターも128ラリーを流用。

ミッションはノーマルの4速をフィアット・リトモ用の5速に載せ換え。

フロントグリルもスポーティーな128ラリー用に換装している。

185/60R13という太いタイヤに6×13Jのアルミを組み合わせる。なおノーマルの128は145R13なので、その幅の差は歴然。

野太いサウンドを発するマフラーはワンオフ。

アウトビアンキA112に見る
2通りのモデファイ・アプローチ

AUTOBIANCHI A112 ELEGANT

アバルトの心臓を持つエレガント

アバルトとはまた一味違った雰囲気を漂わせるエレガント。ゼッケンサークルが雰囲気を盛り上げる。

フィアット&アバルトのチューニングで知られる埼玉県川口市の「トゥルッコ」。ティーポ誌でもたびたび、同社がプロデュースするツボを得たモディファイが施されたフィアットとアバルトを紹介することがあるので、ご存知の読者も多いだろう。今回取り上げるアウトビアンキA112も、さすが! と思わされる内容を持つ一台だった。

1969年にフィアット127の先行モデルとして発売されたA112だが、日本には1980年代初頭から正規輸入が開始されたこともあって、いわゆる後期型がよく知られる。そのため、1972年式の前期型をベースに手を入れていることがすでに新しい。足まわりをダウンスプリングとショックアブソーバーで固め、内装もバケットシートとロールケージによって競技に参加出来る仕様になっているほか、年式に見合った1960~70年代ラリーカー風のステッカー類もレーシーな雰囲気を盛り上げるのに一役買っている。

さらに、あえてA112のスポーツモデルであるアバルトをベースにしないのが、トゥルッコ代表の橋本氏流だ。このA112、ここまでレーシーに装っていながらなんと「エレガント」という当時の上級グレード。エンジンにはまだ手が入っていないため、903cc(44ps)のままになっている。だが今後はA112アバルトの1.0リッターエンジン(70ps)に換装する予定だという。絶好調なため勿体ない気もするが、橋本氏曰く「エンジンがアバルトでも外観にアバルトの名は強調しない」とのことで、その考え方にぼくは大いに共感した。現地のヒルクライム参戦の古いフィアットは非アバルトも多かったし、速いフィアット=非アバルトという図式は新鮮で面白い。しかも“本場っぽい”ので、個人的にはちょっと差のつくモディファイになるのではと思う。

A112は1977年にルーフがスクエアな形状に変化しているため、この丸いスタイルがオリジナルだ。ルーフを塗り分けているカラーリングは純正色のままである。

1969年に登場した当初のフロントマスクは後期型とは印象が異なる。

テールランプも小振り。マフラーはA112アバルト用に交換。マッドフラップは貴重な純正品である。

適度に貼られたステッカーにもセンスを感じる。SCC、トゥルッコ、FKRが共同で立ち上げたブランド「STORICA」のロゴもクラシカルでよく似合う。

足元はあえてA112エレガント純正の鉄ホイールを履く。タイヤサイズは135/80R13。

「A112E」の「E」はデラックス仕様の「エレガント」を意味する。

「Candy」はイタリアの家電メーカー。かつてF1のスポンサードも行っていた。

撮影時はA112アバルトのエンジンに載せ換え予定。現在は写真のアバルトユニットが搭載されている。

取材時に搭載されていたエンジンはA112エレガントそのままの903cc。シングルキャブで44psを発生する。なおアバルトは70ps。

A112は1980年代にアバルト/ジュニアが正規輸入されているがいずれも後期型のみのため、前期型の古典的かつシンプルなダッシュボードはまず日本ではお目にかかれないと思われる。大きな2連メーターはいかにもイタリア車らしい雰囲気だ。ステアリングはMOMO製のPrototipoを装着。

バケットシートはCOBRA RSR。クラシカルなデザインがよくマッチしている。

室内にはレーシーなエクステリアに負けないよう、本格的なロールケージが張り巡らされる。

AUTOBIANCHI A112 ABARTH

ヒルクライム用マシンの理想型?

FKRがモディファイしたA112アバルトが安定した姿勢で駆け抜ける。1984年型の正規輸入車だがフロントマスクが前期型風に変更されている。バンパーを外しただけでは前期型にはならず、スワップは簡単ではない。

FKRはX1/9のスペシャルショップとして有名だ。X1/9はフィアット128のFF用エンジンをミドに移して開発されたスポーツカーでもあり、FKRでは128やA112アバルトなどのフィアット系モデルも数多く取り扱っている。

チューニングや外装のモディファイを得意とするFKRのA112アバルトはコダワリの一台に仕上がっていた。まず目を引くのはトゥルッコのA112と同じ前期型のフロントマスクだ。リアに回り込んでも後期型に見られる大きなガーニッシュとリアランプは装備されていないから前期型のモディファイ? と思いきや、年式は1984年だという。車内を覗き込んだら後期型の樹脂製ダッシュボードが鎮座している。つまりこのA112は、ウレタンバンパーのMGBをメッキ仕様にコンバージョンしたりするのと同じA112「前期型化改造車」なのだ。

だがFKR代表の奥富氏はさらにスゴイことを教えてくれた。なんとこのフロントパネルはオリジナルで作ったのだという。トゥルッコのA112と見比べてみたら確かに微妙に形が違いグリルが若干大きく四角いのがわかる。ボンネットも実はFRP製で、しかもルーバーは手で切り抜いたもの。フェンダーとボディのつなぎも滑らかで、技術の高さを感じさせる。

エンジンはインジェクション化されるなどのチューニングが行われているが、奥富氏はヒルクライムで速いだけのクルマにはせず、会場までの往復もラクに移動することが出来るセッティングを目指した。その考え方はガチガチに固めていない足まわりや乗降性を考慮して車内の前半にはロールケージを回さず、内装の遮音材などもすべて取り去らないで快適性を残してあるという内容にもしっかりと反映されていた。

比較的年式の新しいモデルをクラシカルに装い、速いが乗りやすく我慢せずに競技で成績が出せるというモディファイの方向性は新しい。遠隔地で開かれることが多いヒルクライムに参加する車両のひとつの理想かも、と感じた。

前期型用のテールランプ。こちらは1975〜76年頃のパーツを流用。

パーツ交換によって前期型に改造したのではなく、前期型「風」オリジナルパネルを作製して装着している。確かに良く見るとグリルの形状が若干異なるのがわかる。ウインカーはX1/9用。

FKR自作の張り出したフェンダーがカフェレーサー的な雰囲気も作り出す。

クロモドラ製の6J×13アルミホイールを履く。タイヤサイズは165/60R13。PCDはスペーサーによって変更されている。思いのほか太くないので、据え切り時もステアリングはさほど重くない。

PBSの8ポートヘッド、コンピュータなどかなり手が入れられたエンジンだが、セッティングは乗りやすさ重視。

4連スロットルを備えたインジェクションが目を引く。短いファンネルは見た目にも効果的だ。

前期型の外観でもダッシュボードでこのモデルが後期型だとわかる。ステアリングはスパルコ製。

国内メーカーのナニワヤ製バケットシート。

あえて日常での使い勝手を考えロールケージは後半のみとして乗降性を確保している。

助手席の前にはエンジンを制御するコンピューターが備わる。